マイナス金利後の住宅ローン借り換えのメリットを検証する

日銀のマイナス金利導入以降、住宅ローンの借り換えに関心が高まる中で、借り換えのメリットや注意点を解説します。

更新日:2016年04月18日

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イエシルコラム編集部

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この記事の要点
  • マイナス金利で住宅ローン金利は下がる?
  • 借り換えでいくら毎月返済額が変わるのかー2つの借り換えシミュレーションから検証
  • 借り換えで得する目安はどこにあるか?
  • 借り換えの2つの注意点

マイナス金利で住宅ローン金利は下がる?

日銀のマイナス金利導入以降、住宅ローンへの関心が高まっています。ローンの借り換えを検討する人も急増中ですが、実際にメリットがあるかどうかは個々の住宅ローン内容によります。今回は、住宅ローンの借り換えについて検証してみました。

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マイナス金利だと住宅ローン金利が下がる、と言われています。その理由を知るためにも、「マイナス金利とは何か?」というところから考えていきましょう。

1. マイナス金利の概要と効果

マイナス金利は、一般預金者に対して行われるものではありません。私たちの普通預金や定期預金がマイナスになるのではなく、銀行と日銀との関係において導入されます。

日銀(日本銀行)は、物価を安定させる(場合に応じて上昇、下落させる)ことを目的の1つに掲げています。その目的を達成するために、今回のような政策を導入したり、紙幣の発行を行ったりします。そのほか「一般銀行の銀行」としての役割も果たしますが、詳しく説明すると長くなるので、ここではざっくりと、「日銀は銀行の親玉」だと考えてください。

さて、日銀は銀行の親玉ですので、銀行が余ったお金を日銀に預けたりします。本来、一般の銀行が日銀にお金を預けると、金利分の利息を受け取れるのですが、この金利がマイナスとなるのが、今回の「マイナス金利」です。

こうなると、一般の銀行は日銀にお金を預けなくなります。そのぶん余ったお金を誰かが借りてほしい。そして銀行は「低い金利にしますから、借りてください」という方針を取ることとなります。こうした経緯で、住宅ローン金利は下がるとされているのです。

2. マイナス金利のデメリット

貸出し金利が下がると、銀行の利益は少なくなります。そうすると当然、切り詰めねばならない箇所も出てきます。そこで一般預金者の預金金利を引き下げるのです。マイナス金利の発表後、大手銀行は預金金利を0.02%から0.001%への引き下げを行いました。

今後は、引き落とし手数料の値上げや口座管理料(口座を持っていると掛かるお金)導入の可能性もあります。金利やサービスで銀行を慎重に選ぶ時代が来るかもしれません。

借り換えでいくら毎月返済額が変わる?

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住宅ローン金利が下がったことによる借り換えで、返済額はどの程度軽減するのでしょうか? 
これを2パターンでシミュレーションしてみます。ともに当初借入額は3,000万円、借入期間35年とし、借入れ時期や金利を異なる条件で比較してみます。

※いずれもシミュレーションは目安となります。また元利均等返済・ボーナス払いなしとします。

1. 5年前に全期間固定型住宅ローンで借り入れ

5年前、金利が上がらないという安心感を重視して全期間固定金利で借り入れを行いましたが、金利が1%以上下がったのを機に、借り換えを行うというパターンです。

【当初借入の住宅ローン】
・2011年に全期間固定金利を3.0%で借り入れ
・借り換えを行わない場合の総返済額は50,727,068円

5年後のローン残高は27,384,684円 です。ここで仮に2,700万円を金利1.3%の全期間固定金利に乗り換えた場合、返済額はどの程度変わるのでしょうか。

【借り換え条件】
・住宅ローンの返済期間30年、金利1.3%で借り換え
・借入額は2,700万円とする

この場合、当初の返済額も含んだ総返済額と比較すると、1,100万円以上の返済を軽減することが可能です。毎月返済額で見てみると、借り換え前の毎月返済額は11万5,455円、借り換え後は9万613円となり、約25,000円の軽減効果が得られます。

2. 10年前に10年固定金利で借り入れ

続いて、段階金利型のため、固定金利期間が終了すると金利が上昇します。固定金利が終了するタイミングで借り換えを行うというケースです。

【当初借入の住宅ローン】
・2006年に10年固定、金利3.7%で借り入れ
・10年経過後は金利が4.2%に上昇
・借り換えを行わず返済を続けた場合の総返済額は55,603,772円
10年後の住宅ローン残高は24,928,625万円です。2,500万円を1.5%の全期間固定金利に借り換えると、返済額はどう変化するのでしょうか。

【借り換え条件】
・住宅ローンの返済期間25年、金利1.5%で借り換え
・借入額は2,500万円とする
この場合、残り25年間の返済総額は約3,120万円となります。35年間の支払い総額は46,507,809円となり、借り換えによる返済軽減額は900万円近い額に上ります。毎月返済額は、当初の借入れの場合、10年経過後は毎月13万4,350円なのに対して、借り換えを行った場合は9万9,984円に軽減します。

