超低金利が続く現在、ローンを組んでマイホームを購入する上ではチャンスと言えます。例えば年収が400万円前後で自己資金が数十万円しかないようなケースでも、購入する物件の価格や条件によっては、住宅ローンを組んでマイホームを手にするチャンスが十分にあります。
マイホームを求めて不動産会社を訪れる方の中には、「いくらまでなら住宅ローンの審査が通りますか」といった質問をされる方が少なくありません。住宅ローンをいくらまで組めるのかを知ることは、マイホーム選びの第一歩とも言えますが、「いくらまで借りられるのか」ということばかりに気を取られてしまうと、マイホーム購入後の返済時に思わぬ落とし穴にはまってしまう可能性があります。
銀行などの住宅ローンを扱う金融機関は、住宅ローンとして融資する金額の上限について、申込人の年齢、職業、勤続年数、役職、年収、賞与、保有資格、さらには現在の借入金額や預貯金など、さまざまな情報を基に審査をして決定します。
ただ、こうして金融機関が導き出してきた「借りられる金額」というのは、あくまで、客観的にあなたを見て算出した金額であり、あなた自身が本当に「返せる金額」とイコールであるとは限りません。例えば、ローン審査の際に、今後の子供を産む予定や転職する予定までは聞かれませんし、中小企業であればその会社の昇給基準まで金融機関は知る由もありません。少なくとも、ローン審査後に発生する事情については、「借りられる金額」に全く考慮されていないのです。
にもかかわらず、住宅ローンを申し込む人の多くは、「銀行が融資してくれる金額なら自分が返せるはず」と根拠のない安心をしてしまうケースが多く、これが後に発生する「住宅ローン滞納」の引き金となるのです。
身近な例でお話しすると、クレジットカードを利用してショッピングをして、その返済日に口座の残高が足りず、引き落としができなかったとします。これがいわゆる「滞納状態」です。カードの支払いであれば、後日利息とともに支払えば、大きな問題にはなりません。(個人信用情報機関に延滞として記録される可能性はあります。)
しかし、住宅ローンの場合、状況が変わってきます。新築でマイホームを購入する際は、不動産会社などの提携先の金融機関を利用することで、住宅ローンの「優遇金利」の適用を受けているケースは多いと思います。
銀行にもよりますが、この優遇金利の契約書をよく見ると、住宅ローンの返済が滞ると、優遇金利を適用しない旨の記載がある場合があります。つまり、住宅ローンの支払いが滞ると、当初の優遇金利が適用できなくなる恐れがあるのです。優遇金利とは、銀行が公開している店頭金利から差し引く金利分となります。例えば、2.5%の店頭金利に対し、1.5%の優遇金利が適用されると、2.5%-1%で、1%が借入金利となります。優遇金利は1.5%前後のものが多いのですが、万が一、こうした金利優遇の適用がされなくなると、それ以降の金利負担が増え、格段に返済効率が悪くなってしまいます。
さらに、その後も住宅ローンの返済ができずにいると、最終的にはマイホームは差し押えられ、裁判所で強制競売の手続きに入ってしまいます。そうなると、あなたや家族はせっかく手にしたマイホームから出て行かなければならなくなるのです。
問題は、これだけでは終わりません。マイホームを引き渡せば問題が解決するわけではなく、通常、競売によって不動産が落札されると、市場取引価格よりも大幅に安い金額で取引されてしまうため、住宅ローンの残債務に競売による売買代金を充てたとしても、住宅ローンの残債務が上回ってしまうため、住む場所を失った上に、借金だけが残るという最悪の結果となってしまうのです。
この最悪のシナリオを回避する方法としては、大きく分けて次の2つあります。
例えば、夫の給与は従前のままキープできてはいるが、住宅ローン以外にキャッシングなど消費者金融からの借金を作ってしまい、その支払いも含めると今後の返済が困難という場合は、個人再生という手法があります。
個人再生とは裁判所を利用した債務整理の一種です。自己破産との大きな違いは、住宅ローン以外の債務についてだけ大幅な免除を受けられるという点です。個人再生は、すべての借金をリセットする自己破産と違い、債務を大幅に免除して、残った債務を返済していく手法のため、マイホームを手放すことなく借金問題を解決することができるのです。
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<執筆者>
棚田 健大郎(棚田行政書士リーガル法務事務所 代表)
株式会社エイブルに入社。全国約3,000人の社員中、月間仲介手数料の売り上げでトップセールスを記録。管理職として数年勤務後、退社。 行政書士、マンション管理士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得し、棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。不動産、相続、企業法務に強い行政書士として活躍。
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