認知症になった後の不動産売却は、本人の「意思能力」の有無により手続きが大きく異なります。この記事では、成年後見制度の説明や、事前にやるべき具体的な備えまで解説。後悔しないために今からできることを知り、準備の第一歩を。
更新日:2025年10月29日
イエシルコラム編集部
株式会社リブセンス
IESHIL編集部東京・神奈川・千葉・埼玉の中古マンション価格査定サイトIESHIL(イエシル)。 イエシルには宅建士、FPなど有資格者のイエシルアドバイザーが所属。ネットで調べてわからないことも質問できるイエシル査定サービスを展開しています。イエシルは東証上場企業である株式会社リブセンスが運営しています。
この記事では、認知症の親の不動産売却の要点と、「親が元気なうちから」できる具体的な対策を詳しく解説します。
将来の計画を立てる一歩を踏み出しましょう。
不動産売買は、民法で定められた「契約」という法律行為にあたります。
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。出典:民法第三条の二
自身が行った行為がもたらす法的な結果を認識および判断することができる知的能力を指します。不動産売却の場合、家を失う代わりに代金を得ること(結果)を認識し、その結果を判断できる能力のことです。
つまり、軽度の認知症であれば、売却契約が可能なケースも存在します。
それは不動産会社や司法書士といった専門家が、契約締結時と引き渡し時に「不動産を売却した結果の行為を認識できている」と判断した場合です。
ただし、売却活動の開始時には意思能力があっても、決済・引き渡しまでの間に症状が進行するリスクがあります。
不動産の売却は、契約、決済・引き渡しまでに3〜6か月以上かかることもありますので、早めの動き出しが重要です。
認知症だけではなく、精神障がい・知的障がいなどで意思能力が無いとみなされた場合、契約などの法律行為は無効となります。
意思能力がない(または不十分と判断された)場合、成年後見制度のうち「法定後見制度」を利用する事で売却が可能となります。
■法定後見制度
■手続きに2~6ヶ月以上:申立てから後見人選任までには、時間を要します。
■継続的な費用負担:家庭裁判所が決定した後見人への報酬(月2~6万円程度が目安)が本人の財産から発生します。
■法的に難易度が高い:家庭裁判所の関与が必要なため、手続きは複雑かつ時間がかかります。
イエシルに寄せられたご相談の中には、以下のような実体験から売却を断念されたケースがあります。
「物件の所有者である親がある日脳梗塞で倒れました。施設入所にあたり、その費用に当てる為、所有している物件の処分を検討しましたが、結果的には断念し、物件は塩漬けとなりました。
成年後見人になることの煩雑さだけではなく、今後普段の生活も含め使用したお金の使途を全て詳細に記録し、裁判所に定期的に報告する等の成年後見人としての事務作業を今後負担することが現実的ではなかったからです。」
このような実体験からもわかる通り、成年後見人制度の利用は、法的手続きに加え、選任後のご家族の精神的・事務的負担も非常に大きいのが実情です。
1.査定、不動産会社と媒介契約:1~4週間
名義人本人に意思能力があるか、不動産会社があらかじめ確認した上で活動を開始します。確認方法は不動産会社によって異なります。
2.売り出し:1〜6ヶ月
内見対応、購入者との価格交渉などが発生します。
3.売買契約締結、決済・引き渡し:1~2ヶ月後
司法書士が同席し、意思能力の確認が行われます。
合計:3~9ヶ月程度
こちらはあくまで目安で、良い不動産会社が見つからない、買い手がつかないなどの理由でそれ以上かかる場合もあります。
売却活動の初期段階で意思能力に問題がなくても、決済・引き渡しの時点までに認知症が進行し、意思能力が疑われるケースも起こり得ます。
万一そうなってしまうと、契約が白紙になり、改めて成年後見制度の手続きを一から行う必要が生じます。
このリスクを回避するためにも、早期の準備と計画が大切です。
この場合、民法第三条の二に基づき、意思能力がない状態での契約として無効になります。
不動産取引では、売主の「意思表示」が不可欠です。契約が無効になると、以下のような影響と法的リスクが発生します。
親のためを思っていても、勝手に売却する行為は法的なリスクが非常に高いため、絶対に避けましょう。
実際に、東京高等裁判所平成30年3月15日判例、東京津法裁判所平成30年3月25日判例などで、認知症の影響により判断能力が低下した者との不動産売買契約が「暴利行為に該当する」とした事例があります。
準備の第一歩は「現状把握」です。
判断能力があるうちに、将来に備えた法的な対策を講じておきましょう。
親の資産価値を把握できたら、それを基に具体的な計画を立てます。
Q. 軽度の認知症でも売却は可能ですか?
A. 不動産取引に関わる司法書士などの専門家が面談などを通じて、本人が契約の結果を認識・判断できる「意思能力がある」と判断した場合に限り可能です。Q. 親の代わりに委任状を使って売却できますか?
A. 認知症で意思能力がない(または不十分)と判断された場合、委任状も無効となるため、委任による売却はできません。委任という行為自体に意思能力が必要だからです。
Q. 成年後見制度を利用すれば、すぐに売却できますか?
A. いいえ、手続きに2~6ヶ月以上かかります。また、後見人が選任された後も、居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可がさらに必要となり、時間がかかります。
親が認知症になった後の不動産売却は、専門家の判断で売却できる可能性はあるものの、成年後見制度の利用となれば半年以上かかるなど、難易度が高くなります。
最善策は、親に判断能力があるうちに本人が売却を進めること、または事前の準備です。
家族信託や任意後見契約を活用することで、法定後見制度よりも本人の意思を反映し、手続きの負担を軽減する選択肢が広がります。
売却には通常でも数ヶ月かかるため、認知症になる前の早期対応が何よりも重要です。
「認知症ではないけれど親が高齢で不安」といった場合も早めに計画を立て、準備をすることでいざという時に役立つでしょう。
「転ばぬ先の杖」として、親が元気なうちに資産状況を把握し、家族で将来について話し合うことが大切です。
まずは、不動産の価値を把握するところから、将来に備えた計画の第一歩を踏み出しましょう。
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▼免責事項
本記事は、一般的な情報提供を目的としており、医療・法務・税務・金融上の助言を行うものではありません。
掲載内容は執筆時点の法令等に基づいていますが、最新情報や個別の事情によって判断が異なる場合があります。
実際に不動産売却や成年後見制度の利用、家族信託契約の締結などを検討される際は、医師、司法書士、弁護士、税理士などの専門家へご相談ください。
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