【解説】どこでも自分でできる。わかりやすい不動産登記簿謄本等の見方の流れ・見本

入手した不動産登記簿謄本等の見方、自分で読み解いていくコツについて解説します。

更新日:2018年04月23日

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不動産登記簿謄本等の見方を理解して、自分で読み解けるようになろう。

前回では、不動産登記簿の取得方法について確認してきました。

入手した不動産登記簿謄本等の見方、自分で読み解いていくコツについて解説していきましょう。まず、登記事項証明書(登記簿)について見ていきます。

登記事項証明書(登記簿)とは?

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「コンピュータ庁で使用されている登記事項証明書」をサンプルとして挙げて見てみましょう。

不動産登記においては、土地と建物は別のものとして登記が記録されています。この記録の内容を確認するために登記事項証明書を手に入れる訳です。この「登記事項証明書」は、大きく3つの内容で構成されています。

それが「表題部」「権利部甲区」「権利部乙区」です。簡単にいうと「表題部」が対象の不動産の表示について、「権利部」は対象の不動産の権利関係について記載がされています。

「表題部」について

不動産登記における「表題部」には、対象となる不動産(土地か建物)の所在地や地積といった内容が確認できます。つまり、何処にある、どんな不動産なのか。土地ならその面積。建物なら構造等について表記されているものなのです。

ですので、表題部を読めば、だいたいその土地や建物がどんなものか把握することができるでしょう。

続いて、更に詳しく表題部について、土地と建物を別々に詳しく確認します。

「土地」の表題部について

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土地の登記簿の場合、その表題部には、「不動産番号」「所在」「地番」「地目」「地積」といった情報が記載されます。

所在

読んで字のごとく土地がどこで存在しているのかを明らかにする部分です。「東京都港区西麻布◯丁目」という形で、まさに住所といえるでしょう。

地番

土地に一筆ごとに割り振られている番号を意味します。これは普段使われている住所の表記とは異なるものとなります。

地目

対象となる土地の用途が何なのかを示す部分となります。例えば、「山林」「宅地」「田」「畑」といった記載となります。

地積

普段あまり使わない用語ですが、要するに土地の面積のことを意味します。

「建物」の表題部について

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次に、建物の表題部について見ていきましょう。この場合の表題部は、土地の場合と共通の内容を含みます。

例えば、「所在」「地番」が挙げられます。他には、「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」「付属建物の表示」などが表記されています。これも順番に見ていきましょう。

家屋番号

対象となる建物を特定するための番号となります。土地でいうところの「地番」に相当します。同じ建物の上に複数の建物が建っているケースも多いですが、その場合は「◯◯番の1」といった形でナンバーが付与されています。

種類

対象となる建物が何に使われているかを示しています。例えば、「居宅」「共同住宅」「店舗」「事務所」「工場」「倉庫」といったものが挙げられます。

構造

対象となる建物が如何なる構造材料でできているかが示されています。この項目を確認すると、「木造」「鉄筋コンクリート造」など材料や、建物の階数や屋根の種類などが明らかになります。

床面積

読んで字のごとく各階における床の面積が表示されています。

付属建物の表示

主となる建物に付属する建物がある場合に記載されます。例えば、住居に付属する車庫や事務所に付属する倉庫などが該当します。

複雑で自分では読みにくいマンションの表題部

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ここまで土地と建物の表題部について、自分で読み解いていく方法を確認してきました。

少し注意が必要なのが、「マンションの表題部」の見方についてです。実は、土地や戸建ての表題部と比較して、表記方法が大きく異なってくるのです。慣れないと複雑で読みにくく、自分で読む際に注意が必要なマンションの表題部について、詳しく解説していきます。

よく聞く「区分所有建物」の意味とは?

まず、マンションの登記簿の見方を解説する前に、マンションとは一体どんな権利関係で構成されているのかを理解しておく必要があります。

マンションは、いわゆる「区分所有建物」「区分建物」といった呼ばれ方がされており、実際に聞いたことがある人も多いと思います。要するに、複数の人が共同して居住している建物という意味ですね。そして、その「区分建物」は2種類のエリアに分類することができます。一つ目が「共用部分」です。これは、エレベーターや階段や廊下といった「みんなが使う部分」を意味します。一方で、「専有部分」と呼ばれるのが、他人が使えない個人の居住スペースとなります。

マンションを購入して所有権を得るということは、その建物の「専有部分」の権利と土地の権利をお金で買うということを意味するのです。そして、ここからが特徴的なのですが、マンションの権利は、「建物(専有部分)」と「土地(建物の建ってる敷地)」を一体化処分しなければいけない定めとなっています。

前回、一戸建ての場合などは、土地と建物は別々のものとして登記や売買ができると解説しました。

それぞれの権利の変動に従って、登記もそれぞれなされる形です。しかしながら、マンションにおいては、その様な別々の処分は禁じられており、土地と建物は必ず一緒に処分しなければならないのです。ただその代わりに、マンションの登記については、土地の登記は行わずに、建物の登記記録に「敷地権」として、土地に関する権利変動を一緒に記録することができます。

