【スペシャル対談】人気漫画『正直不動産』の原案・夏原武先生×IESHIL事業責任者・川名

契約のためには都合のいいことだけ。嘘をつくのもなんのその。しゃべりを武器に抜群の営業成績を誇る登坂不動産のエース・永瀬が、ある日、アパート建設予定地にあった祠を壊したことから祟りを受け、嘘がつけなくなってしまう。千の言葉のうち真実は三つしかない――。「千三つ」と言われる不動産業界を、正直さで生き抜くことはできるのか。そんな不動産営業を巡る悲喜こもごもを描いた人気漫画『正直不動産』の原案を担当する夏原武先生とイエシル事業責任者の川名正吾が、不動産業界の未来について語った。

更新日:2022年09月28日

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イエシルコラム編集部

IESHIL編集部
この記事の要点
  • 業者と消費者の間に誰もいない。だからマンガを出した
  • 正直不動産とIESHILは業者とエンドの情報格差を埋める挑戦
  • IESHILの中立相談、敏腕営業マッチ等の新しい挑戦が業界に必要
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『正直不動産』

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夏原武=原案 水野光博=脚本 大谷アキラ=作画 『ビッグコミック』(小学館)で2017年12月号より連載開始。連載開始直後から話題を呼び、コミックスは2022年3月現在でシリーズ累計220万部。3月30日に最新刊14集が発売された。4月5日(火)からはNHK総合にて、山下智久主演で連続ドラマがスタート。(全10回。予定)

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■夏原武(右) なつはら・たけし/1959年生まれ。裏社会やアウトローに詳しいルポライター。『現代ヤクザに学ぶ最強交渉・処世術』『震災ビジネスの闇』(ともに宝島社)など著書多数。マンガ原案者としても、『正直不動産』のほか、詐欺をテーマにした『クロサギ』など多数のヒットを生む。 ■川名正吾(左) かわな・しょうご/10年以上の不動産業界経験を経て、2015年リブセンス入社し不動産透明化メディアイエシル立ち上げに合流。並行して「中立アドバイザーサービス」を企画・ローンチ。裏も表も全て話し、敏腕営業マンの紹介もできる。というスタイルが話題を呼び現在イエシルへの相談は年間1,000組を越える。

■不動産業界の情報格差に挑む、イエシルと『正直不動産』

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川名:夏原先生、本日はありがとうございます。私たちはビッグデータを基にマンション一室ごとの価格を機械学習をもとに査定し開示することを機軸に、災害リスクや利便性などの情報を複合的に一箇所に集め可視化するウェブサービス「イエシル」を運営しています。早速で恐縮ですが、まず今回の対談をお受けいただけた理由をお聞きして良いでしょうか。

夏原:『正直不動産』のやろうとしていることを理解してくださるか、どういう会社か、どういう人か、が基本的な判断軸になります。ですので、最初色々調べさせてもらいました。イエシルというサイトを見たときに率直に「あぁ、これはいいな」と思って、つくっている人を見てみたかったんですよね。どんなことを考えているんだろうと。

川名:私たちは不動産業者とエンドユーザーの間に立つ中立な立場として、隠されがちな情報を客観的な情報として発信していきたいと思っています。その点で、『正直不動産』には大変シンパシーを感じていました。

夏原:不動産って、売買か賃貸かはさておき、誰しもが人生のなかで関わります。にもかかわらず、仲介業者とエンドユーザーの情報格差がものすごく大きい。そして、その間をつなぐ人は誰もいない真空になっている。この問題意識は、『正直不動産』を世に出した大きな理由です。

 不動産売買について相談したいと思っても、相談相手が仲介業者になるので「今が買い時ですよ」「売るなら今がチャンスですよ」と都合のいいことばかり言われます。価格も本当にわかりにくい。イエシルさんのようなサービスはエンドユーザーにとってはとてもありがたいと思いますよ。

