家売るオンナ第5話 「女単」の金銭事情からマンション購入の現実性を検証してみた

三軒屋万智(北川景子)の活躍で業績好調のテーコー不動産新宿営業所に時を同じくして女性単身者のマンション購入希望者が訪れる。 ドラマ内での実際の設定の信憑性を検証しつつ、「女単」がマンションを購入する場合の注意点をまとめてみた。

更新日:2016年08月25日

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家売るオンナ 第5話 あらすじ(ネタばれあり)

三軒屋万智(北川景子)の活躍に支えられて業績が好調で、営業所成績2位に表彰されたテーコー不動産新宿営業所に、ある日フリージャーナリストの独身女性・日向詩文(ともさかりえ)、そして大手出版社の校閲部で働く地味な独身OL・草壁歩子(山田真歩)が時を同じくして訪れ、永田町にある同じマンションを購入したいと言う。

お互いに譲る気はなく、先に申し込みをした草壁がそのマンションを購入するかに思われた。

しかし、負けん気が強い日向も譲らず、担当していた庭野(工藤阿須加)に「男なんだからなんとかしなさい」と詰め寄る。そこで庭野は同じマンションの同じ間取りの他の部屋をなんとか探しだし、草壁に別階の部屋を勧める。下の階のその部屋は500万円価格が下がるため、草壁は500万円が浮くのならその部屋でもいいと承諾する。

これでうまく両者の利害が一致し、それぞれが本契約に進むと思われたが、本契約を前に日向・草壁の双方とも「やっぱり購入はやめる」と言い出し二の足を踏む。

日向の理由は、今は普通のサラリーマンより収入があるが、いつまで今の収入を維持できるかわからないので35年もローンを組むのが怖い。

一方で草壁は一切贅沢をせずに就職以来コツコツと貯めてきた2,100万円の貯金はとても大切なもので、なくなるのが怖いというものだった。

そこで万智は「アリとキリギリス」の童話を持ち出す。

校閲の草壁はアリ。
「今こそ自分の勤勉さを誇りに思う時です」

ジャーナリストの日向はキリギリス。
「あなたらしく人生を謳歌してください。苦しくなったら売ればいいのです」

この万智の言葉に触発され結局二人は永田町のマンションの購入をするのだった。

「女単(じょたん)」とは?

今回ドラマ内でも「また女単だよ〜。最近多いんだよな。」などと言われているが、「女単」という言葉にあまり馴染みがなかった方も多いのではないだろうか。

「女単(じょたん)」とは「女性単身者」の略で、婚姻もせず、子供もいない、いわゆる「お一人様」の女性の略である。一般的にバリバリと仕事に邁進する気の強い女性なイメージを持つ方も多いのではないだろうか。まさに今回の日向のようなタイプである。しかし、草壁のように社交的でなくコツコツと真面目に働いて貯金を沢山している女性が多いのも事実である。

今回は性格やライフスタイルは真逆だか、女性単身者という点において共通点のある二人がドラマのキーとなっている。

実際の「女単」のマンション購入状況ってどんな感じ?

ドラマでも「最近多いんだよな〜」と言われていたが、実際のデータで調べてみた。

住宅金融公庫が毎年発表している公庫融資利用調査では、女性の購入者は年々増加しており、全体の17.2%を占め、さらにその中で単身者の割合に絞ると8.2%という数字になっている。

なんだ、たったの8%かと思った方もいるかもしれないが、2007年の段階ではたったの5.1%だったことを考えれば急速に増えていることがわかる。

また、割合で比較をすると、男性単身者のマンション購入の割合はここ近年横ばいの状態であるのに対して、女性単身者の割合は着実に増加している


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マンションを購入している女性単身者ってどんな人?

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これは女性購入者のデータを様々な条件で集計したものだが、ここから以下のような特徴がうかがえる。

⓵女性購入者の購入時の平均年齢は男性よりも高い
⓶女性購入者の平均年収は男性よりも低い
⓷手持ち金を持参している割合が男性よりも高い
④準備した手持ち金の額が男性よりも多い(男性より250〜350万程度多く準備)
➄購入する万マンションの価格に対して手持ち金の割合が1割以上高い(女性30%、男性20%)
⑥購入した住宅面積の平均は62平米で間取りは3LDKとかなり広め

これらのことから、女性のマンション購入者は比較的計画的に手持ち金を準備してから融資の申し込みを行っており、公庫ではこうした女性のマンション購入者の増加傾向について、「働く女性が増えていることに加えて、長期固定金利の公庫融資が堅実な女性に選ばれている」と考えているようだ。


日向と草壁の金銭事情にまつわる疑問点を検証してみた

それぞれライフスタイルの違う二人だが、ここでドラマ内で疑問に思った二人の金銭事情について検証してみた。

その1 日向ケースの疑問点【自営業で貯金がゼロの人って住宅ローン組めるの?】

いざ本契約の話になった時に頭金の話を持ちかけた庭野だが、日向から驚きの答えが返ってくる。
「ジャーナリストはフリーであるべきよ。でもフリーだと後ろ盾がない分、いい服を着ていい時計をしていいバックを持ってないと舐められてしまうし、収入も安定しない。だから貯金はないの。その辺のサラリーマンよりは稼いでるけど。頭金ゼロじゃマンションは買えないの?」