要するに、土地と建物が一緒に処分することが定められている以上、土地と建物を別々に登記記録するのは手間なので、建物の登記記録に一本化してしまって良いということですね。具体的には、建物登記簿の方に「敷地権の目的たる表示」という形で表示されます。この点が一戸建ての登記簿との違いですので、覚えておきましょう。

マンション(区分所有建物)の表題部について

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さて、ここまでマンションの表題部の特異性についての解説でした。続いて、マンションの表題部を具体的に確認していきます。

まず、マンションの表題部は2段階の構成にて書かれていることを理解しましょう。まず、一つ目が「マンション全体」の表題部が記されていること。続いて、個別の部屋「専有部分」の表題部が記されています。それでは、順番に見ていきましょう。

マンション全体の表題部

ここには、「専有部分の家屋番号」「所在」「構造」「床面積」「敷地権の目的たる土地の表示」といった内容が記されています。

「専有部分の家屋番号」とは、マンションの各部屋ごとに割り振られた家屋番号の意味です。本来、家屋番号は、建物を特定するためのものですが、集合住宅の場合は、それだけでは個別の特定できないので、「○○○-1~○○○-30」といった形でそれぞれを特定できるようにしてあるのです。

「所在」「構造」「床面積」については、一戸建ての登記と同じ意味となります。「所在」はマンションがどこで存在しているのか、構造はマンションに使われている構造材料などの記録となります。「床面積」は、マンション各階の床面積を、平方メートル単位で表示しています。

「敷地権の目的たる土地の表示」については、マンション特有の表記となると先ほど解説したとおりです。本来的には、土地と建物は別々に登記されるものですが、マンションの場合、この「敷地権の目的たる土地の表示」に一緒に記録する形となります。マンションの場合、土地と建物が必ず一緒に処分しなければならないからこそできる記録方法なのです。ですので、ここの項目に土地の登記同様の敷地の所在や地番、地積などが記録される形となります。

マンションの専有部分の表題部

ここまで「マンション全体」の表題部について確認してきました。

次に、個別の部屋「専有部分」の表題部について見ていきましょう。ここは、先ほどの「マンション全体」とは逆に、個々人の専有する部分についての内容となります。具体的には、「家屋番号」、「種類」、「構造」、「床面積」、「敷地権の表示」などが記録されています。

「家屋番号」については、マンションにおける各専有部分を特定するために割り振られている番号となります。「○○○番の30」といった表示となります。

「種類」、「構造」、「床面積」については、前述の内容と同じで、各部屋の床面積などを表すものとなります。

「敷地権の表示」については、居住している各自が持っているマンションが建ってる土地に関する権利内容が記録されています。具体的には、「土地の符号」「敷地権の種類」「敷地権の割合」といった項目が記されています。マンションを購入するということは、専有部分における「建物の権利」と敷地権たる「土地の権利」の所有権を取得すること意味します。ただし、マンションは一つの土地に複数の人が居住するものとなりますので、土地については所有ではなく共有となるのです。ですので、「敷地権の種類」は、所有権と記載され、「敷地権の割合」は、マンション所有者の数を分母とした持ち分、例えば「100分の1」といった形で、それぞれの所有権の持ち分が示されることになります。

以上で、表題部について解説は完了となります。続いて、権利部甲区・権利部乙区の箇所について見ていきましょう。

権利部甲区、乙区について

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おさらいすると、登記簿は、「表題部」、「権利部甲区」、「権利部乙区」の主な3つに分かれているというお話を冒頭でしましたね。表題部は、対象となる不動産の表示についての記載。権利部は、対象となる不動産の権利についての記載となります。

そしてまずは、権利部甲区について見ていきます。

「甲区」には、所有権に関する権利が記載されている

登記事項証明書の中で「甲区」が最も重要な部分であるといっても過言ではありません。

何故なら、この部分に対象となる不動産の「所有権」に関する部分が記載されるからです。不動産が「誰のものなのか」というのは、登記制度の根幹をなす要素といえるでしょう。不動産売買や相続などで、所有権が変動するときに、登記事項証明書中の「甲区」の部分に、所有者の変更が記録されることになるのです。

甲区に記載されている内容

登記事項証明書(登記簿)の甲区に記されているのは、「順位番号」「登記の目的」「受付年月日・受付番号」「原因」「権利者その他の事項」となります。

順位番号

登記がされた順番を意味します。この「順位番号」の先後によって、権利の優劣も決まってきますので、非常に重要な意味をもちます。なお、後述の乙区を自分で読み解く際にも、この順位番号が重要となってきます。

登記の目的

どういう目的で登記がなされたかを示す部分となります。例えば、建物を新築する場合の「所有権保存」、不動産売買の契約や相続による所有権の変動を意味する「所有権移転」など、いかなる目的でそれぞれ記録がされているのか表すものとなります。

受付年月日・受付番号

登記の受付の日付となります。そして、受付番号は、登記を受け付けた際に付与される番号のことです。これらいずれの日付・番号は、登記の優劣をジャッジする際に参照されますので、重要な意味を持つものなのです。