川名:私自身、もともと不動産業界に身をおいていました。契約を取るに当たっていろんなスタイルがあります。「これ、本当は伝えたほうがいいんだよな。でも言うと契約取れないかな」と悩みながら仕事をする営業マンもいるし、正直に言ってしまって契約が取れない営業マンもいる。少数でしたが凛とマイナス面を伝えて契約を取る営業マンもいる。お客様にとってはこの少数が必要だと思いながら、6年前にイエシルが立ち上がるとき、面倒なの立ち上がりそうだな。とビビっときました(古)。

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夏原:イエシルさんは新築時価格まで掲載されていますね。業者は出されたくないでしょう(笑)。それから、災害リスクやハザード情報なんかも不動産業者は嫌でしょうね。地盤やハザードの情報は役所へ行けば集められるかもしれないけれど、一般のエンドユーザーがなかなかそこまでできません。情報って公開するだけじゃ意味がなくて、整理統合してくれないと使えない。イエシルさんはその情報を統合している。買う前にこれが見られれば、参考情報として非常にいいですね。

川名:イエシルをローンチした当初は、マンションのオーナー含め、色々なところ、団体から反発がありました。同時にエンドユーザーの会員数はものすごい勢いで増えていった。業者が隠したい領域と、ユーザーが見たい領域がはっきり重なっていることがわかる、それはもう顕著な構図でした。6年経ち、リリース当時の様なクレームはほぼ無くなりました。他にもプレイヤーが出てきてこれが当たり前になってきたからです。イエシルと提携する「敏腕営業マン」たちも増加し、お客様のご希望があれば営業マンを紹介していますが、その営業マンには「お客様には不動産業界の悪しき慣習も、物件の妥当と思われる情報も全部伝えていますよ」とお伝えしています。

夏原:うち(イエシル)が説明したお客さんなんだから、変なことするんじゃないよ」と目を光らせてくれているんですね。それはとても大事なことです。業者側にとってもトラブルが減るだろうし、本来はメリットありますよね。

川名:おっしゃる通りです。エンドユーザーと不動産仲介業者の情報格差を少なくすることは不動産業界全体のためでもあると思うんです。

■本当の不動産アドバイザーに

夏原:不動産の仲介業者とエンドユーザーって、言うならばプロと素人。プロ野球のピッチャーの球を私たちが打てないように、直接やり合って勝てる訳がない。業者側に悪意があれば簡単に騙されてしまいます。だからこそちゃんとしたアドバイザーが必要だし、それを資格にしたっていいと思っています。「不動産取引仲介士」みたいな資格があったらいいですよね。現状、目を光らせてくれる第三者がいない。イエシルさんはそこを埋めようとしているわけだから、一般の方には見てほしいね。もし買っちゃったあとでも。「次は失敗しないように……」ってつなげられるだろうし。

川名:お墨付き恐れ入ります! 実は、私たちのところに相談される方も2パターンあって、買う前の人だけでなく、買った後に来る方もいるんです。買った後の相談は投資物件に関するものが多い。ワンルームマンションに投資したけれど、月々2万円くらい手出ししていると。マンションの適正価格が気になってイエシルを見てみたら、自分がものすごく高い値段で買ってしまったと知って、「相談する」ボタンを押す方が多いようです。

夏原:投資用物件は特に業者の言いなりになってしまいがちですね。表面利回りなんて業者が最大値を出しているだけなのに、それにまず気づけない。フラット35を投資用に使わせる不正もありましたし、再建築不可物件を投資用に買わせるとか、信じられないケースがいくらでもある。

ポータルサイトもたくさんありますけれど、業者の代理人と化しているものも多いです。結局、消費者が本当に知りたいことを誰も答えてくれていないんです。適正価格なんて、絶対に一番知りたいはずですよ。

川名:業界改革はテーマとしてはよく語られますが、進まないですよね。私たちは国を含め様々な機関や団体ともお話しさせて頂く機会がありますが、「それ、いいね」となっても、特にすぐに何かが変わるわけではありません。

夏原:業者の目線で考えると、ユーザー側に立っても得るものがないとみんな思っていますよね。最近は少しずつ変わってきて、まじめにやろうとしている業者も増えてきているから僕も期待はしています。ただ、まだまだお客さんを『金を払わせる対象』としか見ていない業者が多いなぁ。イエシルのようなサイトはもっと広く知られるべきですね。

