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耐震の基準はどうなっている?!中古マンションの建築性能をチェックする ~建築基準の変遷と情報入手の仕方を解説~

人生でも最も大きな買い物とも称されることもある不動産の購入。そんな大きな決断となる不動産の購入・売却において「自分たちの知識は十分なのであろうか…」。そんな不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。 そこでIESHILコラムでは、国内で唯一ともいわれている不動産学部がある明海大学の不動産学部学部長である中城教授にご協力いただき、「生活者として知っておいて欲しい不動産学」をシリーズにしてお届けしていきます。

更新日:2018年09月28日

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イエシルコラム編集部

IESHIL編集部

はじめに

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一般的に、既存建物の性能は時間の経過とともに劣化します。台所や風呂など専有部分に含まれるものは改修によって新築時の性能よりも高い性能を持つものに置き換えることも可能です。一方、事後的に改修が困難な構造躯体などの共用部分についてはどのような性能を持っているのか、事前に十分吟味することが大切です。建物が建築された後の法律改正によって既存不適格建築物になっている場合は購入後の利用や将来の売却に制約を受ける可能性もあります。

中古マンションを購入する場合に知っておきたい建物性能の基準とその改正を概観します。併せて、建物性能を判断するために必要な図面等の情報の入手について紹介します。

§1 建築基準法は「最低の基準」

建築基準法は法律の目的と定める建築基準について、「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする」(建築基準法1条)と規定しています。建築基準法は建物を建てる際に守らなければならない法律であることはもちろんです。


一方で、「最低の基準」を定めた建築基準法を守っていればそれで十分とは言い切れない側面があります。


実際、建築基準法が定める性能より高い性能を持つ建物を建てて差別化しようとする動きや制度があります。既存建物の性能を調べる際は、建築基準法のみならず、高い性能を持つことを示す制度を利用した建物かどうかも併せて調べることをおすすめします。

§2 耐震基準

建物の安全性にかかわる重要な基準は、建築基準法の耐震基準です。耐震基準は震災により発生する大規模な建物被害で明らかになる不十分な点を逐次見直してきた経緯があります。現在の耐震基準は1981(昭和56)年6月1日以降に建築確認を受けた建物に適用されています。現行の基準を一般に新耐震基準といい、それ以前のものを旧耐震基準といいます。


木造住宅については2000(平成12)年の改正によって一部見直しが行われましたが、鉄筋コンクリート造の分譲マンションには直接的な関係はありません。


旧耐震基準は中規模の地震を想定したうえで、震度5強程度でも倒壊せず、破損しても補修して継続使用できる性能を求めていました。新耐震基準は、大規模の地震を想定したうえで、震度 5 強程度に対してはほとんど損傷せず、極めて稀にしか発生しない震度 6 から震度 7 程度の地震に対しても人命に危害を及ぼすような被害を生じない性能を求めています。

「震度5強程度の地震は基本的に問題ない」が新耐震基準の大まかなイメージです。

1981(昭和56)年5月31日以前に建築確認を受けた建物は、既存不適格建築物(建築当時は適法であった建築物が法律改正により改正後の法律に合致しなくなった状態)となっている可能性があります。

ここで二つの点に留意します。まず、新耐震基準が適用されるのは1981(昭和56)年6月1日以降に建築確認を受けた建物です。それ以前に確認を受けていていた建物については着工や竣工がこの時点よりあとになっても旧耐震基準が適用になります。着工や竣工ではなく、建築確認の年月日で判断します。

次に、旧耐震基準の建物=新耐震基準に不適合ということではありません。壁式構造の鉄筋コンクリート造は耐震性能に優れる特徴があり、旧耐震基準で建てられた建物であっても新耐震基準に適合することがあります。ラーメン構造であっても同様です。
旧耐震基準で建てられた建物については、耐震診断をしているか、している場合はその結果を調べます。これらについては宅地建物取引業法の重要事項説明事項ですので、宅地建物取引業者に確認します。

§3 建築基準法の基準を上回る性能を持つ住宅

建築基準法が定める「最低の基準」を上回る性能をもつ住宅を建てようとする制度に、1)住宅性能表示制度と、2)長期優良住宅認定制度があります。


§3-1住宅性能表示制度とは

住宅性能表示制度は住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)にもとづき、2000(平成12)年4月から導入された制度です。


表示する性能は、①構造の安定②火災時の安全③劣化の軽減④維持管理・更新への配慮⑤温熱環境・エネルギー消費量⑥空気環境⑦光・視環境⑧音環境⑨高齢者等への配慮⑩防犯で、一般には見えにくい事項について建物の性能が表示されます。


住宅の性能を確保するためには設計と建設(工事)の両面がしっかりしている必要があることより、住宅性能表示は設計段階で性能が確保されていることを示す設計性能評価と建設(工事)段階で性能が確保されていることを示す建設性能評価があります。両方の性能評価を得ることが望ましいことはいうまでもありません。


住宅性能表示制度を利用している住宅は、高い性能を持つ住宅であることを自ら宣言して丁寧に設計し工事した住宅といえます。住宅性能評価を受けた住宅の場合、住宅性能評価書を買主に引き継ぐかどうかは重要事項の説明事項となります。


耐震性能については、耐震等級1から耐震等級3までに区分し、耐震等級3は建築基準法の1.5倍の耐震性を持つ建物であることを示します。


§3-2長期優良住宅認定制度とは

長期優良住宅認定制度とは、長期優良住宅の普及の促進に関する法律(長期優良住宅普及促進法)にもとづいて認定するもので、2009(平成21)年6月に導入された制度です。認定の基準は、①劣化対策②耐震性③維持管理・更新の容易性④可変性⑤バリアフリー性⑥省エネルギー性⑦居住環境⑧住戸面積⑨維持保全計画です。痛みにくく、耐震性能や省エネ性能などに優れた住宅を建てて長期に利用しようとする制度です。日本の住宅の寿命が短いことを改善するねらいがあります。


