【第8講】物件調査や交渉など宅建業者の役割と使い方

取引態様は、不動産探しの際に、どのように関わってくるのでしょうか。そして不動産会社の役割と仕事とは、どのようなものなのかを解説します。

更新日:2016年03月10日

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この記事の要点
  • 物件を見るときには、この販売態様も必ずチェック
  • 宅建業者が携わらない取引の場合には仲介手数料は発生しない
  • 手間やトラブルを防いでスムーズに取引を行いたい買主、売主のために、宅建業者が依頼を受ける
  • 質問や相談に乗り、無事に決済ができるまでサポートする良きパートナーであることも、不動産業者の大切な役割
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前回の不動産会社の取引態様で、不動産会社の取引の3つの種類(取引態様)として、「売主(貸主)」、「代理」、「仲介(媒介)」があることをお話ししました。この取引態様は、不動産探しの際に、どのように関わってくるのでしょうか。そして不動産会社の役割と仕事とは、どのようなものなのかを解説します。

「取引態様」を物件購入にどう生かすか

どの取引態様が一番良いということは一概にはいえませんが、通常、売主 → 代理 → 仲介の順番で、仲介手数料に伴った初期費用がかかります。また売主や代理の物件は、売主ならではの長期保証などがあるので、仲介手数料をなるべく払いたくない場合は、この優先順位で物件を探すとよいでしょう。

最近は手数料を無料にしたり、割引をする会社もありますので、そういった所に問い合わせるのもよいでしょう。また、売主が同一の物件を自社でも売り出しながら、並行して一般媒介でも仲介に出す場合があり、同じ物件が違う取引態様で市場に出回っていることがあります。同じ物件でも売主から購入した方が、手数料の分だけ安く買えます。物件を見るときには、この販売態様も必ずチェックしましょう。

このように大まかに3種類ある取引態様ですが、不動産会社によって、それぞれ得意とする取引態様があります。規模が比較的小さく、利便性の高い駅前のビルなどに店舗を構える不動産会社は、仲介業者が多いです。仲介取引を扱うには機転とフットワークの軽さに加え、広い知識と経験がものをいいますので、営業マンからはバイタリティあふれる印象を受けるかもしれません。

大きめの自社ビルを持つ不動産会社は、分譲住宅ビルダーやデベロッパー、工務店、ハウスメーカーなど、自社物件を持っている不動産会社が多いです。売主取引を主に扱うため、営業マンは自社物件にとても精通していますが、仲介業者と比べると、他社物件やエリアの相場観などについては少し疎い面もあります。大手不動産会社などは、売主取引を主に扱う自社分譲住宅販売部や注文住宅販売部と、仲介業を主に扱う部門を別のグループ会社にしています。

宅地建物取引業者の役割

仲介手数料とは、宅地建物取引業(以下、宅建業と簡略表記します)を営む者が仲介による取引での成果報酬として宅建業法で定められていますので、宅建業者が携わらない取引の場合には発生しません。

例えば、物件の所有者である個人の売主が買主と直接やりとりをして不動産の売買取引を行う場合、売主が宅建業者ではなければ宅建業と見なされません。取引に介在する宅建業者がいないので、仲介手数料は一切かからないのです。

ただし、その場合、買主は、購入物件の持つ特徴や瑕疵の有無、権利関係の確認などの複雑な物件調査と、それにかかる費用を自己負担で行わなければなりません。売主としても、仲介業者を介さなければ、仲介手数料の出費はありませんが、買い手を見つけるための販売活動すべてを自身で行うことになります。

また、買主、売主のそれぞれの立場に立ち、取引が双方にとって公平なのかを、経験に基づいた判断や助言をする第三者がいないため、トラブルが起きやすいというリスクもあります。不動産の取引には専門的な知識と経験が必要とされますので、こういった手間やトラブルを防いでスムーズに取引を行いたい買主、売主のために、宅建業者が依頼を受けることになります。

宅地建物取引業者の主な仕事

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それでは、宅建業者の仕事にはどんなものがあるのか、仲介業者が買主に対して行う仕事を例に解説します。

<情報収集>

主に仲介を行う宅建業者にとって、情報収集は基本です。顧客の希望に近い物件がないかと常に探しています。不動産指定流通機構であるレインズなどをほぼ毎日チェックしているので、新しい物件が出たらすぐに分かります。仲介業者の朝は、レインズから始まるといっても過言ではないでしょう。自社物件を持つ宅建業者は、現地の見回りや掃除などの物件管理を小まめに行います。

<現地案内>

顧客の希望に近い物件を見つけたら、即アプローチします。売主側の業者に買い付けの有無(売れてないか)を確認します。顧客に物件を紹介して興味を持てば、現地を案内します。車での送迎や周辺案内なども行います。

<物件調査と交渉事項の調整>

役所や関係各所を回り、物件の法令上の制限や登記事項・権利関係などの確認をして、必要な書類と情報を集めます。顧客からの質問や、入居・決済時期の相談、価格などの交渉事項を売主に確認します。

<資金計画の提案と金融機関とのやりとり>

購入にかかる諸費用を説明し、住宅ローンなどを利用する場合は推奨金融機関、借入額と返済計画を提案します。借入ができるかの事前審査、および購入申込み後の金融機関へのローン申込みも代行します。

<「重要事項説明書」および「契約書」の作成と重要事項説明>

買い付けの申込みを行ったら、宅建業法第37条に基づき、物件の重要事項を記載した説明書面と契約書を作成します。
契約時に書面で確認をしながら、重要事項の説明を行います。重要事項説明は、宅建業の有資格者である「宅建士」が記名捺印して、口頭で買主に説明することが義務付けられており、無資格者が説明することは認められません。説明が義務付けられた事項がとても多いため、2時間ほどかかります。売買契約書・重要事項説明書は2通作成し、売主と買主それぞれに交付します。

<各関係者とのやりとりと日程調整>

決済までを円滑に行うため、売買契約に関わる関係者(土地家屋調査士、司法書士、金融機関など)と日時の調整などをやりとりします。物件に関する専門的な情報が必要なため、宅建業者から連絡を入れます。建築中の未完成物件や、リフォームなどの追加工事がある場合は、建設工事関係者に引き渡しの予定時期までに工事が間に合うかの確認を取ります。

それぞれの都合と買主、売主の希望を調整しながら、場合によっては火災保険、引越業者などについても提案し、間に立つ宅建業者が決済・引き渡しの段取りをまとめます。

<決済(引き渡し)>

買主からは残代金の支払い、売主からは物件の引き渡しを行う決済に立ち会います。 売主と買主の間で、鍵とお金の交換を行います。

ここまでの間、買主が来社したり、銀行や役所に出向く必要があるときは、前日までに小まめに日時と持ち物などの確認連絡を行うなど、買主の質問や不安の相談相手になることもあります。大きな買い物ですから、買主は不安になることが多々あるのです。どんなときであっても、その都度、質問や相談に乗り、無事に決済ができるまでサポートする良きパートナーであることも、不動産業者の大切な仕事です。

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