家売るオンナ 第6話 事故物件は実際にそんなに値引きされるのか?値引き事情の実態

事故物件であることから、たったの1,000万円という価格で売りに出されていた豪華な一戸建てだが、本当にそんなおいしい話はあるのか調査してみた。

更新日:2016年08月31日

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この記事の要点
  • 「心理的瑕疵あり」って具体的にどういうこと?
  • 不動産屋の告知義務とは?
  • 今回の物件、実際に買ったらいくらくらい?
  • 実際の事故物件の値引き率は?

第六話 あらすじ

万智(北川景子)に新宿営業所トップの座を奪われ、人知れず苛立ちを感じていた足立(千葉雄大)だが、思いがけず保険会社からヘッドハンティングを受ける。万智の登場以来の不動産屋としての仕事へのもやもやと、好条件の提案の間でこころが揺れ動く中、かつて家を売った老舗和菓子屋の頭首・宮澤和之(東根作寿英)が再び足立のもとを訪れる。
幸せな一家の主だったはずの宮澤だが、なんと愛人の礼央奈(小野ゆり子)のためのマンションを買いたいと相談をする。それに足立はショックを受ける。

一方の万智は殺人事件のあった事故物件を担当、嫌がる美加(イモトアヤコ)と共に泊りがけで現地販売会をする。事故物件の家なんて欲しい客はいないと言う美加だが、万智には秘策があり、職業上人の死に日常的に接し、死に抵抗のない職場にチラシを配布していたのだ。
今回も万智の策が講じ、その事故物件はたったの2日で売れたのだった。

一方、客の幸せを壊すような家探しに疑問を感じ、ヘッドハンティングに心が傾く足立のもとに宮澤の本妻・昌代(田中美奈子)が押しかけてきて会社は修羅場になる。
さらに「愛人に家を売るな」と言う本妻に万智は「不動産屋の仕事は家を売ることです」と言い切る。

「心理的瑕疵(かし)あり」ってどういうこと??

今回のドラマでは過去に殺人事件のあった事故物件が出てきますが、もちろんチラシには「過去に殺人事件あり」なんて書けません。実際のチラシには「心理的瑕疵あり」と表現されています。
「心理的瑕疵物件」とは、目には見えないけれどその物件に住むことで、心理的に不具合があるであろう物件のことをいいます。

具体的には、

・販売している住宅(建物)で過去に「自殺・殺人」などがあった。
・販売している住宅(建物)で過去に「事件や事故による死亡」などがあった。
・販売している住宅(建物)周辺で過去に「事件・事故・火災」等があった。
・販売している物件の周辺に「嫌悪施設」がある。
・販売している物件の周辺に「指定暴力団等の事務所」がある。

などが該当します。

これらの物件は、「そういう物件はちょっと…」と忌避される事が多く、買い手がなかなか見つからない為に長期間に渡って売れ残ってしまうケースが多く発生します。
このような心理的瑕疵物件が市場に出る方法は、一般的に大きく二つに分けられます。

1.更地にして売却する
これは、自殺や殺人のあった物件を解体し、文字通り更地に戻してしまう事で、事故後の噂やほとぼりが冷めるのを待つ方法です。こうする事で環境が一度リセットされ、悪いイメージが払拭されやすくなります。 更にこの土地を駐車場に変えてしまえば、土地として生かすことも可能です。 しかし、この方法では、建物の価値は0になるどころか、解体の為の費用が発生します。元々古い物件であったならばまだしも、新築や、まだ使用できる状態の物件では大きなマイナス要素になる可能性もあります。

2.価格を安く設定して売却する
解体にかかる費用が大きく、新築等でまだ建物自体に価値があるような場合、更地にして売却するよりも、物件の価格を安く設定して売却した方がメリットの大きい場合があります。 近隣の価格よりも2~3割、事故や環境の状況によっては半額程度の安い価格に設定することで、何よりも安さを優先する買い手を捕まえることができます。 ただし、事故の内容によっては内装のリフォームが必要となることや、そのまま建物として残る事で噂や好奇の目から逃れにくくなるというデメリットがあります

知らずに買ってしまった!?不動産屋の告知義務とは??

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ドラマ内で万智が「不動産屋には聞かれたら応える義務があります」「お客様がご希望なら不動産屋は事件の説明をする義務があります」と言っていますが、実際に不動産会社の告知義務というのはどうなっているのでしょうか。

宅建業法47条1号において、「宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次の各号に掲げる行為をしてはならない。」と規定し、その1号で「重要な事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為」を掲げています。よって、心理的瑕疵物件であることを知りながら通達しなかった場合は、宅建業法違反となり、免許の取り上げの可能性もあります。

しかし昔は、事件当時の所有者から次の所有者に移れば、その次の買い手には告知しなくても良いという慣習や判例が実際にあり、これを悪用して、事故物件が出たら取りあえず自社の社員などに名義変更して(実際には住まず)、その次には告知せずに転売するという手口が横行し、その多くが裁判沙汰になりました。

今ではその手口は通用せず、知っておきながら告知しなかった場合は違反ということになっています。

しかし、この告知義務については曖昧な点も多く残っているのも事実です。
例えば、告知義務はいつまであるのかについても、法律の条文などで〇人の所有者が入れ替わったら、あるいは事故から〇年経てばというような明確な定めはありません。
また、事故物件の定義も、自殺や殺人があった場合は明確ですが、老衰などで自然死をした場合などは、売り主や仲介会社によって重要度の判断も異なってきます。

今回の物件は通常だといくらくらい?

今回のドラマでは、都内の庭付き戸建てが1,000万円という破格の価格で売り出しにだされています。
ドラマ内で配布されていたチラシをもとにこの家のスペックを考えてみると、

・東京都杉並区萩沼1丁目(架空の地名なので杉並区内とする)
・駅徒歩12分・一戸建て
・敷地面積120坪の大型3SLDK(倉庫付き)
・築10年

となっています。
実際に類似の物件の価格を調査してみると、阿佐ヶ谷の100坪の戸建てで1億7500万円となっています。

家売るオンナ 第6話 事故物件は実際にそんなに値引きされるのか?値引き事情の実態の画像

※SUUMOより引用

家売るオンナ 第6話 事故物件は実際にそんなに値引きされるのか?値引き事情の実態の画像

※SUUMOより引用

永福町の30坪の戸建てでは5600万円前後で取引されているようですね。

これらの情報から考えると、120坪の敷地面積で1,000万円という価格は相場よりも9割以上も値引きされていることになります。

実際の事故物件の割引率はどれくらい?

実際の事故物件の割引率は事故物件の相場は、自然死の場合は約10%引き、自殺の場合は約20~30%引き、他殺の場合は30~50%引きと、事故の内容で変わるようです。
競売の本などでも、減価率は25%~30%と記載されているものもあることから、最大でも5割程度、一般的には三割程度の値引きが多いようです。
しかし、近所の人がよく覚えている地方に比べ、人の入れ替わりが多い都内では割引率はあまり多くなく、1割程度で取引をされり事例も多いのだとか。

こうして検証をしてみると、今回の設定価格はあまりに実態と乖離があると言えそうです。ドラマを見て、都心のこんな豪華な庭付き一戸建てが1,000万円で買えるのなら事故物件でもいい!事故物件でさがしてみよう!と思った方もいらっしゃると思いますが、いくら殺人事件の起こった事故物件でもこんなに条件のいい物件はないでしょう。

結論:事故物件の値引率はだいたい3割前後。ドラマのような条件の物件はありません。

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