譲渡所得の特別控除とは?適用条件や注意点をチェック!

不動産は大きな資産であるため、売却すれば多額の利益が見込めます。しかしその反面、利益の大きさに伴って支払わなければならない税金も多くなります。そこで税金対策として利用できるのが特別控除です。不動産売却時に利用できる特別控除にはいくつか種類があります。不動産売却時に税金で損をしないよう、利用できる特別控除について理解を深めておきましょう。

更新日:2019年11月26日

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1.不動産を売却したときには税金がかかる!

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日本では一定の金額以上の収益を得たときや登記をしたときなどは、税金を納めなければいけません。それは不動産売却時にも言えることです。不動産を売却したときには、印紙税・登録免許税・消費税・所得税・住民税などを納める必要があります。
しかし、不動産売却時に常にこれらの税金が発生するわけではありません。不動産の売却による利益の有無にかかわらず納めなければいけない税金と、利益が出たときのみ支払えばよい税金があります。

不動産売却によって発生した利益は、譲渡所得というものに分類されます。
所得税と住民税は譲渡所得に税率をかけることで算出されるものなので、譲渡所得が0円や赤字であれば当然税金も0円ということになります。住民税も利益が出なければ支払う必要はありません。
したがって、印紙税・登録免許税は不動産を売却した以上は発生しますが、消費税・所得税・住民税は譲渡所得がなければ納める必要がないことになります。
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2.譲渡所得の計算方法

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譲渡所得は譲渡価格から、取得費用と売却費用を引くことで計算できます。
取得費用とは、売却した不動産を取得したときに支払った費用のことです。不動産の購入費用はもちろんのこと、建築費用や不動産会社へ支払った仲介手数料なども取得費用に含めることができます。
そしてもう1つの費用である売却費用とは、不動産を売却するのに実際かかった費用のことを指します。
例えば、不動産会社への仲介手数料や売り手側が負担した印紙税などが挙げられます。
所得税や住民税を少しでも抑えるには、この取得費用と売却費用を不足なく計上することが重要となります。費用の証明がしっかりとできるよう、費用として計上できるものの領収書はきちんと保管しておくようにしましょう。


3.不動産売却時に利用できる代表的な特別控除

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不動産売却時には、特別控除というものを受けることができます。特別控除を利用することで課税の対象となる譲渡所得の金額を下げることができ、結果的に節税することができます。利用できる特別控除がいくつかあるので、体表的なものについて見ていきましょう。

3000万円特別控除

譲渡所得税の特別控除の中でも特に代表的なものが、3000万円特別控除です。
この控除の内容はその名の通り、譲渡所得の金額から最大3000万円を控除することができます。3000万円という高額な控除を受けられるため、一般的な住宅の売却であれば納税額を大きく減らすことにつながります。
例えば、取得費が1500万円の不動産を100万円の売却費用をかけて、4000万円で売却したとしましょう。これにこの3000万円特別控除を適用させると、譲渡所得は実質0円ということになります。
したがって譲渡所得税も0円ということになるのです。
また、次に紹介する「長期譲渡所得の軽減税率」とセットで適用することも可能なので、この控除を適用後の譲渡所得がプラスであっても、さらに税金を安く抑えることができます。

長期譲渡所得の軽減税率

3000万円特別控除は税率がかけられる譲渡所得の金額を下げて税金を抑える仕組みだったのに対し、長期譲渡所得の軽減税率は譲渡所得にかける税率自体を下げて税金を抑える特例です。長期譲渡所得の軽減税率が適用できるのは、10年を超えて所有していた居住用財産を譲渡した場合で、課税譲渡所得6000万円まで税率を14.21%(所得税10.21%、住民税4%)とすることができます。6000万円を超えた分に関しては、20.315%(所得税15.315%、住民税5%)が税率となります。

実際にどれくらい節税になるかを見ていきましょう。
15年にわたって所有し続けた居住用財産を売却し、3000万円の譲渡所得を得た場合を考えます。長期譲渡所得の軽減税率が適用されない場合の税率は、20.315%(所得税15.315%、住民税5%)となるため、納める税金は約609万円となります。
しかし、長期譲渡所得の軽減税率が適用されれば納める税金が約426万円となり、183万円の節税となるわけです。
この特例を適用するには、売却した年の1月1日時点で、土地と建物両方の所有期間が10年を超えていなければなりません。
また、対象物件が居住用財産の定義に当てはまらなければならないため注意が必要です。

