「不動産屋」の視点から仲介手数料を考えてみると、その仕組みの理解が進みます。
中古マンションなど不動産売買において、売主・買主の立場から見ると、関わっているのは自分が仲介を依頼した不動産会社ですから、取引が無事に成立すれば仲介業務を行ってくれた不動産会社に対し、その成功報酬として手数料を支払います。
例えばあなたが売主であれば、仲介手数料は売却の仲介を行ってくれた不動産会社に支払うもので、買主側の不動産会社に支払う必要はありません。
いずれにしても、希望にあった売り手・買い手が見つかり、無事に取引が成立すれば目的が達成されます。しかし、実は依頼を受けた不動産会社の立場からすると仲介の取引形態と手数料にはいくつかのパターンがあるのです。
例えばあなたがA不動産会社に、マンションを売却したいので、買ってくれる人を探すよう依頼したとします。
売却を依頼されたA不動産会社は、色々なところに広告を打ち、他の不動産会社にも物件情報を公表します。しばらくすると、A不動産会社は、広告を見て自社に問い合わせをしてきた人の中から、あなたのマンションの購入希望者を見つけてきました。お互いの条件もぴったり合って、無事、売買契約が成立しました。
この場合、A不動産会社は売主と買主の両方から仲介手数料を受け取ることができます。
仮に3000万円の不動産の売買とすると、売主(あなた)の支払う仲介手数料は
3000万円×3.24%+6.48万円=103.68万円
これを買主と売主の両方から受け取ることができるので、
103.68万円×2=207.36万円
合計して最大207.36万円の仲介手数料を得ることができます。
このようなケースは、両方から手数料をもらえるため「両手」(取引)と呼ばれています。仲介業者にとっては手数料収入が最も多い取引の形態となります。
次に、複数の不動産会社が取引に介在するケースです。
あなたがA不動産会社にマンションの売却を依頼しました。A不動産会社が公表したマンションの情報を見たBという不動産会社が、マンションの購入希望者をみつけてきました。法律で定められている仲介手数料の規定は、あくまで不動産会社が受け取っていい「上限」です。上限を守れば、安くする分にはいくら安くしても不動産会社の自由とされています。
買主側が、値引きを希望しているのですが、売主が売買価格を下げることに応じない場合、その値引きで買主側の購入意思がまとまりそうな時には、不動産会社は買主からもらう予定の仲介手数料の値下げを提案することがあります。物件の売買価格そのものは安くできなくても、結果的に買主の支払総額を下げることができるためです。
そうするともちろん不動産会社の手数料収入は減ってしまうのですが、場合によっては成約の方を優先させることがあります。
売主と買主両方から手数料を受け取ることができる「両手」のパターンだった場合、値引きによって一方からの手数料収入が減ってしまったとしても、他方からの手数料も得ることができ収入に余裕があるため、比較的値引き交渉に応じやすいことがあります。
しかし、一方からしか手数料をもらえない「片手」の場合や、複数の業者で手数料を分け合わなければならない「あんこ」の場合は、「両手」とくらべて収入がだいぶ違ってきます。もともとの手数料収入が少なく値引きできる余裕があまりないため、値引き交渉が難しくなります。
仲介手数料が高いと感じたら、これまで述べてきた仲介のパターンを把握して、不動産会社のふところ具合を理解した上で、仲介手数料の値引き交渉をしてみるとよいでしょう。
IESHILコラムとは、不動産物件情報に関連してコラム等の関連情報も提供する付随サービスです。
ご利用により、IESHIL利用規約が適用されますので、規約のご確認をお願い致します。