離婚の際、住宅ローンの残っている家があったら処分方法に注意が必要です。そのまま残しておくと、離婚後にローンを払えなくなって大変なトラブルが発生する可能性があるからです。 もしも離婚時にオーバーローン状態になっているなら「任意売却」を検討してみましょう。ローンを大きく減らして離婚後のトラブルを小さくできます。 今回は、離婚の際に任意売却をするメリットとデメリット、任意売却すべきかどうかの判断基準や注意点を解説していきます。
更新日:2019年09月11日
福谷陽子
ライター 元弁護士
プレミアムライター弁護士時代から離婚や破産管財など数多くの不動産取引に関わってきた。売買、相続、離婚、任意売却、賃貸借、契約トラブルだけでなく、相続税などの税金関係についても造詣が深い。今はその経験を活かし不動産関係の執筆を行っている。
任意売却と競売を比べると、任意売却の方が高値で売れる可能性が高くなります。競売の場合には市場価格の8割やそれ以下になってしまう例が多いためです。高額で売れればその分住宅ローンも多く返済できるので、任意売却後の支払いも楽になります。
競売になると、裁判所の執行官や物件に関心を抱いた不動産業者が様子を見に来たりして、周囲が不穏な雰囲気になります。近所の人にも「何かあるらしい」「競売になっているらしい」と知られる可能性が高くなります。任意売却なら、普通に不動産会社に仲介を依頼して不動産市場で売却できるので、そういった詮索をされずに済みます。
競売や任意売却になると家に住み続けられないので引っ越さなければなりませんが、競売の場合には引っ越し代を出してもらえません。任意売却の場合、売却金額から30万円程度の引っ越し費用を出してもらえるケースが多いので、債務者にとっては助かります。
任意売却をしないで夫婦のどちらが家に住み、ローンを支払い続けると、離婚後も高額なローン返済がのしかかりますし、家族の思い出のつまった家に住み続けるのは心理的も良いものではないでしょう。離婚前に任意売却して離婚についての問題を解決し、ローンからも解放されて離婚後にはスッキリと歩み出せるのは大きなメリットと言えます。
任意売却には、デメリットもあります。まず任意売却するためには自分で不動産会社を見つけてきて査定を依頼し、査定額を金融機関に報告して売却許可をもらう必要があります。その後も内見に協力したり価格交渉をしたり売買契約書を作成したりして、かなり面倒です。競売なら債務者が何もしなくても裁判所が勝手に売却を進めてくれるので、こういった不動産売却のためのやりとりや手続きが面倒なのは任意売却のデメリットといえます。
任意売却をしても、物件が必ず売れるとは限りません。値段をつけ間違えると全く反響がないケースもありますし、売れたとしても非常に安くなってしまう可能性もあります。
あまり安く売るなら「競売の方が高かったのでは」と思うケースもあるでしょう。必ずしも思ったように売れるとは限らないことは、任意売却するときに覚えておかねばならないリスクです。住宅ローンを滞りなく払っていれば、ブラックリスト状態になることはありません。ブラックリスト状態とは、ローン滞納情報が個人信用情報に記載されてローンやクレジットカードなどを一切利用できない状態です。いったん個人信用情報が傷つくと最低でも5年はブラックリスト状態が続くので、その間カードなどを利用できず大変不便な生活になります。任意売却すると住宅ローンを数か月以上滞納することになるので、ブラックリスト状態になります。 ただ、既に滞納してブラックリスト状態になっている場合「任意売却によってブラックリスト状態になる」わけではないのでこのデメリットを心配する必要はありません。
夫婦がどちらも家に住みたいという強い希望を持っていないなら任意売却を選択しましょう。
毎月の住宅ローン返済の負担が重くて、離婚後一人で返済していくのが難しいと感じるなら、任意売却しておきましょう。任意売却によってローンの多くを返済しておけば、残ローンを減らせるので離婚後の返済負担が軽くなります。
離婚時、不動産市場がどのような状況かも調べてみるべきです。不動産市場が活気づいて比較的高額になっているなら、任意売却でも物件を高く売れるからです。思った以上に高く売れればオーバーローンと思っていてもローンを完済できる可能性も出てきます。そこまでいかなくても、残ローンが100万円やそれ以下になれば、離婚後の返済も非常に楽になるでしょう。
家が夫婦どちらかの単独名義でローンも単独であれば、どうしても任意売却しなければならないという判断になりにくいでしょう。しかし家や建物が共有名義、夫婦が連帯債務者、あるいはどちらかが連帯保証人になっているなど、夫婦の法律的な権利関係が複雑になっているならば、そういった関係を離婚後に持ち越すのは好ましくありません。後日のトラブルの種になってしまうからです。離婚時に任意売却をして、夫婦の権利関係を清算しましょう。
任意売却すると家には住めなくなるので、どちらかが家に住みたいなら基本的に任意売却すべきではありません。
もしも住宅ローンの負担がそれほど重くなくて離婚後も問題なく払っていけそうであれば、無理に任意売却をしなくてもかまいません。ただしどちらも住みたくない、離婚後にスッキリしたいなどの事情があれば任意売却を検討しましょう。
不動産の市場が全体的に低調で低額でしか売れなさそうであれば、任意売却をすると損になる可能性があるので基本的にお勧めとはいえません。ただし権利関係が複雑、どちらも住みたくないなどの事情があれば、たとえ低額でも任意売却した方が良いケースはあります。
6)売買契約書の作成(売買契約締結)と手付金の授受
7)引っ越し
8)金融機関にて決済、物件引き渡しと登記
任意売却の流れの詳細については、こちらの記事も参考になります。
任意売却の流れとは?注意点と成功させるコツを徹底解説!|不動産WEB相談室
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