特定の居住用財産の買換え特例

特定の居住用財産の買換え特例とは、その名の通り家を買換えるために元々所有していた不動産を売却した場合に限り利用することができる特例です。買換えることが前提となっているため、新しくマイホームを購入していなければこの特例を受けることはできません。特定の居住用財産の買換え特例は、新しく買ったマイホームの広さが建物は50平米以上、土地が500平米以下でなければいけないという条件があります。

また、売却した年の1月1日時点で売却した不動産の所有期間が10年を超えて、居住期間が通算で10年以上である条件となります。この特例を受けることができると、売却価格のうち新しく購入した不動産の価格と同額分の課税が繰り延べられます。
すなわち、所有していた不動産を3500万円で売り、新居用に4000万円で不動産を購入したならば、不動産売却による譲渡所得税が0円ということになります。
ただし、あくまでも課税が次回に繰り延べられただけなので、この特例で譲渡所得税を0円にするためだけに高額な不動産を購入してしまうと、次回売却時の譲渡所得税が高額になることも考えられます。この特例を利用する場合は、どうするのが最適かよく考える必要があるでしょう。

譲渡損が生じる場合に受けられる特例

不動産売却時に損失が生じた場合でも税金対策が可能な特例が2つあります。それぞれの概要を見ていきましょう。

1つ目は「居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」です。
この特例では、譲渡損を給与所得などのプラスの所得と相殺できるうえ、相殺してもなお損失が残る場合はさらに損失を3年間まで繰り越すことができます。
例として、1500万円の譲渡損が生じた場合を考えてみましょう。
毎年500万円の給与所得があった場合、給与所得よりも譲渡損の方が多いのでその年の所得税は0円ということになります。
また、損失がまだ1000万円も残っているので、その次の年とさらにその次の年まで申告する所得が0円ということになるのです。
この特例を受けるには、「売却した不動産が居住用財産の定義を満たすこと」「所有期間が売却する年の1月1日時点で5年を超えていること」「要件を満たしたマイホームを購入すること」の条件を満たす必要があります。
もう1つの特例は「居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」というものです。
基本的な内容は上記の「居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」とほぼ同じですが、特例を受けるための条件が若干異なります。こちらの特例ではマイホームを新しく購入する必要がありませんが、売却する不動産に一定額以上の住宅ローンが残っていることが条件に加えられます。


4.3000万円特別控除を受けるには?条件をチェック!

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不動産売却時に受けることができる代表的な特例である3000万円特別控除を受けるには、いくつかの条件をパスする必要があります。どうすれば3000万円特別控除を受けられるのか、適用条件について詳しく見ていきましょう。

基本的な条件

3000万円特別控除を受ける条件として、所有者が現に居住するために利用している住宅でなければいけないというものがあります。その住宅に住まなくなった場合でも、その日から3年目の年末までに売却が完了すれば、この条件を満たしているとみなされます。したがって、売却先が見つからないうちに新居へと引っ越して期限まで売れないとなると、この特例は受けることができなくなるため注意が必要です。

また、売却した年の前年や前々年にこの特例や、特定居住用財産の買換え・交換の特例などを受けていた場合もこの特例を利用することはできなくなります。
さらに、対象物件が居住用財産の定義に当てはまるかどうかもこの特例を受ける条件となるため、事前にしっかりと確認しておくことが必要となります。

相続財産を売却した場合の条件

不動産を相続した場合、みんながみんな相続した家を有効活用できるわけではありません。
中には管理が行き届かずに空き家となってしまう不動産もあります。そのような相続による空き家対策のために、相続財産である居住用家屋に対しても3000万円特別控除が適用されるようになっています。相続財産の売却でこの特例が適用になる家屋は、「昭和56年5月31日以前に建築されたもの」でなければいけません。

