マンション売却時にかかる税金の徹底解説

マンションを売却する時にかかる税金について詳しくお伝えします。

更新日:2016年02月29日

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イエシルコラム編集部

株式会社リブセンス

IESHIL編集部

東京・神奈川・千葉・埼玉の中古マンション価格査定サイトIESHIL(イエシル)が運営。 イエシルには宅建士、FPなど有資格者のイエシルアドバイザーが所属。ネットで調べてわからないことも質問できるイエシル査定サービスを展開しています。

この記事の要点
  • マイホームのマンションを売ったときは譲渡所得3,000万円までは控除される
  • 不動産譲渡所得税がかかる場合、5年以下か、5年超かで税率が大きく変わる
  • 所有期間が10年を超えるマイホームの場合は、さらに軽減税率の特例がある
  • 売却損は他の所得とは損益通算ができないことに注意!
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わかりづらい税制ですが、しっかり理解することで得することも可能です。

はじめに

まず、はじめに覚えておいていただきたいのは、マイホームのマンションは、売った時に3,000万円以上の利益が出ていなければ、所得税は払わなくて済むということです。


これは、マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく「譲渡所得」から3,000万円までは控除される特例があるためです。譲渡所得とは、マンションを売却した金額ではなく、分かりやすく言えば、マンションの取得額や諸費用と売却額との差額の利益分なのです。

マンション売却時にかかる税金―不動産譲渡所得税

このように、マンション売却時にかかる税金を不動産に係る譲渡所得と言います。

この税金は、前述の通り取得額よりも、売却した金額が多いとき、つまりは利益にかかる税金で、所得税と復興特別所得税、住民税(地方税)があります。

不動産譲渡所得は、次のように算出します。

課税譲渡所得金額 = ①売却価格 ー ②取得費 ー ③譲渡費用 ー ④特別控除額


詳細は以下のようになります。

①売却価格
売却価格は、マンションが売れた時の金額です。

②取得費
取得費とは、売却するマンションの購入時の価格や、購入にかかった費用(不動産仲介手数料や登記費用等)のことです。また、建物については、減価償却費相当額の控除後の金額になります。(詳細は後述します。)取得費の金額は、売却時の契約書などで確認しますが、マンションの取得額が不明な場合は、概算額により、売却価格の5%として計算することもできます。

③譲渡費用
譲渡費用とは、売却の際にかかった不動産仲介手数料や登記費用などの諸費用のことです。

④特別控除額
特別控除額とは、冒頭に述べた特例のことです。マイホームの場合には以下の要件を満たすことで最大3,000万円までの控除が受けられます。

居住用財産3,000万円の特別控除について

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・自己居住用の家屋とその敷地を譲渡する場合
以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。

(※)住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の2つの主な要件に該当することが必要です。

イ その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。

ロ 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。(他にも特例を受けるための適用要件がありますので、詳細は確認をして下さい)

ここまで読んだ方で、「3,000万円も売却益が出るなんてことはありえないから、心配しなくていい」と考える方もいるかもしれませんが、そういった方は次の項目は読み飛ばして頂いても結構です。

譲渡所得の税額の計算

次に上記で算出した譲渡所得金額に対しての所得税と住民税の税率について説明します。

税率は、売った年の1月1日現在で5年を超えるか否かにより、適用税率が異なってきます。5年以下の場合は短期譲渡となり、5年を超える場合は長期譲渡となります。また、所得税には、平成25年以降、復興特別所得税(所得税×2. 1%)が別にかかります。本来、短期譲渡では所得税の税率が30%、長期譲渡では税率が15%ですが、復興特別所得税を含む税率は下記のようになります。

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ただし、所有期間が10年を超えるマイホームの場合は、さらに軽減税率の特例があります。

  • 売却の年の1月1日において所有期間が10年を超える場合
  • 自己居住用の住宅とその敷地を譲渡する場合
  • 以前に自己居住用としていたが、住まなくなった日から3年後の12月31日までの間に譲渡する場合

