マンションの売却にかかる時間はどれくらいが平均的なのでしょうか。
大手不動産会社の1つ、三井住友トラスト不動産が行った2005年から2015年の10年間を追った調査では、首都圏、近畿、中部の3つの大都市エリアで平均3.3ヶ月という調査結果があります。首都圏だけの平均売却期間は2.5か月と少し短めですが、売却から成約までの期間はどの地域も毎年ほぼ横ばいです。
なお、この期間には売却成立後の引き渡し期間や、売却前の準備期間は含まれないので、売却を決意してから引き渡し完了までの期間は、少なくとも平均4ヶ月以上はかかるという計算になります。
マンションは早く売れた方が高く売れる傾向にあり、時間が経つ程に価格が下落しやすいです。首都圏においては、1年間売れないと約600万円下落するというデータもあるほどで、できるだけ早めに買い手がつくように、うまく戦略を立てることが重要になってきます。
内覧のイメージが良く無い
マンションが売れるためには、内覧で購入希望者に好印象を持ってもらうことも非常に大切な要素です。あまりにも大きな破損状態のある壁、床、フローリングなどは評価が下がりますし、不衛生な印象を与えると購入意欲がそがれてしまいます。現状でまだ入居中の物件でも、整理整頓や最低限の清掃などの気づかいをしておかなければ、内覧者はマイナスの印象を持つことになるでしょう。
さらに、内覧で注意すべきなのは、内覧希望者に対してうまく物件に関する説明ができていないのではないかという点です。内覧希望者は売主に対して、住んでいる人にしかわからない細かな情報を求めています。聞かれたことに率直に答えることは必要ですが、全体的にネガティブだったり、購入希望者がそこに住むメリットを感じられなかったりすると、なかなか購入契約にまで行きつくことができません。
広告の内容や宣伝方法に問題がある
最近では、不動産を探している人はまずインターネットで一次情報を集めることが多いです。そのため、インターネット上で広告を売っていないというだけで、広告展開としてはかなり不利な状況となっているといえるでしょう。インターネットで広告を打っている場合でも、広告の状態によっては効果の上がらないことがあります。
例えば、広告に掲載している写真です。使っている写真が魅力的でない、確認したい設備や部屋があまり写っていないという物件は、どうしても敬遠されがちになります。購入希望者は新たな住まいでの暮らしをイメージしたいと思って物件を探しているので、できるだけ多くの写真を掲載している方が内覧希望者を多く集めることにつながっていきます。
マンションが売れない原因が、媒介契約をした不動産会社にある場合もあります。
そこで、今度は不動産会社に原因があるケースでのポイントについて説明していきましょう。もしここで取り上げるポイントが自分に当てはまっているのであれば、不動参加者との契約解消を検討した方がいいかもしれません。
「囲い込み」が行われている場合がある
不動産会社は自社で買主と売主を見つけることで、両方から仲介手数料を得る事が可能です。
そのため、できるだけ自分たちだけで買い手を見つけたいと考えて、他社経由からの購入希望者が打診してもこれを断ってしまうことがあります。これを「囲い込み」といいます。
他社からの購入申し込み者と契約しても買主の仲介手数料は他社に支払われるので、総合的においしくないと判断してしまうわけです。「囲い込み」をされると、なかなか売却交渉が進まない状態に陥ります。他社からの購入希望者には「その物件はもう売買契約が決まっている」など嘘をついている場合もあります。不動産会社から細かな状況報告がないなどのおかしな兆候があれば、「囲い込み」を疑ってみる必要があるでしょう。
干されている場合がある
不動産会社の方で売却、購入の両方を扱っている場合、わざと物件を売れない状況にして値下げをさせ、自社、あるいは提携している他社などの身内で買い叩こうとする場合があります。いわば、自作自演で転売してしまおうという手口です。このようにわざと売れない状況を装われることを、業界用語で「干す」「干される」といいます。
さらに、干されている物件に対して値引きを要求することを「値こなし」といい、「市況が悪いので、この価格では厳しいです」とか「この価格なら購入したいという人がいる」などと言ってくることが多いです。なかなか買い手がつかない状況にもかかわらず、不動産会社が直接値引き交渉をしてくるような場合は、物件が「干されている」可能性を考えた方がいいでしょう。
契約内容が曖昧にされている場合がある
不動産会社と媒介契約を結ぶときには「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。
このうち「専任媒介契約」と「専属専任媒介契約」は1社のみと契約するかたちです。この2つの契約を行った不動産会社は、仲介する物件を不動産業界全てで共有している不動産サイトである「レインズ」への登録が必須となっています。この「レインズ」に掲載されていると、全国から買い手を募集することができるので、レインズへの登録は不動産売却ではかなり重要です。
しかし、特に地方や田舎の不動産会社の中には、こうした媒介契約の内容があいまいになっていることがあります。
地方の不動産は地域に独自のネットワークを持っているなどの強みがありますが、なかには契約内容の確認や説明がいい加減なところもあるので注意が必要です。少しおかしいと感じたら、自分で媒介契約の内容を確認して、あいまいな点があればしっかり不動産会社に問い合わせましょう。
それでは、次になかなか売れないマンションを売れるようにするにはどうすべきなのか、その改善ポイントを7つほどに絞って解説していきましょう。うまくいかない状況を変えるのは、売主から積極的に打てる手を打っておく必要があります。
価格設定を見直す
マンションが売れない原因の大部分は「価格が高い」ということにあります。
ですから、なかなかマンションが売れないという場合は、まずは相場に合わせた価格設定をすることが大切です。価格の設定は不動産業者に言われるまま決めるのではなく、自分でも不動産サイトなどで近隣のマンションや地価相場などをリサーチしましょう。それが難しいと感じたら、複数のサイトで査定をしてもらってその平均値を取るという方法もあります。価格を見直す際にも工夫が必要です。