長期優良住宅の認定を受けた住宅は、建物の性能が高く、その分工事費が高く、売買価格も相応に高いと考えればよいでしょう。新築の場合の耐震性能については耐震等級2(建築基準法の新耐震基準の1.25倍)などが規定されています。また、地震保険の保険料が安くなるなどのメリットがあります。

§4 建物の情報の入手

図面等を入手できれば専門家に相談に乗ってもらうなどの方法で建物の性能を判断することができますが、購入前の既存建物の図面等を入手することは容易ではありません。

所有者による日常管理や修繕工事、さらには売買時の建物診断等を適切に行うためには設計図等をしっかりと保管していることが大切であり、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法 2001(平成13)年8月施行)はマンションの分譲業者がマンションの管理組合に対して、①付近見取り図②配置図③仕様書(仕上げ表)④各階平面図⑤立面図⑥断面図・矩形図⑦基礎伏図⑧各階床伏図⑨小屋伏図⑩構造詳細図⑪構造計算書を交付することを義務付けました。

あわせて、設計に係る書類、特定行政庁からの通知書類、消防からの通知書類、機械設備の書類、売買契約に係る書類なども交付します。この法律施行後に分譲されたマンションは管理組合がこれらの図面を受け取り保管しています。購入希望者は媒介を依頼した宅地建物取引業者を通じてこれらの図面等をマンションの管理組合から入手や閲覧をします。


また、この法律施行前に分譲されたマンションでも管理組合が書類を保管している場合も少なくありませんので、確認してみるのも一つの手です。


図面からは地盤の状況、地下水位の高さ、杭の長さ、太さ、本数を知ることができます。また、地盤の液状化対策をしている場合はその内容も知れることが通常です。

マンションの情報を管理組合が自ら開示する試みも行われています。マンション未来ネットは、「個々のマンション管理組合の運営状況等(建物等の概要、管理組合の活動状況、過去の修繕履歴、図書の保管状況など)を公益財団法人マンション管理センターのコンピュータに登録し、登録情報はインターネットを通じて随時閲覧できる(※引用: http://www.mankan.or.jp/mirai-net/02_outline/outline.html)」ようにしています。

この考えに賛同してマンションみらいネットに登録しているマンションの情報を得ることができます。



2018(平成30)年4月1日に施行された宅地建物取引業法の改正で、重要事項説明項目に、「設計図書、点検記録等の保存」が追加されました。中古住宅を安心して取引するためには、新築時の設計図書やその後の点検やリフォームの状況などの実績を示す資料があることも重要です。

改正法では売主がこれらの資料を保存しているか確認し、保存している場合はそれを引き継ぐことが基本となります。改正法ではインスペクションも規定されました。インスペクションの報告書には調査で確認のために使った資料名が示されますので、どのような図面等が存在するか知ることができます。

§5 まとめ

中古マンションの購入に際しては、建物がいつ、どのような制度や基準の下で造られたかものか把握することが大切となります。法律や制度の拡充により新築時の図面等の保管状態の把握や引継ぎについても格段に改善されました。

一方で、古い建物や特別の制度を利用していない建物にあっては、図面等で確認することが困難な場合もあります。そのような場合は、建築士を代理人に任じる、インスペクションを依頼するなどの方法により、買主の責任において状況の確認や情報の発掘に努めることも考えられます。


【引用資料】
1.    マンションみらいネット
  http://www.mankan.or.jp/mirai-net/02_outline/outline.html
2.    IESHIL COLUM 2018.09.14 不動産の基礎知識「マンションを購入時の契約の知識は大丈夫?覚えておきたい契約・重要事項説明のこと」
  https://www.ieshil.com/columns/207/

【参考文献】

1.    中城康彦 「住まいを建てる~安心・安全な住宅や土地とは?」 『生活者のための不動産学への招待』 放送大学教育振興会2018年3月
2.    国土交通省 新築住宅の住宅性能表示制度ガイド [平成29年1月発行]
  https://www.hyoukakyoukai.or.jp/download/pdf/guide_seinou_2016_shinchiku.pdf
3.    国土交通省 長期優良住宅認定制度の概要について[新築版][平成29年4月]
  https://www.hyoukakyoukai.or.jp/download/pdf/chouki_sin_2017.pdf

この記事の執筆者

耐震の基準はどうなっている?!中古マンションの建築性能をチェックする ~建築基準の変遷と情報入手の仕方を解説~の画像

明海大学 不動産学部 教授 
学部長 中城 康彦氏

【専攻分野】
不動産企画経営管理、不動産鑑定評価、建築設計、不動産流通

【経歴】
1979年 福手健夫建築都市計画事務所
1983年 財団法人 日本不動産研究所
1988年 VARNZ AMERICA, Inc.
1992年 株式会社 スペースフロンティア 代表取締役
1996年   明海大学 不動産学部 専任講師
2003年 明海大学 不動産学部 教授
2004年   ケンブリッジ大学土地経済学部客員研究員(2005年3月まで)
2012年4月 明海大学 不動産学部長 不動産学研究科長

【主な受賞歴】
2015年 都市住宅学会論文賞
2015年 資産評価政策学会論説賞
2016年・2014年・2013年 日本不動産学会論説賞

この記事の問い合わせ: nakajo@meikai.ac.jp

明海大学HP: http://www.meikai.ac.jp/

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