マンションの管理を知る!~分譲マンションと賃貸マンションの「管理費」は何が違う!?~

人生でも最も大きな買い物とも称されることもある不動産の購入。そんな大きな決断となる不動産の購入・売却において「自分たちの知識は十分なのであろうか…」。そんな不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。 そこでIESHILコラムでは、国内で唯一ともいわれている不動産学部がある明海大学の不動産学部学部長である中城教授にご協力いただき、「生活者として知っておいて欲しい不動産学」をシリーズにしてお届けしていきます。

更新日:2018年10月29日

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イエシルコラム編集部

株式会社リブセンス

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東京・神奈川・千葉・埼玉の中古マンション価格査定サイトIESHIL(イエシル)が運営。 イエシルには宅建士、FPなど有資格者のイエシルアドバイザーが所属。ネットで調べてわからないことも質問できるイエシル査定サービスを展開しています。

はじめに

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「賃貸」に現在居住をされている方でも、マンションに住んでいる場合「管理費」というものを知っている、もしくは毎月支払っているという方も多いと思います。
また、今後物件の所有者になると賃貸の時とは異なり、管理組合の理事になる可能性もあります。そもそもマンション管理の仕組みはどうなっているのか、管理組合のメリットとは何なのか。

分譲賃貸に入居し、支払う「管理費」と分譲オーナーとして支払うケース。同じ管理費でも、その責任や決定権にどのような違いがあるのかな「マンション管理とは何か」を今回はご紹介します。

§1 区分所有の仕組み

分譲マンションは 1棟の建物内に複数の建物所有権が存在する点が一般の建物との相違点です。この所有権を「区分所有権」といい、一般の建物の「所有権」と区別します。専有部分、つまり、住戸部分は区分所有者が区分所有権で所有します。一方、専有部分以外は共用部分として区分所有者全員で共有します。また、建物が立っている敷地も区分所有者全員で共有します(※1)。そして、建物の共用部分や敷地は区分所有者全員で利用します。

図1は15の専有部分をもつ分譲マンションを模式化したもので、A1~A15は区分所有者としてそれぞれの専有部分を所有します。建物の共用部分はA1~A15で共有し、敷地は土地所有権をA1~A15で共有します。建築設備も専有部分の範囲外は共用部分となります(参照:リフォームはどこまでできるのか~中古マンションを購入するなら知っておきたい!リフォームのこと~

※1土地を所有しない借地権マンションでは、地主から借りて土地を使う権利である借地権を全員で準共有する。準共有は共有と同様の考え方だが、法律上は共有は所有権について用い、それ以外の権利は準共有と表現することになっている。


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図1 専有部分と共用部分※専有部分の範囲の詳細および建築設備についてはこちらの記事を参照:リフォームはどこまでできるのか~中古マンションを購入するなら知っておきたい!リフォームのこと~ (https://www.ieshil.com/columns/211/)

§3 管理費を支払う

共用部分の清掃や植栽の剪定、照明やエレベーターを動かすための電気代など、管理のためには費用が発生します。管理組合は管理に必要となる費用を管理費として区分所有者から集金します。
管理費の集金と支払いは一般に、以下のとおりです。

1)マンション全体で1年間に必要となる管理費を見積もり、管理組合の総会で承認を得ます(1年間の予算額の決定)。
2)1年間の予算額から各区分所有者が負担すべき金額を決定します。負担割合はマンションの管理規約等で決めますが、専有面積割合とすることが一般的です(各住戸の管理費の決定)。
3)発生した費用に対して提示される請求額の妥当性を管理組合で確認し、支払います。
4)1年間に支出した管理費を集計して次年度の管理組合の総会に提示し、承認を受けます。
5)上記4)と併せて、1年間の実績に必要な加減を行って次年度の管理費の予算額、および、各住戸の管理費を決定します。

区分所有者は請求された管理費を支払います。支払い方法は、口座引き落としが一般的です。残額不足等によって管理費の未収が発生すると、督促するなど、管理組合に迷惑をかけるだけでなく、どこかの住戸が売りに出された場合に管理費の未納が買主候補者等の知るところとなって、売買の阻害要因となる可能性があるなど、より深刻な影響を与える可能性も否定できません。管理費の支払いは区分所有者の責務として、適切に行います。

§4 賃貸住宅の管理費との相違点

民間の賃貸住宅を借りている場合も、賃貸借契約で定めた管理費を支払うことが少なくありません。この場合の管理費の名目は、共用部分や敷地を管理するために必要な人件費、材料費、水光熱費などで、分譲マンションと大差ありません。しかし、管理費の額については、まず、その決定者がちがいます。分譲マンションでは区分所有者、つまり、入居者が自分たちで決めますが、賃貸住宅は建物を所有する賃貸人(大家)が決定します。

次に、額の決定根拠がちがいます。分譲マンションは上述のとおり、実績を踏まえた実費(実際に必要となる額)を集金しますが、賃貸住宅は必ずしも実費は開示されず、実費相当額とは言い切れません。家賃や周辺相場との関係で「おかしくない金額」が決定されている可能性があります。

