購入しようとする住戸とその売買条件がおおよそ決定した後の手続きは、①重要事項説明を受ける、②契約する、③37条書面の交付を受ける、の順に進んでいきます。
この手続くは、売買契約のもっとも重要な部分ともいえるでしょう。悔いを残さないためには、この手続きにむけて相応の準備をし、「自分の希望に沿った内容となっている」か、冷静に判断できるだけの知識を持つことがポイントです。また、意外としられていませんが必要に応じて修正要求することも可能です。今回は中古マンションを購入するケースを念頭に取引の仕組みを解説します。
§1-① 重要事項説明とは
まず、最初のステップである重要事項説明とは、売買しようとする住戸の物的側面のみならず、土地や建物にかかる行政的な規制、代金の支払いにかかる経済的な側面、締結しようとする契約の法律的な側面など、売買に関する重要な事項について、宅地建物取引業者が作成した書面にもとづいて宅地建物取引士から説明を受けるものです。
いわば、これから結ぼうとする契約内容の最終確認ともいいかえることができます。
§1-② 契約とは
契約が大切なことは言うまでもありませんが、契約については「法律の規定」と「取引実務」、さらには、売買当事者の理解が必ずしも一致しないことに留意します。
実は意外に知られていないことだと思うのですが、民法では契約は当事者の合意によって成立すると規定し、契約書の作成は義務ではありません。例えば、八百屋でキャベツを買う場合を想像してみてください。その都度契約書を作成する必要があるとすると、自由で活発な経済活動が阻害されることを考えれば、この規定は妥当なものです。
一方、今日の不動産売買で契約書を作成しないことはまずないでしょう。口約束だけで契約すると、あとになって、「そんなはずではなかった」、「約束と違う」といったトラブルが発生しかねません。そのため合意内容を契約書にします。契約書を作成するのは売主と買主、つまり、契約の両当事者になるというわけです。
しかし、一般の消費者は売買契約書を合理的・合法的に作成するために必要な知識をもたないことが多いでしょう。そのため実際には、媒介を依頼した宅地建物取引業者が売買契約書の作成を支援します。消費者にとってはありがたいことですが、半面、契約をしているのは自分であるという当事者意識が希薄になりがちです。
あくまで、契約書は当事者である自分が作成するものだということを意識しておくといいでしょう。
§1-③ 37条書面とは
37条書面とは、法律が必ずしも契約書を作成することを義務付けていないことを補完する制度です。37条書面は契約当事者の合意内容を宅地建物取引業者が書面にして両当事者に配布することを義務付ける制度です。これによって、契約当事者が契約書を作成しない場合でも、契約内容を書面化したものが残ることになります。
しかし、実際には前述した通り多くの場合は宅地建物取引業者が支援して契約書を作成します。また、契約書が37条で求められる事項を網羅している場合は、契約書をもって37条書面に代えることが認められており、実務ではこの方式が採用されていることがほとんどです。
§1-④ 各々の特徴と留意点をまとめ
上記に述べた「重要事項説明」「契約」「37条書面」各々の性質を理解し、留意すべき点を知識としていれておくことは重要です。改めてここで留意すべき点を述べておきましょう。
(1) 重要事項説明重要事項説明は法律で説明すべき項目を規定することで売買の安全を図る半面、買主が知りたい項目を網羅されているとは限りません。事前に重要事項説明の項目を勉強したうえで、自分が知りたい項目でこれに含まれないものがないかチェックしておくことが大切です。
(2) 契約契約書売買の両当事者の合意を存分に記載することができます。契約書に盛り込みたい内容を宅地建物取引業者のサポートを受けながら、もれなく文書化しましょう。契約書を作成するのは自分たちであることを忘れずに。
(3) 37条書面37条書面は、契約書の代わりになる性質があり、また、記載しなければならない項目が規定されているからといって、過度に依存することは適切ではありません。重要事項説明と同様、37条書面の項目が、自分たちが取り決めたい内容が網羅しているとは限りません。
この通り、「重要事項説」と「37条書面」では、記載されるべき項目が規定されていることがわかります。次は実際に各々の記載項目に関して、見ていきましょう。
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表1 重要事項説明で説明される項目(売買の場合)注:参考資料1をもとに作成