平成27年より相続税の基礎控除が大幅に引き下げられました。これを受けて「相続税の課税対象者が格段に増える?!」といった煽り文句で、相続税対策がにわかに注目を集めるようになりました。こうした中で、「タワーマンションの購入による節税」なるものが喧伝され、先日、国税庁が監視を強化するといった報道もありました。 そもそも、タワーマンション節税とはどのような仕組なのでしょうか? 全くリスクなく節税ができるものなのでしょうか?
分譲マンションには、通常、敷地権が設定されており、建物と土地を分けて処分ができないようになっています。ところが、相続税の評価は、土地と建物を区分して行うことになっています。
マンションの敷地である土地は、マンションの所有者全員で共有しているため、個々の専有部分の家屋に対応する土地の持分が決められています。そして、タワーマンションのように1つの敷地に所有者が多く存在するほど、その持分の割合は小さくなります。つまり、地価が高い場所であっても、一軒家と比べるとタワーマンションの方が、土地の所有面積は小さくなり、相続税の評価も小さくなるのです。
つまり、下記の例のような計算となります。
<計算例>路線価が全体で50億円の土地であっても、所有持分が1,000分の1なら500万円の価額
マンションにおける家屋の相続税評価額は、固定資産税評価額を使用します。1棟を一括して固定資産税評価額を算出し、各区分所有者の専有部分の床面積の割合で按分します。ただし、各占有部分の「天井の高さ」、「附帯設備の程度」、「仕上げの程度」などに相当の差異がある場合には、一定の算式により補正された割合で按分することとされています。階層や眺望、ブランドなどは考慮されません。
つまり、仕様などの条件が同じであれば、タワーマンションの1階の部屋も最上階の部屋も、固定資産税評価額は変わらないことになります。
例えば、1棟の建物の評価が150億円でも、1室の床面積割合が1,000分の1なら1,500万円の価額になります。前述の<計算例>と合わせて申しますと、土地全体で50億円でも所有持分が1,000分の1のため、500万円の価額。建物全体が150億円でも1室の床面積割合が1,000分の1で、1,500万円の評価で、合計2,000万円が相続税評価額となります。
<家屋を賃貸している場合の家屋の評価>
貸家の評価 = 家屋の評価(固定資産税評価額×1.0)×(1-借家権割合) ※借家権割合は、平成27年時点では全国一律で30%とされています。
となります。
これを先の<計算例>に当てはめると、
タワーマンションの特徴は、売買金額が下がりにくいことです。立地などの条件が良いと、新築時から年数が経っても売買金額が下がらず、場合によっては上がることもあります。そのようなマンションは、例えば、相続前に1億円で購入したものが、相続後いざ現金が必要になった時に1億円で売却できるということです。1億円の現金で相続するよりも、1億円のタワーマンションで相続した方が、相続税評価が圧縮される分、有利ということになります。試算すると以下の様な金額となります。
例えば、30階(売買価格:1億円)のケースなら・・・
相続税評価額:2,000万円(賃貸した場合:1,445万円)
圧縮効果(差額):8,000万円(賃貸した場合:8,555万円)
例えば、1階(売買価格:5,000万円)のケースなら・・・
相続税評価額:2,000万円(賃貸した場合:1,445万円)
圧縮効果(差額):3,000万円(賃貸した場合:3,555万円)
こうしたタワーマンションによる相続税の節税は、相続税の評価方法を定めた「財産評価基本通達」を利用した方法ですが、これは全てのケースで認められるのでしょうか?
当然、行き過ぎた節税には、税務当局が待ったをかけます。平成23年7月1日の裁決事例において、タワーマンションを使った節税方法が否認されています。被相続人である父の入院後、相続人である子が代わってマンションの購入の契約をした事例ではあるものの、裁決では下記のように判断しています。
今後、具体的な法律改正による規制があるのかは、まだ不透明です。過去には、「相続開始前3年以内に被相続人が取得等した土地や建物はその取得価額をもって相続税の課税価格に算入する」という規定があり、これが復活することも考えられます。相続税は、相続時時点の法律などが適用されます。そのため、タワーマンションを購入した時点の規定では評価が下がるけれども、法改正により相続時時点には評価が下がらなくなるというリスクには注意してください。
<執筆者>
渡邊浩滋(税理士・司法書士 渡邊浩滋総合事務所)IESHILコラムとは、不動産物件情報に関連してコラム等の関連情報も提供する付随サービスです。
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