10年経過していると軽減効果は薄いような気もしますが、10年前と現在の金利に差があることから、十分経験効果は得られます。

いずれの場合も、借り換えによって大きな効果が得られることが分かりました。総返済額で1,100万円、900万円といってもピンと来ない場合は、毎月返済額で考えると、実感が湧くのではないでしょうか。ただし、いくら借り換えして毎月返済額が抑えられたとしても、その分を浪費しては家計の改善効果は薄れてしまいます。借り換えによって返済が減った分は、「子どもの教育資金に積み立てる」「老後資金のために個人年期に加入する」などど、有効に支出することをおすすめします。

借り換えで得する目安は?

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借り換えによって、毎月返済額および総返済額が大きく軽減する可能性がありますが、「自分のローンの場合はどうなのか?」と疑問に思う人は多いでしょう。

一般的に、借り換えによって得をする条件は以下の3点といわれています。
1. ローン残高が1,000万円以上
2. 残りの返済期間が10年以上
3. 金利が1%以上下がる


ローン残高や残りの返済期間が少ない場合や、金利の引き下げ幅が小さい場合は、借り換えによって得られる効果よりも諸経費のほうが掛かってしまうこともあるので、注意が必要です。

借り換えの諸経費には、保証料、事務手数料、印紙代、登記費用などがあります。最近は保証料無料の金融機関も多いですが、金利に上乗せ、とするローンもありますので、最終的な金利がいくらになるかを最初に確認しましょう。

借入額や金融機関によって諸費用は異なり、10万円程度で済む場合から100万円近く掛かるケースまで様々ですのでじっくり選びたいものです。

借り換えの注意点

借り換えは、金融機関にとっては「新たな貸出し」となるため、当初借入時と同様に審査が必要です。また審査の結果、借り換えができないケースも出てきます。それは一体どんな場合なのでしょうか?

1. ライフプランの変化

「転職により、勤続年数条件を満たさなくなってしまった」「退職により、年収要件を満たさなくなってしまった」「独立したため、審査要件が厳しくなった」……などの声はよく聞かれます。

転職や独立は自分で選ぶことですので、借り換えを検討している場合は、先に借り換えを済ませるといいかもしれませんね。ただし、会社の業績悪化による収入低下や倒産による失業などは、不可抗力のため対策は取りにくくなります。

また、就業状況だけでなく、家計状況にも注意が必要です。子どもの教育費がかさむ時期は家計が圧迫されるため、収入が変わっていなくとも、返済が厳しいと判断され借入れを受けられない恐れがあります。

2. 時間の経過による変化

「当初借入後に健康状態が悪化してしまい、借り換えができない」という例はよく聞きます。一般的な住宅ローンでは、団体信用生命保険(以下:団信)の加入が義務付けられているからです。団信とはローンの払い込み者に万が一のことがあった場合にローンの残高がゼロになるという保険ですが、原則として、健康でないと加入できません。

ただ最近では、「引受条件緩和型」という持病があっても加入できる団信も登場しています。その分、金利は0.2~0.3%程度高くなることが多いですので、それを考慮した上でも効果があるのか見極めて利用しましょう。

たとえ健康状態に問題がなくても、年齢が上がると、それだけで審査は厳しくなります。返済が長期間となる住宅ローンでは高齢になるほど返済のリスクが高まると判断されてしまうのです。借り換えの時は、家計に余裕があるならば返済額は据え置き、その分返済期間を短縮させるのも1つの手ですね。

また、借入れは住宅を担保に入れて行われるため「貸出しは物件価格(担保価格)を上限とする」とした金融機関も多く、時間の経過によって住宅の価値が下がり借入額が制限されることがあります。特に、新規借入時に中古住宅を購入したという場合には注意が必要です。

3. 信用状況の悪化による変化

借り換えの際は、今までの支払い実績が重要視されます。今まで住宅ローンを支払ってきた人ならば、今後も返済してくれるだろうと信用してもらえます。住宅ローンの返済はもちろん、クレジットカードやマイカーローンなど各種支払いの信用を積み上げて借り換えを行うようにしましょう。

結局、借り換えとは、それまで支払ってきた実績を土台として、新たな借入を行うものなのです。

マイナス金利で、住宅ローンの借り換えを検討している人は非常に多いです。金利が下がることで毎月の返済は楽になると予測されますが、諸経費の検討や、借り換えには審査があることを忘れないようにしてください。

執筆者 横山晴美 (ライフプラン応援事務所代表 AFP FP2級技能士 住宅ローンアドバイザー)

2013年にFPとして独立。企業に所属せず、中立・公平の立場で活動する。新規購入・リフォーム・二世帯住宅を問わず、家に関することなら購入額から返済計画まで幅広く対応。また、住宅購入は家計・教育費・老後資金・相続など多くの視点が必要なため、ライフプランを見据えた相談を行う。

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