マンションでの民泊利用は制限できるのか?ー民泊問題に詳しい弁護士に聞く(2)

マンションの管理規約で民泊を禁止できるのか、民泊で騒音やゴミ出しルール違反などの迷惑行為が起きた場合はどうするか、解説しています。

更新日:2016年01月28日

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イエシルコラム編集部

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この記事の要点
  • マンションの管理規約で民泊を全面的に禁止することは難しい
  • 新築分譲時に管理規約で決めておくことは有効
  • 騒音やゴミ出しのルールを守らない程度では禁止できない可能性もある
  • 特別区でも特例条件に満たない場合、旅館業の法律違反となる可能性がある。通報先は保健所となる
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民泊の全面的な禁止はできない可能性が

ㅡㅡマンションの住人による民泊の利用を規制しようとする動きがあります。マンションの管理規約で民泊を禁止できるのでしょうか。

三平氏:
管理規約で民泊を禁止するルールを設定できるかどうかは難しい問題です。法律上規定された割合の賛成があれば管理規約を変更できる、という単純なことではありません。新たに設定するルールの内容によっては無効となることもあります。

分譲マンションは各住戸が独立した「所有権」の対象です。使用方法については、各所有者の判断が尊重されるのです。もちろん、マンション全体は共同生活の場所であり、お互いに影響を与える状況にありますので、制限は一切できない、ということはありません。

しかし、使用方法のうち本質的な部分を制限する規約は無効となる傾向があります。

民泊について言えば、静かに利用している分には禁止できない可能性があります。特に「後からルールで拘束する」ということ自体が、認められない(無効になる)理由となります。さらに「長期間継続していた運用」であれば、さらに制限することは認められにくくなります。理想としては、新築分譲時に明確にルールを決めておくことです。そうすればルールを理解・了解した人だけが購入します。区分所有者の全員がルールについて了解している状態になり、全員が想定した環境で生活できます。

騒音やゴミ出しのルールを守らない場合はどうなる

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ㅡㅡ管理規約で禁止することができなくとも、例えば、マンションで隣の部屋の所有者が、自身は住んでおらず、不特定多数の旅行者を宿泊させていることが分かり、騒音やゴミ出しのルールを守らないことが頻繁にあっても、そうした利用は止められないのでしょうか。

三平氏:一定の弊害が生じている場合では、法的な請求が可能です。禁止行為をする者に対して、行える請求の種類は次のものです。

・違反行為停止・行為予防請求
・使用禁止請求
・競売請求
・引渡請求


騒音やゴミ出しルール違反という程度であれば「違反行為停止・予防請求」ができる可能性があります。ただし、書面・口頭での請求というアクションを超える場合は、総会の招集と議決が必要となります。総会が必要となる具体例は、使用禁止請求・競売請求・引渡請求などの訴訟を使う場合です。

いずれにしても、行為停止・予防請求が認められるには「区分所有者共同の利益を害する」程度に達していることが前提です。騒音やゴミ出しルール違反などの迷惑行為の程度が軽い場合は認められません。
(参考情報:【マンションの悪質行為|基本|対応=停止・予防・使用禁止・競売・引渡請求】http://www.mc-law.jp/fudousan/18666/

マンションの共用施設であるゲストルームの利用について

ㅡㅡマンションの共用施設であるゲストルームが、Airbnb上で宿泊費をとって利用されていることが分かり、管理規約でゲストルームの商用利用を禁じている場合、禁止することはできますか。

三平氏:共用施設については使用を制限する管理規約が有効となりやすいです。その意味では、利用を禁止することはできます。しかし、「商用」の範囲・判断という問題があります。例えば、ごくたまに泊めてあげた友人が共用施設を使うことは違反ではありません。これを禁止する規約を作っても無効となる可能性が高いです。

特別区でも特例条件に満たない場合

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ㅡㅡ特別区で規制が緩和されたといっても、その特例条件に満たない場合、旅館業の法律違反になると思います。そうしたケースに該当する場合、同じマンションの住人の部屋がAirbnbで貸し出しされていることが分かり、それを止めることはできないのでしょうか。

三平氏:
「法律違反」が前提であれば「規約違反」と認められる可能性が一気に上がります。要するに「法律違反(というよりも犯罪)を保護しない」という根本的な解釈論です。

ただし、現実的・実務的な問題として、前提となっている「法律違反」の判断があります。現在は解釈が曖昧です。というより、判例などの公的なしっかりした基準がありません。保健所・警察が動いて検挙、有罪判決となれば、「法律違反」ということがハッキリします。しかし「法律違反」がハッキリしていない段階では、行為停止請求などのアクションを取る場合のハードルも高いです。

ㅡㅡそうした事態が生じた場合、どの行政機関に問い合わせをすれば良いのでしょうか。

三平氏:直接対応する窓口としては保健所です。その後、調査・捜査のプロセスで、警察から検察へと移ります。別な視点での対処方法として、ライバル業界への呼びかけ、という手もあります。既存のライバル事業者である旅館業の団体・組合や、そうした団体と関係がある議員などです。

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