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分譲マンション購入後に増えているトラブル?!~分譲マンションの修繕積立金~

人生でも最も大きな買い物とも称されることもある不動産の購入。そんな大きな決断となる不動産の購入・売却において「自分たちの知識は十分なのであろうか…」。そんな不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。 そこでIESHILコラムでは、国内で唯一ともいわれている不動産学部がある明海大学の不動産学部学部長である中城教授にご協力いただき、「生活者として知っておいて欲しい不動産学」をシリーズにしてお届けしていきます。

更新日:2018年11月16日

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イエシルコラム編集部

IESHIL編集部

はじめに

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分譲マンションの購入を検討する際には、購入費用の他にも維持費用が必要になります。その中でも「修繕積立金」という費用があるのをご存知ですか?


修繕積立金」とは、賃貸で馴染みのある「管理費」とは別に必要になってくる費用です。最近では購入時の見積もりが甘く費用が不足し、積立金が増額になるなどのトラブルも増えてきています。


今回は「修繕積立金」の性質を理解し、購入を検討しているマンションの状況を正しく把握する指標を解説します。

§1 共用部分の維持修繕

分譲マンションでは専有部分は区分所有者が所有する一方、建物の共用部分と敷地は区分所有者全員で共有しています。このため、共有する共用部分と敷地の維持修繕は全員で取り組むことになります。修繕が必要となるのは主に建物の共用部分ですが、敷地には塀や門扉のほか、地中の給排水管など、維持修繕を必要とする附属物等があります。もっとも、建物の維持修繕費と比べるとその金額は少ないことより、以下では建物の共用部分の維持修繕を念頭に記述します。


分譲マンションでは管理費(参照:マンションの管理を知る!~分譲マンションと賃貸マンションの「管理費」は何が違う!?~)のほかに、修繕積立金を集めます。管理費は、共用部分の清掃や水道光熱費などに充当するために集めるお金です。つまり、日常の利用を円滑に行うための費用です。


これに対して修繕積立金は、利用し続けることによって発生する共用部分の不具合を修繕するための費用です。管理費が日常的に発生する費用を支払うためのお金であることに対し、修繕積立金は将来予想される不具合を修繕するためにあらかじめ積み立てるお金であることも相違点です。

言い換えると、管理費は実際に必要となっている実費相当額で、金額の根拠は明確です。一方、修繕積立金は将来起きるであろう事象を想定した金額ですので、金額の根拠は必ずしも明確とは言い切れない部分があり、トラブルにつながる可能性もあります。トラブルの多くは、購入時の修繕積立金が不足し修繕工事費が払えない、そのため積立金が増額になる、修繕一時金を徴収するなどです。

修繕積立金の性質を理解し、購入を検討しているマンションの状況を正しく把握することが大切です。なお、専有部分の修繕は区分所有者の責任ですので、専有部分のリフォーム等のためお費用はここでいう修繕積立金とは別物です。

§2 修繕積立金の額の目安

修繕積立金の額は共用部分の広さや多さ、使っている材料や工事の方法によって様々です。また新築後、どの程度年数が経っているかによっても異なりますが、国土交通省の調査によれば表1の通りです。


購入を検討しているマンションの修繕積立金の額を表1の数値と比較して、著しくかい離していないかチェックしてみましょう。なお、国土交通省の調査では機械式駐車場がある場合は一定額を加算する必要があることが明らかになっています。
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表1 国土交通省 「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」 2011年4月:p6より引用・作 (http://www.mlit.go.jp/common/001080837.pdf)

§3 修繕積立金の積立てかた

修繕積立金は将来予想される修繕のためにあらかじめ積立てるお金です。どの時期に、どのような部分に、どれだけの費用がかかる修繕工事が発生するかの推計方法は後述しますが、図1と図2では12年後、24年後、30年後に多額の修繕費が発生するケースを想定しています(図中の「修繕工事費の累計額」が急増する年)。


図1は30年間同じ金額を積立ててこれに備えるケースです。これを「均等積立方式」といいます。図2では、1年目に相当額の修繕積立基金を積立てたあと、段階的に積立金を増額するケースです。これを「段階増額積立方式」といいます。


いずれのケースも30年間で必要となる修繕工事費(図中の「修繕工事費の累計額」)に不足が生じないよう、修繕積立金(図中の「修繕積立金の累計額」)を積立てています。

二つの異なる積立方式を採用する中古のマンションを、例えば新築後10年経過した時点で購入する場合は下記の通りです。

(1)積立金の金額は異なるが、それぞれ適切な積立金額である。したがって、金額の多寡だけで適切、不適切を判断することはできない。
(2)均等積立方式は購入後も修繕積立金の金額は変わらないが、段階増額積立方式は将来にわたって何回か金額が増加する(図2では4回)。
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図1 均等積立方式を採用する場合の修繕積立金と修繕工事費の関係 ー 国土交通省 「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」 2011年4月:p10より引用・抜粋 (http://www.mlit.go.jp/common/001080837.pdf)

