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分譲マンションの価値はあげることができる?~「修繕」以外の選択肢とは~

人生でも最も大きな買い物とも称されることもある不動産の購入。そんな大きな決断となる不動産の購入・売却において「自分たちの知識は十分なのであろうか…」。そんな不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。 そこでIESHILコラムでは、国内で唯一ともいわれている不動産学部がある明海大学の不動産学部学部長である中城教授にご協力いただき、「生活者として知っておいて欲しい不動産学」をシリーズにしてお届けしていきます。

更新日:2018年12月05日

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イエシルコラム編集部

IESHIL編集部

はじめに

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分譲マンションの購入を検討する際には、そこに長く住むことを想定している人も多いかと思います。経過年数が多い分譲マンションを購入した場合、「修繕」以外の選択肢はあるのか。マンションの価値をあげる解決策(出口)を解説します。

§1 共用部分の維持修繕

分譲マンションでは共用部分の維持管理のために管理組合をつくります。一般に管理組合は一つの分譲マンションごとに一つですが、大規模な分譲マンションや団地になっている場合では複数の管理組合がつくられることもあります。ここでは管理組合が一つの場合を念頭におきます。

管理組合ではマンションの機能を維持し、資産価値を失ってしまわないよう、長期修繕計画を作成します(参照:
分譲マンション購入後に増えているトラブル?!~分譲マンションの修繕積立金~)。日常の維持管理に加えて、長期修繕計画に即して大規模修繕を繰り返せば、長期にわたってマンションを使い続けることができ、50年はもとより100年でも利用可能です。一方で、建物はいつか寿命を迎え、使えなくなります。使えなくなった分譲マンションはどのような選択肢が残されるのでしょうか。

新築や新築後の経過年数が少ないマンションを買った場合や、購入した住戸が不要になった場合は、売却することで課題を解決することが通常ですので、使えなくなった状態に直面する可能性は少ないと思われます。一方、新築後の経過年数が多いマンションを購入した場合などにあっては、この問題に遭遇する可能性があります。

§2 耐用年数を迎えた分譲マンションの「出口」

通常の建物の場合は、建物全体で一つの所有権ですので、それをどのように処分(解体、売却)するか、所有者が単独で決定できます。しかし共有部分をもつ分譲マンションでは、区分所有者全員で構成する管理組合の総意にもとづいて解決策(出口)を決定することになります。

耐用年数を迎えた分譲マンションの出口を大別すると二つになります。
一つは「建替え」で、もう一つは「敷地売却」です。

法律的には、2002(平成14)年にマンションの建替えを念頭においた、マンションの建替え等の円滑化に関する法律(以下、「マンション建替法」という。)が制定され、この法律にもとづいて建替える事例も増えています。同法は2014(平成26)年に改正され、新たに「マンション敷地売却制度」が創設されました。経緯的には、同法制定前からマンションを建替えるケースはありました。また、制定後でも同法によらずに建替える事例もあります。

以上を踏まえて、耐用年数を迎えた分譲マンションの出口をまとめると表1の通りです。

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表1 耐用年数を迎えた分譲マンションの出口

§3 マンション建替法によらない建替えと敷地売却

§3-1 建替え

建物の区分所有法等に関する法律(以下、「区分所有法」という。)では、建替えに関し、下記のように規定し、多数決によって建替えをする道筋を規定しています。

・区分所有者及び議決権の各4/5以上の多数で、建物を取り壊し、(中略)新たに建物を建築する「建替え決議」をすることができる(62条1項)。
・建替えに参加しない区分所有者に対し、区分所有権と敷地利用権1)を時価で売り渡すよう請求することができる(63条4項)。

建替えに賛成した区分所有者は建替えた建物の区分所有権を取得して、再び生活することになります。建替えに参加しない区分所有者は区分所有権の時価相当額の金銭を得て、転出します。

この方法は、4/5以上の賛成を得ることが課題となります。その際の賛否は、建替え建築費の負担額に影響されます。一般の住宅では、建物所有者が負担することが通常で、分譲マンションでもこの原則は同じです。しかし、分譲マンションでは建替え費用が負担できない、建替え費用が高額ならば建替えに賛成しない、など、建築費の負担が合意形成に影響を及ぼし、合意形成を困難にする側面があります。

この点に関し、これまでは「等価交換方式」といわれる方法により、区分所有者が建築費を負担することなく建替え後のマンションを取得できるケースで建替えが成立する傾向がありました。そのカラクリは、建替え前のマンションより大規模なマンションに建替え、増加した住戸を不動産市場で売却して得た収入を、従前の区分所有者の建築費にあてるものです。建替え後のマンションには従前のマンションより大規模となり、区分所有者の数も増加します。等価交換が可能なマンションは、従前の建物の容積率が法律で認められる容積率の上限より低く、増床の余裕があることと、増床部分を売却できる立地にあることです。