原因

記載の所有権の変動が、いかなる理由によって生じたかの原因を示すものとなります。例を挙げると、「売買」「相続」「贈与」といったものになります。

権利者その他の事項

対象となる不動産(土地もしくは建物)を所有しているのが誰なのかを明らかにしている箇所となります。所有者の氏名と住所が記載されています。所有者が変化し、その旨の登記申請がなされると、新たな所有者の名前と住所が記載されることとなります。ちなみに、共有の場合は、共有者それぞれの持ち分といった情報も記載されます。

以上の通り、甲区を自分で読み解ければ、所有権が誰のもとにあるのかが明らかになります。そして、所有権という権利は、一つの不動産につき一つしか成立しない非常に重要な権利です。不動産登記簿を確認する際は、真っ先に見るべきポイントの一つといえるでしょう。

権利部乙区には、所有権以外についての権利が記載されている

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前述のとおり、登記簿は、「表題部」、「権利部甲区」、「権利部乙区」という3つの主な構成でできています。「表題部」と「権利部甲区」については、解説が完了しています。それでは、最後に「権利部乙区」についての見ていきましょう。

ひとつ前の項目で「権利部甲区」には、所有権についての事項が記載されていると解説しました。それに対して、「権利部乙区」には、「所有権以外の権利」についての事項が記載されています。

「所有権以外の権利」についての事項というのは、抵当権や根抵当権、質権などの「担保権」や地上権や賃借権などの「用益権」といった不動産に関する権利が挙げられます。例えば、「担保権」というのは、住宅ローンなどの債務の返済ができない時に、返済の代わりに不動産を売却するできる権利です。又、用益権とは、他人が対象となる不動産を使用収益できる権利を意味します。

甲区に記載されている「所有権」については、一つの不動産に一つしか成立しないところ、担保権や用益権は、一つの不動産に対して複数成立させることができます。そして、その際の優先順位は、登記に記載されている順位に従うことになります。

乙区に記載されている内容

不動産登記簿の乙区に記載されている事項は、「順位番号」「登記の目的」「受付年月日・受付番号」「原因」「権利者その他の事項」となります。

順位番号

登記がなされた順番を意味し、その権利関係の優劣を決するものとなります。複数の当事者が同種の権利を成立させる乙区においては、この順位は大きな意味を持ちます。

例を挙げるなら、A不動産の所有者タロウさんに、グリーン銀行とブルー銀行がお金を貸しているとしましょう。グリーン銀行は自行を抵当権者として、A不動産に1番抵当権を設定しました。そして、ブルー銀行が2番抵当権を設定しました。そして、この状況下で、タロウさんがお金を返せなくなり、抵当権が実行されA不動産が競売にかけられたらどうなるでしょうか。

このケースだと、順位番号1番にて、抵当権を持っているグリーン銀行は、順位番号2番のブルー銀行より優先して債務の弁済を受けられることになります。つまり、2番抵当権者のブルー銀行は、「A不動産の売却金額からグリーン銀行が貸しつけたお金の回収額を引いて、残った金額しかお金を回収できないこととなります。ご覧のとおり、順位番号に従って回収の順番も決まってくるので、当事者にとって順位は非常に大きな意味を持ちます。又、この順位番号は、順位変更や譲渡が起きないかぎり、基本的に表記の順位のまま権利の優劣が決せられることとなります。

登記の目的

「抵当権設定」といった所有権以外の権利について、それが如何なる目的によって設定されたのかを示すものとなります。

受付年月日・受付番号

登記の受付がなされた日付の記載となります。そして、受付番号は、受け付けられた登記順に付与される順番となります。

原因

記載の権利がどうやって発生したのかの原因を示すものとなります。例えば、抵当権のケースなら、借金をする契約がなされたことが原因となります。実際の記載としては「平成○年○月○日 金銭消費貸借平成○年○月○日設定」といった形となります。

権利者その他の事項

ここに対象となる権利の内容についての記載がなされる項目となります。例を挙げるなら、抵当権の場合、、「債権額」「利息」「損害金」「債務者」「抵当権者」などが記載されることとなります。ですので、ここの項目を確認すれば、対象の不動産にどんな権利が付いてきているのかが確認できるのです。権利の種類は色々とあるので、見慣れない権利が記載されていた場合は逐次調べておきましょう。中古マンションの売買時などに、自分自身の力で不動産登記が読み解けることは非常に重要となってきます。


まとめ

登記簿は、「表題部」、「権利部甲区」、「権利部乙区」の主な3ブロックで構成されており、それを今回は確認してきました。それぞれの要素の役割と意味を理解しておけば、やみくもに登記簿を読む必要はなくなるといえるでしょう。

あとは、実際に不動産登記簿謄本等を取り寄せて、この記事で解説した見方に基いて、自分で読み込んでみることを何度か繰り返してみてください。そうすれば、登記を読み解くことに対する苦手意識は自然と解消できるはずです。


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