【第6講】不動産の仲介手数料が無料や半額になるカラクリ

最近、格安仲介手数料を売りにした不動産会社が台頭してきていますが、不動産の仲介手数料が無料や半額になるのは一体どういうカラクリのでしょうか?

更新日:2016年03月10日

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この記事の要点
  • 本来、不動産仲介会社の売り上げのほとんどは、依頼人である売主、買主から支払われる仲介手数料で成り立っている
  • 仲介業者は必ずしもその上限の仲介手数料を請求しなければならない訳ではない
  • 「仲介手数料無料」といった謳い文句は、ほとんどが買主がターゲット
  • 手数料の引き下げは、大幅な経費削減などの企業努力のもとに実現
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不動産の仲介手数料が無料や半額になるのは一体どういうカラクリのでしょうか?

手数料タダで不動産屋は成り立つのか?

近年、「仲介手数料半額」や「仲介手数料無料」といった格安仲介手数料を売りにした不動産会社が増えてきています。インターネットで不動産情報について検索していると、このようなフレーズを目にすることがあるのではないでしょうか。

不動産の売買にはとても大きな金額がかかるため、通常であれば売買金額の3%+6万円はかかる仲介手数料が半額になったり、無料になるのであれば、売主、買主にとっては歓迎すべきことですね。

しかし、不動産仲介会社の売り上げのほとんどは、依頼人である売主、買主から支払われる仲介手数料で成り立っているはずです。仲介手数料を無料にしてしまったら、不動産会社はどこから利益を得るのでしょうか。

仲介手数料が高すぎる!?

仲介手数料は、宅建業法に基づきその「上限」額が定められています。売買金額の3%+6万円というのは、あくまでも「上限」であり、仲介業者は必ずしもその上限の金額を取り引きの当事者に請求しなければならないということではありません。また、当事者である売主あるいは買主は、必ずその上限の金額を仲介業者に支払わなければいけないという決まりもありません。

しかし、不動産業界では、専門的な知識のない一般消費者である売主、買主に対し、法定上限額の仲介手数料を請求し、売主や買主は疑問を持つことなくそれを支払う、ということが当然のように行われてきました。実際、不動産会社の営業担当が、まるで「売買額の3%+6万円」という手数料金額が、法律で決まっているかのように顧客に話していることもあります。

仮に3,000万円の物件を仲介したとすると、この手数料の上限額は、売主、買主のそれぞれについて103.68万円です。引っ越し費用や、家電や家具の購入費用などをまかなっておつりがくる金額でしょう。「両手」取引の仲介になると、上限額での仲介手数料はその2倍の207.36万円です。

こうした高額な仲介手数料を疑問視する見方もあり、最近は、不動産会社の間で、この売主、買主の媒介契約の際の手数料を引き下げる動きが出てきました。

売主と買主、手数料が無料になるのはどちらかだけ!?

ネット広告や、不動産会社の店頭のノボリなどで目にする「仲介手数料無料」といった謳い文句は、ほとんどが買主をターゲットにしています。

前回の仲介手数料の仕組みの解説で、取り引きに何社の不動産会社が関わっているかによって、手数料収入の金額に大きな違いがあることをお話ししました。売主から売却の依頼を受けた不動産会社が、自力で買主を見つけて契約を成立させた「両手」取引の場合、不動産会社は売主と買主の両方から手数料をもらいます。

「両手」の場合、一方(この場合買主)からの手数料を無料にすると不動産会社の収入は「両手」の半分にはなりますが、もう一方(売主)からの手数料、すなわち「片手」分の収入は手に入るので、ゼロにはなりません。

また、物件の売主が不動産会社などの場合、不動産会社間での仲介手数料は、前述した3%+6万円の上限額を支払うことが慣例となっています。仲介業者は売主である不動産会社から上限額いっぱいの仲介手数料を受け取ることができるため、個人である買主側からは手数料を受け取らない形にしても収入を確保できます。

つまり、「仲介手数料無料」の手数料とは、多くの場合、「買主が支払う手数料」のことを指しています。手数料で得られる収入を、あえて「両手」ではなく「片手」にすることで「仲介手数料無料」を実現し、それを売りにすることによって、より買主が見つかりやすくなり、競合他社との差別化を図ることができるのです。

なお、これまで売主側の仲介手数料が無料になるパターンは少なかったのですが、新興IT不動産ベンチャーの登場により、売り物件の確保のために売主の売却時の仲介手数料を無料にする動きも増えてきています。

仲介手数料を半額、または割引するケースも

「両手」取引の売主と買主がどちらも個人であった場合、双方の仲介手数料を半額ずつにすることでバランスをとることがあります。

「両手」取引ではなく、売主、買主のどちらか一方に他の仲介業者が付いている「片手」取引の場合は、一方からだけの収入になるので、仲介手数料を無料にするとまったく利益が取れなくなってしまいます。そうした場合は、仲介手数料を半額としたり、価格に応じた割引を行って、手数料の「おトク感」を出します。

手数料引き下げのための企業努力

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こうした手数料の引き下げは、大幅な経費削減などの企業努力のもとに実現しています。

例として挙げられるのは、古くから不動産屋のイメージである、しつこい営業電話、オープンハウスの際に看板を持って立っているサンドイッチマン、営業担当者の現場待機などの業務の見直しを行い、人件費を削減すること。

もうひとつは、広告費を抑えることです。なかでも、新聞の折り込みチラシや簡易看板、ビラなどの紙媒体の広告は、その印刷や校正にも手間がかかるうえ、数をまかなければ意味がありませんのでとても経費がかかります。また、最近の消費者は、チラシで物件情報を見ても、一度インターネットで検索して詳しい情報を確認してから再度問い合わせをするか、検討することも多く、直接の問い合わせに結び付くまでに時間を要する場合が多いのです。

無店舗型不動産ベンチャーの台頭

コスト削減を体現している存在が、無店舗型のIT系の不動産ベンチャー企業です。

実店舗を持たず、必要な手続きのほとんどをインターネット経由で行い、「仲介手数料無料」を大きな売りとしていることが特徴です。実店舗を持たないことで、事務所や店舗を設置する初期費用や毎月の維持費を低く抑えることができます。

広告はインターネットに絞り、案内は現地集合にすることなどで、来店の際の応接などの人件費も削減できるので、その分、手数料の割引ができ、着実に利益を上げてきています。こうした営業形態は、来店ありきの従来の不動産業の常識をくつがえす存在です。ITの普及による社会の変容は、不動産業界にも大きな影響をもたらしつつあります。

2014年より、国土交通省がネットでの不動産取引に向けた規制緩和に動き出したことも追い風となり、今後こういったベンチャー企業が優勢になっていくかもしれません。インターネットから多数の情報を得られるようになり、知識をつけた一般消費者は、悪質な不動産業者から不利益を被らないよう自衛できるようになってきています。今後は従来の業界慣行が通用しなくなる場面が増え、業界そのものが変化していくことが予想されます。

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