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図2 段階増額積立方式を採用する場合の修繕積立金と修繕工事費の関係 ー 国土交通省 「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」 2011年4月:p10より引用・抜粋 (http://www.mlit.go.jp/common/001080837.pdf)

§4 長期修繕計画にもとづいて積立金の額を決める

図1、図2中の「修繕工事費の累計額」は30年間で必要になる修繕工事費の合計額を示し、修繕積立金の金額を決定する根拠となる重要な数値です。その数値は、「長期修繕計画」を作成して推計します。長期修繕計画は共用部分に使われている材料の種類、品質、使われている場所などによって「修繕周期」を設定したうえで、修繕工費費を予想します。


「修繕周期」の例を表2に示します。鉄部の塗装は4年、防水の補修は12年、防水の撤去・新設は24年、エレベーターの取替は30年などとなっています。このため、図1、図2では12年目、24年目、30年目に多額の修繕工事費が発生しています。

図3は新築後4年経過したマンションが、新築後15年となるまでに必要となる修繕工事費累計(推定額)と、修繕積立金の累計、次年度繰越金額を示しています。各年とも修繕工事費累計額<修繕積立金の累計であり問題のない状態にあります。どのマンションでもこのような長期修繕計画のもとづく収支予想を作成しているはずですので、購入時は入手して状況を把握することが望まれます。
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表2 修繕周期の設定例 ー 公益財団法人マンション管理センター「長期修繕計画と修繕積立金」:p6 p8より引用・作成 (http://www.mankan.or.jp/07_skillsupport/pdf/shuzen-sample2.pdf)

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図3 長期修繕計画(修繕工事費と修繕積立金の関係) 注:図中の縦棒グラフは当該年の修繕工事費をしめす ー 公益財団法人マンション管理センター「長期修繕計画と修繕積立金」:p11より引用・作成 (http://www.mankan.or.jp/07_skillsupport/pdf/shuzen-sample2.pdf)

§5 修繕積立金にかかる留意点

賃貸マンションでは修繕積立金相当額は家賃に含まれているため、独立した費用として発生することはありません。一方、分譲マンションを買う場合は、専有部分の維持費や修繕費の他に、共用部分の管理費と修繕積立金が発生します。


修繕積立金は、共用部分の修繕工費の度に工事費を集めることは大変なことから、一定額をあらかじめ積立てるものです。一方で、その時点で必要なお金ではないために、修繕積立金を安く設定してマンションを買いやすくすることがあるなどの問題点も指摘されています。

修繕積立金については以下の点に注意します。
(1)目安となる金額から著しく逸脱していないか。
(2)しっかりとした長期修繕計画にもとづいて適切な修繕積立金の額を積立てているか。適切に長期修繕計画を作成していないマンションの購入は慎重になった方がよいでしょう。
(3)修繕積立金が不足する場合、金額の増額や修繕一時金を徴収することがあります。マンション全体の現在の積立金額と近い将来の修繕計画を比較して、増額や一時金が予想される状態かどうかをチェックします。
(4)購入しようとしている専有部分の区分所有者に修繕積立金の未払いがないかチェックします。未払いがある場合は、売買の際に精算してもらいます。

おわりに

分譲マンションの購入を検討する際に見落としがちな「修繕積立金」ですが、将来確実に必要になる費用です。購入検討時には「長期修繕計画のもとづく収支予想」を確実に入手して、「修繕積立金」を含めた維持費用について正しく把握することが大切です。
【参考文献】

1. 国土交通省 「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」 2011年4月
http://www.mlit.go.jp/common/001080837.pdf
2. 公益財団法人マンション管理センター「長期修繕計画と修繕積立金」
http://www.mankan.or.jp/07_skillsupport/pdf/shuzen-sample2.pdf

この記事の執筆者

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明海大学 不動産学部 教授
学部長 中城 康彦氏

【専攻分野】
不動産企画経営管理、不動産鑑定評価、建築設計、不動産流通

【経歴】
1979年 福手健夫建築都市計画事務所
1983年 財団法人 日本不動産研究所
1988年 VARNZ AMERICA, Inc.
1992年 株式会社 スペースフロンティア 代表取締役
1996年 明海大学 不動産学部 専任講師
2003年 明海大学 不動産学部 教授
2004年 ケンブリッジ大学土地経済学部客員研究員(2005年3月まで)
2012年4月 明海大学 不動産学部長 不動産学研究科長

【主な受賞歴】
2015年 都市住宅学会論文賞
2015年 資産評価政策学会論説賞
2016年・2014年・2013年 日本不動産学会論説賞

この記事の問い合わせ:nakajo@meikai.ac.jp
明海大学HP:http://www.meikai.ac.jp/

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