川名:知名度低すぎる問題(涙)。
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■イエシルの今後

川名:私たちは提携先の不動産業者から広告宣伝費をいただいています。完全中立かというと利害は発生しています。少し違うことといえば、ユーザーにマイナス面を伝えていくことに対して「確かにね。いいかもね」と理解いただいた不動産業者のみ提携へと進みます。中立に近い立場をキープできる所以はこのあたりにあります。

夏原:ビジネスである以上、利害関係は絶対に発生します。でも、そのなかで何割消費者の方を見てくれているかって、すごく大事なところですよ。イエシルさんがやっているのは「業者さんイジメ」ではなくて、消費者の納得感を高めることだから業者にとってもユーザーにとってもウィン-ウィンだと思いますよ。

 不動産の売買は額がものすごく大きいので、ユーザーは不安です。そこに間に入ってもらって、「この値段が妥当だと思いますよ」「こういった業者さんは信頼できると思いますよ」とアドバイスをもらえるだけでだいぶ違う。イエシルさんも言う以上はある程度の責任を感じるから、適当なことは言えないじゃないですか。一方、不動産業者だとどうしても自分のノルマ達成が目的になってしまう。買うにしろ、売るにしろ、ユーザーが求めているのはその手前の話だと思うんです。

川名:そう思います。私たちのところに相談に来る方も、そういう方が多いです。でも、まだまだ大半の人は相談したいと思ったときに思い浮かぶのが不動産業者だけなんですよね。イエシルはその手前の段階でありますよということを、私たち自身もっと伝えていかなければいけないと思っています。

夏原:事前に相談するのが当り前になってほしいし、それを期待したいですね。不動産を売りたい人、買いたい人がまずやるべきは、仲介の人と話すことじゃなくて、第三者的な目線を持ったイエシルさんのようなところに相談することです。ハンコ付いたあとにトラブルがあっても、弁護士に駆けこんでもどうにもなりません。不動産トラブルは契約後が多いけれど、結局消費者が泣くしかない。

■不動産業界の未来

川名:今日も『正直不動産』を読み返してここに来ました。このマンガは不動産取引の話ですけれど、人物のバックボーンが描かれるヒューマンドラマだなと感じます。

夏原:不動産を扱っているけれど、営業マンならどんな職種の人でもきっとわかってくれると思っています。みんな、苦しみながらやっている。お客さんを大事にしたいけれど、会社や売上も……という葛藤は常に感じているはずなんです。

川名:正直不動産に描かれている嘘が付けない営業マン・永瀬財地は、夏原先生が見ている不動産業界の未来なのかなとも感じます。今後、不動産業界はどう変わっていけばいいとお考えですか?

夏原:みな葛藤を感じているとはいえ、やっぱり業界はそう簡単に変わりません。どうしたら儲けが大きくなるかばかりに目が向いている。上の世代はそうやって仕事をして、それが成功体験になっているから、変わるのは難しいでしょう。でも、今後世の中が落ち着いたとき、例えば大きな外資が入ってきたりしたら、今の不動産業界は簡単に壊滅します。その危機感を持って、若い、心ある業界人たちが声をあげていかなければなりません。業界団体に任せていても変わらないから、中から、下の方から声をあげていくしかない。

 あとは、宅建士のプライドを持ってほしいですね。宅建士は弁護士などと同じ士業です。試験も難しい、ちゃんとした資格なのに、「あぁ、不動産屋が持ってるやつね」と敬意を払われない。公平性がなく、常に業者側の視点で話をするからこう言われるんです。本来、宅建士は不動産取引に欠かせない重要なポジションです。真ん中に立って両側を見るべきで、歪んでしまってはダメなんです。

幸い、意識のある若い人たちは少しずつ増えていると感じます。それから、イエシルさんのような新しい業界サービス周辺からの圧力も突破口になりますよね。内部にいる心ある人たちと周辺でがんばっている人がうまく連携して、それは直接的な連携ではなくて意識の面でもいいから、そうやって本丸を追い詰めて行ってほしいですね。

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構成・写真/川口穣

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