初期のころのマンション建替えでは等価交換方式によって「ただ」で建替えられるマンションを中心に建替えが進みました。その後、そのような条件に恵まれたマンションは少なくなり、建替えに際して一定の費用を負担するケースも増えています。

§3-2 敷地売却(建物解体)

区分所有法は区分所有建物の所有や管理に関する事項を中心に規律する法律で、建物の解体や敷地売却については規定がありません。このため、区分所有者が共有している建物の解体や敷地売却は民法の規定が適用されます。民法によると、他の共有者の同意を得なければ共有物に変更を加えることができません(251条)。

したがって、マンションの解体や敷地の売却は、区分所有者全員の賛成がある場合に、これを実行することが可能となります。一般論として建物解体や敷地売却について全員の賛成を得ることは容易ではありません。

§4 マンション建替法による建替えと敷地売却

§4-1 建替え

マンション建替法による建替えは、上述のマンション建替法によらない建替え(任意の建替え)をベースとしつつ、より的確に建替えを進めることができるよう、「マンション建替事業」を規定しました。

その流れは図1の通りです。4/5以上の賛成で建替え決議が成立する点は同じですが、任意の建替えと比較した場合の特長は、管理組合とは別に、建替事業の主体となる建替組合を組織する点です。
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図1 国土交通省 「ご存知ですか?「マンション建替法」改正について」:p2より引用・抜粋 (http://www.mlit.go.jp/common/001090271.pdf)

§4-2 敷地売却

マンション建替法の改正によって新たに創設された「マンション敷地売却制度」は耐震性が不足するマンションについて適用される制度です。耐震診断の結果、耐震性不足が認定されると除却が必要なマンションという位置づけとなり、マンション敷地売却決議(4/5以上の多数決議)、マンション敷地売却組合の設立を行います。組合が土地と建物の権利を取得したうえで、買受人(デベロッパー等)が建物を解体し、新しいマンションを建築します。従前の区分所有者は、各自の権利に応じた分配金をもらってマンションを明け渡します。希望すれば新しいマンションに入居することもできます(図2)。
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図2 国土交通省 「ご存知ですか?「マンション建替法」改正について」:p2より引用・作成 (http://www.mlit.go.jp/common/001090271.pdf)

§5 マンション建替えの事例 3)

マンション建替法にもとづくマンション建替組合を設立して、最初に実現した建替え事業は、諏訪町住宅(東京都新宿区高田馬場 1957(昭和32)年建築)です。地上4階建てなど3棟60戸から、建替え後は、地上5階地下1階96戸の住宅になりました。竣工は2015(平成17)年です。

大規模なマンションの建替えの例として、諏訪2丁目住宅(東京都多摩市諏訪 1971(昭和46)年建築)があります。地上5階建て23棟640戸から、建替え後は、地上14階地下1階など7棟1,249戸の住宅になりました。

マンション建替法にもとづくマンション敷地売却事業としては、番町ヴィラ(東京都千代田区四番町 1970(昭和45)年があります。

おわりに

経過年数が多い分譲マンションの価値をあげる方法としては、「建替え」「敷地売却」という解決策(出口)があります。しかし一定の費用負担を必要とするケースも多く、区分所有者の賛成を得ることも容易ではありません。分譲マンションの購入を検討する際には、マンション建替えの事例を参考に、選択肢について正しく把握することが大切です。

【補注】
1) 以下、簡単のために「区分所有権」と総称する。
2) 参考文献1 による
3) 参考文献2 による

【参考文献】
1. 国土交通省 「ご存知ですか?「マンション建替法」改正について」
http://www.mlit.go.jp/common/001090271.pdf
2. マンション建替法に基づく建替え・敷地売却事業一覧
http://www.mansion-tokyo.jp/tatekae/35jirei-list.html
3. 諏訪町住宅建替え事業(現アトラス諏訪町レジデンス)
https://www.afr-web.co.jp/tatekae-lab/example/suwacho.html/
4. 都市整備局住宅政策推進部マンション課 諏訪2丁目住宅の建替えによる新しいマンションが竣工
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2013/10/DATA/20nag300.pdf

この記事の執筆者

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明海大学 不動産学部 教授
学部長 中城 康彦氏

【専攻分野】
不動産企画経営管理、不動産鑑定評価、建築設計、不動産流通

【経歴】
1979年 福手健夫建築都市計画事務所
1983年 財団法人 日本不動産研究所
1988年 VARNZ AMERICA, Inc.
1992年 株式会社 スペースフロンティア 代表取締役
1996年 明海大学 不動産学部 専任講師
2003年 明海大学 不動産学部 教授
2004年 ケンブリッジ大学土地経済学部客員研究員(2005年3月まで)
2012年4月 明海大学 不動産学部長 不動産学研究科長

【主な受賞歴】
2015年 都市住宅学会論文賞
2015年 資産評価政策学会論説賞
2016年・2014年・2013年 日本不動産学会論説賞

この記事の問い合わせ:nakajo@meikai.ac.jp
明海大学HP:http://www.meikai.ac.jp/

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