また、「相続時から相続開始日以後3年を経過する日の年の12月31日までの譲渡が対象」となるため、約3年以内に売却できなければこの特例が利用できないことになります。
さらに、「譲渡金額の合計が1億円以下」「相続時から譲渡時までの間に事業用・貸付用・居住用として使用していないこと」「相続開始の直前まで被相続人以外に居住していないこと」「譲渡時には一定の耐震基準をクリアすること」などの条件もあります。ただし最後の耐震基準の条件をクリアするのが難しい場合には、建物を解体して更地にすることでも条件クリアとみなされます。


5.特別控除を受けるには確定申告が必要

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特別控除は条件が合えば自動的に税務署で処理を行ってくれるというものではありません。特別控除を利用できるとわかったら、自分で確定申告を行って特別控除を適用させる必要があります。
この段落では特別控除に関する確定申告の方法を解説していきます。

譲渡所得にかかる所得税の申告が必要!

確定申告とは、年間を通していくらの所得があり、いくら税金を納めますという旨を税務署に申告するものです。
給与所得であれば務めている会社側がやってくれますが、譲渡所得を含む給与所得以外の所得は各自で確定申告を行わなければなりません。特別控除を利用する場合は、譲渡所得税の申告と同時に、特別控除を利用するための必要書類を提出します。

譲渡所得を申告する際には、確定申告書とは別に譲渡所得の内訳書など、必要に応じた書類を加えて申告を行います。ただし特例を適用する場合には、売却した不動産が条件に当てはまるという行政発行の証明書がさらに必要となります。確定申告は基本的に1カ月間しかないので、証明書は余裕を持って用意しておくようにしましょう。
特例を利用することで納税額が0円となる場合、一見すると申告の必要がないように見えますが決してそのようなことはありません。申告がない限り、税務署が勝手に特例を適用するかどうか判断することはないため、所得があるにもかかわらず申告していないということになります。譲渡所得があるにもかかわらず未申告だと、脱税を疑われることになるので忘れずに申告するようにしましょう。

確定申告をする方法

確定申告は、不動産を売却した年の翌年2月16日~3月15日までの間に行います。
開始日や終了日が土日祝日と被った場合は平日に繰り下げられるので、念のために毎年確認しておくと安心です。必要書類を税務署の窓口に直接持って行って提出するか、郵送で提出することで確定申告が行えます。

また、e-tax(国税電子申告・納税システム)を利用すれば、自宅にいながらインターネットで電子申告することも可能です。電子申告する場合は電子証明書内蔵のマイナンバーカードとカードを読み込むためのカードリーダーが別途必要になります。マイナンバーカードは発行に約1ヶ月と時間がかかるため、電子申告を希望する場合は早めに準備しておくようにしましょう。


6.特別控除を受けるときの注意点

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特別控除を受ける際、いくつかの注意点があります。
特別控除を最大限活用するためにも、注意点についてしっかり把握しておきましょう。
譲渡所得から控除を受けられる特例は複数ありますが、それぞれに特別控除額が設定されています。特例ごとの譲渡益が限度となることを覚えておく必要があるでしょう。
また、特別控除額には年間の限度も設けられています。その年の譲渡益の全体を通じて合計5000万円が限度です。さらに、特例ごとに適用条件が詳しく定められているので、本当に利用できるかどうかをしっかりと確認しておくことが大切になります。


7.納税額が変わる!事前に計算しておくことが大切!

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特別控除には、組み合わせて利用できるものとそうでないものがあります。
また、今回紹介した特例を受けずに、住宅ローン控除の適用を受けた方が税負担が少なくなるケースも珍しくありません。どの特例を利用するかによって納税額が大きく変わってくることが多々あります。事前にあらゆるパターンを想定して納税額を計算しておくことで、一番効果的な節税方法を見つけることができるでしょう。

便利な無料アドバイスサービスも利用しよう!

不動産売却時には、さまざまな特別控除を受けることができます。
不動産の譲渡所得は大きい分、数%の節税が数百万円の節約につながることも珍しくありません。譲渡所得の特別控除を受ける場合には、条件や申請方法を把握しておくことが大切です。
不動産売却時に税金やお金の流れなどについて不明点があるならば、IESHILの「不動産アドバイザーサービス」をぜひご利用ください。

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