さらに、管理費の項目が定義されているわけではありませんので、賃貸住宅にあっては、管理費として集金すべき項目を管理費ではなく、家賃の一部として徴収することもあります。また、賃貸住宅には定期点検や電気代がかさむエレベーターがないなど、管理すべき施設や設備の違いより、分譲マンションの管理費より安い、あるいは、安く見えることがあります。

§5 分譲マンションの賃貸住戸の管理費

分譲マンションの住戸が賃貸に出されることがあります。この場合の管理費はどのようになるのでしょうか。賃貸している区分所有者は、区分所有者の責務として、その住戸の管理費として規定される額(X円)を支払う必要があります。

これに対してその賃貸している区分所有者が、賃借している入居者に要求する管理費は、下記の3つのケースが考えられます。
1)    X円と同額
2)    X円より高い
3)    X円より安い(管理費をとらない場合を含む)

管理費をいくらにするかは賃貸人と賃借人の合意ですから、このいずれであっても法的な問題はありません。説明が容易という点では1)のケースが多いと思いますが、

・専有部分を賃貸する場合の管理費=共用部分の管理費(X円)+専有部分の管理費

であってもおかしくないことを考えると、2)にも合理性があります。もとより、水光熱費は賃借人が直接支払うことを考えれば、分譲マンションの専有部分の管理費が多額になることは少ないといえます。

また、§4と同様の理由で、3)となることもあります。区分所有者が貸しやすさを考えて管理費を、

・周辺の賃貸住宅の管理費<分譲マンションの賃貸住戸の管理費<X円

とすることは十分考えられます。上述のとおり、この場合でも区分所有者はX円を管理組合に支払う必要があります。

分譲マンションの住戸の賃借人が管理費を支払わないとどうなるでしょうか。賃借人は賃貸人との間で、所定の管理費を支払うことに合意していますから、それを支払わないことは債務不履行となります。債務不履行は契約解除事由となりますから、極端な場合は、賃貸借契約を解除され、退去することになります。

もっとも、借地借家法により賃貸人からの契約解除は制約される、敷金を充当するなど管理費の不払いへの対応方法を契約で決めている場合がある、などから、1回の管理費の不払いが契約解除に直結するわけではありません。

一方で、管理費の支払が免れるわけではありませんので、支払が遅滞した場合は、可及的速やかに支払います。以上は、分譲マンションの賃貸住戸に限らず、賃貸住宅全般に共通です。

§6 管理組合の運営

分譲マンションでは必ず管理組合をつくり、マンション管理をすることになっています(区分所有法3条)。「マンションは管理を買え」といわれるように、管理の良否が、くらしの快適や資産価値の向上に直結します。

管理組合は区分所有者全員で構成しますが、日々の運営は区分所有者の中から選ばれた理事が行うことが一般的です。規模によって異なりますが、一般に、数人の理事を選びその中から一人の理事長を選任します。日常の運営の全てを管理組合が差配する自主管理のマンションもありますが、管理組合の総会で管理会社を決定して管理を委託する委託管理が一般的です。


マンション管理に必要な業務のうち、どの業務を管理会社に委託するかは総会で決定しますが、いずれ、管理会社が日常の細かな業務や専門性の高い業務を中心に管理組合をサポートします。


管理組合の理事は区分所有者であればだれでも就任する可能性があります。いいかえれば、区分所有者の責務の一つといえます。理事の任期は通常1年ですが、業務の継続性を重視して複数年の任期とすることもあります。良いマンション管理は管理組合、いいかえると、区分所有者の管理に対する意識の高さと、管理会社の良質なサービスが噛み合うことで実現できます。

理事になることは責務である半面、他の区分所有者と交流する良い機会でもあります。また、マンション管理の実態に触れるチャンスでもあります。交流を通じて良いマンション管理を実現し、快適な暮らしと資産価値を守る、区分所有法はそのような住民自治による豊かな住環境と住生活の実現を理念としています。

この記事の執筆者

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明海大学 不動産学部 教授 
学部長 中城 康彦氏

【専攻分野】
不動産企画経営管理、不動産鑑定評価、建築設計、不動産流通

【経歴】
1979年 福手健夫建築都市計画事務所
1983年 財団法人 日本不動産研究所
1988年 VARNZ AMERICA, Inc.
1992年 株式会社 スペースフロンティア 代表取締役
1996年 明海大学 不動産学部 専任講師
2003年 明海大学 不動産学部 教授
2004年 ケンブリッジ大学土地経済学部客員研究員(2005年3月まで)
2012年4月 明海大学 不動産学部長 不動産学研究科長
【主な受賞歴】
2015年 都市住宅学会論文賞
2015年 資産評価政策学会論説賞
2016年・2014年・2013年 日本不動産学会論説賞

この記事の問い合わせ: nakajo@meikai.ac.jp
明海大学HP:http://www.meikai.ac.jp/

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