例えば、4000万円台から3000万円台に下げるのであれば「4000万円から3990万円」という風に、価格帯が変化するような設定をした方が購入者の目に止まりやすくなります。
また、新しい価格を設定するのであれば、仲介手数料の更新が3ヶ月程度で更新されることを考えて、3ヶ月周期で行うことがおすすめです。
内覧対策を行う
内覧対策も重要です。内覧の際にできるだけプラスのイメージを持ってもらうように、対策を行いましょう。
汚れや破損が目立つ箇所は小規模のリフォームや修繕工事を施し、ハウスクリーニングなどで清潔感を出すようにしておきます。ただキッチンやバスルームなどの水回りは、購入者が自分好みにリフォームしたいということが多いので、リフォームしない方がいいでしょう。部屋の外観だけでなく、内覧では内覧希望者からの質問に対してしっかりと答えられるように準備しておくことも大切です。そこに住んで得られるメリットを率直に伝えられるかということが、内覧対応での成功のカギとなります。
管理費や修繕費などが高い場合、それを補ってあまりあるメリット、例えば快適に過ごせる、管理人の対応が良い、近隣の環境が静かであるといった「住み心地の良さ」を中心に説明していきましょう。どうしても自分で上手く説明ができない場合は、同伴している不動産会社の担当者と相談し、フォローをお願いするなどの準備を行ってください。
ホームステージングを行う
ホームステージングとは、インテリアや家具を設置して売却物件をよく見せる手法です。
日本ではまだまだ知名度が低いですが、世界では不動産売却の際によく取り入れられています。いわば、売却物件を内覧の際にショールームのように見せるために演出するというものです。実際にその効果は抜群で、ホームステージングを行った物件の売却平均期間は45日ほどというデータもあります。内覧者はそこに住むイメージが付きやすくなるので購買意欲が湧きやすく、実際に相場よりも高額で売却できた事例も多くあるようです。
ただし、このホームステージングは専門家である「ホームステンジャー」などのプロや業者に依頼する必要があるので、それなりに費用がかかってきます。部屋の大きさやプランにもよりますが、平均費用は18万円程度です。このあたりは費用対効果を考えて、メリットが大きいと判断できれば検討しておくというスタンスでいいでしょう。
広告内容を見直す
新聞広告やチラシなどの媒体のみを利用している場合には、インターネットなどのより集客効果の高い広告に変更してみましょう。不動産を探している人の多くは最初にインターネットで物件を検索しているので、ネット広告の成否はマンション売却を成功させるためにも重要です。ネット広告では写真の見栄えや掲載数がモノを言います。できるだけ移りと見栄えの良い写真を使い、広告を見た人が内覧したいと思わせるように工夫していきましょう。写真の点数自体も多い方が問い合わせをされやすいです。
複数のサイトに掲載することになりますが、その不動産媒体の掲載情報は全て記入しておきましょう。間口をできるだけ広くするためにも欠かせないテクニックです。広告活動自体は、自分単独で推し進めるのではなく、不動産会社の担当者と共同して行う方が効率的といえます。担当者は専門的な知識も豊富に持っているので、より効果的な広告を掲載することにつながるでしょう。
ホームインスペクションを行う
築年数の古い物件では「ホームインスペクション」によって、安全性や修繕の必要性の有無などを調べておくことも効果的です。ホームインスペクションとは、第三者が中立の立場で建物の劣化具合や修繕が必要な時期、その概算などを試算して診断するサービスのことです。一級建築士などの専門家である「ホームインスペクター」が行います。費用は1次診断が約5万円前後、より精密な診断となる2次診断は10万円を超えることもあります。建物の強度などをより精密に調べる必要があれば、2次診断が必要になるケースも考えられます。
ホームインスペクションを実施していることのメリットは、購入検討者に対して安心感を与えることができるという点です。地震などの自然災害への関心の高い人も増えているので、住居の安全性に対しては購入希望者の関心は高いです。本来は買主が負担するべきホームインスペクションの費用を売主が負担することも、好印象を与えることができるでしょう。
不動産業者を変更する
不動産売買にあたっては、不動産業者の選定は最も重要なポイントの1つです。
「囲い込み」や「値こなし」のようなことをする悪い業者を避けることはもちろんのことですが、不動産業者によって物件売買の得手不得手というものがあります。
特にマンション売買は専門的な知識やノウハウが必要になる分野なので、得意としている業者の数の方が圧倒的に少数という事実があります。さらには、もともとの業者の営業力不足や仲介契約の種類などによっても、売れやすさは大きく変わってくるでしょう。売却がうまくいかずに停滞気味の場合は、不動産業者を変更することで状況が好転する可能性があります。
「売却」から「賃貸」に方針を変える
とにかく早くマンションを手離したいという場合には、奥の手が1つあります。
それは、「売却」から「賃貸」に方針転換するという方法です。意外にも有効な方法の1つで、マンションを資産として活用できるため、借り手が付けば毎月の家賃収入が入るようになります。
しかも「節税」効果もあり、マンションを売却するとかかってくる「譲渡所得税」が、賃貸の場合はかかりません。借家にすることで「借家権割合」というものが発生するので、相続税の評価額が30%下がるという効果もあります。
このように売却から賃貸の方針転換は、資産形成という点でもかなり有効な戦略です。売却が難しい物件でも、貸家になると人気となる物件も数多いので、選択肢の1つとして考えておくといいでしょう。
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