といった条件を満たすと、次の軽減税率が適用できます。
(要件全てに当てはまることが必要ですので、実際の適用に際しては全ての要件をご確認下さい。また、下記の所得税の税率は、復興特別所得税を含む税率になります。)

  • 6,000万円以下の部分=所属税10.21%、住民税4%
  • 6,000万円を超える部分=所得税15.315%、住民税5%

なお、この軽減税率の特例は、前述の3,000万円の特別控除とも併用することができます。

不動産取得にかかった経費の書類は保管しておく

売却の際には、ずいぶん先になるだろうから・・・などと考えずに、取得時に係った経費(仲介手数料、売買契約書の印紙代等)は、きちんと書類を残しておくことをおススメします。

利益に係る税とはいえ、ご覧の通り税率は高いので、譲渡所得の金額を抑えるためにも、費用分はきちんと差し引くことができるようにしておきましょう。

減価償却の計算にも注意を!

また、譲渡所得の金額は、土地の場合は、前述の通り、取得費とは買い入れたときの購入代金や購入手数料などの合計額となります。これに対し、建物の場合は、その建物の建築代金や購入代金などの合計額がそのまま取得費になるわけではありませんので注意が必要です。建物の取得費は建物の購入代金などの合計額から減価償却費相当額を差し引く必要があります。

減価償却費相当額の計算は、その建物が事業に使われていた場合と、それ以外の場合では異なり、以下のようになります。


1 事業に使われていた場合

 建物を取得してから売るまでの、毎年の減価償却費の合計額になります。

 (※)仮に毎年の減価償却費の額を必要経費としていない部分があったとしても、毎年の減価償却費の合計額とすることに変わりはありません。

2 事業に使われていなかった場合

 建物の耐用年数の1.5倍の年数に対応する旧定額法の償却率で求めた1年当たりの減価償却費相当額にその建物を取得してから売るまでの経過年数を乗じて計算します。

売却損は他の所得と損益通算ができない

また、売却して損をしてしまった時に、どうなるかということですが、土地又は建物を譲渡して長期譲渡所得又は短期譲渡所得の金額の計算上譲渡損失の金額が生じた場合には、その損失の金額を、他の土地又は建物の譲渡所得の金額から控除できますが、その控除をしても、控除しきれない損失の金額は、事業所得や給与所得など他の所得と損益通算することはできません。

印紙税

最後に、不動産の売買契約書の記載金額に対して印紙税がかかります。印紙税額は売買契約書に記載された金額によって変わりますが、参考までに1千万円~1億円以下の金額の印紙税を記載しておきます。

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(出典:国税庁 「印紙税額一覧表(平成27年4月1日以降適用分」 での【平成26年4月1日~平成30年3月31日】より一部を抜粋して作成) https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/inshi/pdf/zeigaku_ichiran.pdf)

※「不動産の譲渡に関する契約書」で、平成9年4月1日から平成30年3月31日までの間に作成されるものについては、上記の印紙税額となります。土地賃貸借契約書、土地賃料変更契約書は印紙額が異なり、また契約押印の時期によっても変わるので、必ず国税庁のサイトを参照してください。

まとめ

マンション売却の際の税金のポイントは、マイホームの場合には、譲渡所得、すなわち「売却益」が3,000万円以下の場合は特別控除を受けられるため、税金を払わなくて済むという点です。

また、売却して損をしてしまった場合、他の土地又は建物の譲渡所得の金額から控除できますが、給与所得などの他の所得と損益通算することはできませんので、注意してください。

<執筆者プロフィール>

藤崎徹(AFP、財務研修講師)

資格学校やFP研修機関において、簿記講座、税法講座、経理実務講座の講師を務める。資格は日商簿記1級、AFP、CFPタックス。税金や会計分野を中心に不動産や相続に関する原稿の執筆も精力的に行っている。

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