フリーランスのジャーナリストで貯金がゼロの場合、住宅ローンの審査は通過できるのだろうか?
フリーランスのジャーナリストは「自営業」にカテゴリされる。
以前は信用などの面で自営業の場合は住宅ローンが組みにくいと言われてきたが、
ライフスタイルの変化も伴い、近年では業歴や過去一定期間の安定収入があれば借りられるケースが大きくなってきた。
金融機関がみているのは「信用と返済能力を客観的に示せること、しっかりとしたライフプラン・事業計画があること」なので、その条件を満たせば自営業の方でもローンの心配はないといえるだろう。

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しかし、ここでの落とし穴はマンション購入にかかる「諸経費」である。
なぜならマンションを購入する時には、建物自体の価格とは別に、不動産登記をする司法書士報酬や印紙代、銀行への事務手数料や保険加入代、引っ越し費用などの諸費用が必要になるからだ。

たとえ建物自体の価格のローンが100%借りられたとしてもマンションは買えないのである。

諸費用について詳細をもっとみてみる

また、頭金が用意できる人は貯蓄がしっかりできる人と判断されるため金融機関の審査に通りやすいが、貯蓄がゼロの人の場合、いくら収入が高くても返済能力が低いとみなされ、審査の影響してくる可能性も高くなる。

住宅金融公庫が提供しているフラット35も、以前までは物件価格の100%の融資を可能としていたが、制度が変わり90%までしか融資できなくなった。2014年から再び100%の融資を可能にしたが、90%を超える借入の場合には、金利が0.3%も高くなるという条件つきのため、かなり厳しいものとなっている。
住宅金融公庫は独立行政法人のため民間金融機関よりは審査のハードルが低いが、それでも100%の融資は危ないと判断しているということだ。

諸費用でさえもローンが組める「諸費用ローン」というものも2013年ころから出てき始めたが、ダブルローンになればそれだけで月々の返済はきつくなるのは当然のことだ。

結論:貯金ゼロでの住宅購入は方法はあるけど無謀

それでは日向の場合はどうしたらいいのだろうか。

まず、最低でも100万円は貯金をすること。月5万円の貯金で約2年の計算だ。月々12万円の返済になるという庭野に対して、「今の家賃よりも安いわね」と言っていたことから、そこそこいいマンションに住んでいることが想定できる。仕事で舐められないために高級ファッションへの出費が減らせないのであれば、いっそのこと貯まるまでの2年間は、草壁のような築30年のモルタルアパートとまでは言わないが、覚悟をして家賃をぐっとおさえてみるのもいいだろう。

その2 草壁のケースの疑問点【新聞社の普通のOLが10年間で2100万円の貯金って可能なの?】

友達と飲みにもいかず、趣味も持たず、ボロボロのアパートに住んでとにかくこつこつと貯金をしてきたという草壁だが、いくら慎ましく生活をすると言っても普通のOLが10年で2100万円も貯金することは現実的なのだろうか?

校閲の仕事は雑誌や新聞などを製作する際に、原稿と校正紙を引合せながら、誤字脱字文法をチェックして訂正をすることだ。誤字脱字だけでなく、文章の雰囲気が全体の雰囲気にマッチしているか、レイアウトに問題はないかなど、総合的にチェックをしなければならない。
間違いを訂正するには当然知識量も必要であるし、出版物には締め切りがあるため時間にも追われるハードな仕事だ。

草壁の場合は万智と庭野がオフィスに乗り込んでいくシーンから想定すると、校閲部だけでも最低50人程度の在籍があり、座席の配置から考えて、草壁自身はおそらく平社員であると考えられる。

そこで大手新聞社の実際の校閲の求人情報を見てみると、33歳前後では月収で23〜25万円、年収で400万円くらいが相場のようだ。2,100万円を10年で貯めるとすると年に210万円の貯金が必要ということになる。

ここで検証してみよう。

まず永田町近辺の相場で築30年のモルタルアパートだと大体家賃は6万円前後である。
総務省の家系調査によると、働いている女性の家賃を除いた生活費の平均は合計で12.3万円とのことだが、草壁はかなり節約をしていたようなので平均より低く見積もって10万円とする。

6万円+10万円=16万円

月の月収25万から引くと

25万円−16万円=9万円

となり、一ヶ月で貯蓄できる額は多くて9万円大手新聞社のボーナス支給額の年平均値が87万円とのことなので、年間貯蓄額は145万円、2,100万円を貯蓄するには15年弱かかる計算となる。

ドラマ内での設定よりはもうすこしかかりそうだが、30代半ばの女性単身者で特に給与が高くなくても2,000万円くらいの貯蓄がある人は十分にいるようだ。
また、草壁の場合は大手新聞社勤務なので、ローンの審査も問題はないだろう。

しかし、貯金を全てマンションの頭金にすることは絶対に避けたほうがよい。特にいざという時に頼る人のいない単身者ならなおさらだ。急な病気をしたり、交通事故にあったりして突然働けなくなることは大いにありうる。そう言った時のためにファイナンシャルプランナーの方は「最低でも3ヶ月生活していくだけのお金は手元に残しておきましょう」とアドバイスをしている。

結論:30代半ばの一般OLで2,100万の貯金は不可能ではないが、全貯金をつぎ込むのは無謀。

では、草壁の場合はどうしたらよいか。

この場合は簡単で、100万円は手付かずで手元に残し、2,000万円のみ頭金として購入をしよう。

また、草壁のようなタイプは繰り上げ返済をどんどんできそうなので、住宅ローンを申し込む際に、繰り上げ手数料がゼロ円の住宅ローンを選んだほうがよいだろう。

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