「不動産業界ってどういう仕組みなの?」「最近話題の不動産テックとは?」「アメリカor日本の不動産テックってどういうのがあるの?」そんな素朴な疑問を徹底解説。今の日本における両手取引・片手取引、囲い込みについてなども解説していきたいと思います!
更新日:2024年09月06日
イエシルコラム編集部
株式会社リブセンス
IESHIL編集部東京・神奈川・千葉・埼玉の中古マンション価格査定サイトIESHIL(イエシル)が運営。 イエシルには宅建士、FPなど有資格者のイエシルアドバイザーが所属。ネットで調べてわからないことも質問できるイエシル査定サービスを展開しています。
近年さまざまな業界に情報技術の導入が叫ばれていますが、日本の不動産業界についてはどうでしょうか。
”不動産の契約”と聞いたら、なんだか面倒くさそうなイメージを抱く方も多いと思います。
まずは日本の不動産契約の仕組みについて解説しますが、複雑で難解なところもあるので、順を追って簡単に説明していきます。
「不動産を買いたい」と思った時、一人で不動産を売りたいと思ってる人を直接見つけて、売ろうとする人はほとんどいないでしょう。
というのも、業界の人間じゃなければ、基本的にその物件を欲しがってる人は探せないし、価格の付け方や契約方法がわからないはずです。
なので一般的に不動産売買仲介不動産会社を経由する場合が多いでしょう。
不動産仲介には『片手仲介』と『両手仲介』の二通りの方法があります。
『片手仲介』とは、不動産を売りたい人(以下、売主)と不動産を買いたい人(以下、買主)にそれぞれ別の仲介不動産会社が付いている以下の図の様な場合を指します。
【図4:片手仲介画像】
『両手仲介』とは、売主と買主の仲介不動産会社が同じ場合を指します。
【図5:両手仲介画像】
一般的に片手仲介にすべきと言われていますが、一体なぜでしょうか。
片手取り引きは両方のユーザーのアドバイザーが付く形になるので、「手数料が欲しいから出来るだけ高い値OR安い値で売ろう」と利害の一致からお互いに専門家が味方してくれます。しかし両手仲介の場合は、売主と買主の両方から手数料を貰えるという構造から、売主か買主どちらかに肩入れをしてしまう可能性があります。
より深刻な問題は、手数料欲しさから両手仲介にしたい為に、両ユーザーに不利益な状況を作り出してしまうということです。
簡単に説明する為に、コーラで例えてみましょう。
100円で売りたい売主が、仲介業者Aに「100円で売って欲しい」と頼みました。
100円で買いたい買主Bと契約を結んでいる仲介業者Bが、仲介業者Aが持っているコーラを知り、「100円で買いたい」とAに頼みました。
ちょうど同じタイミングで「80円で買いたい」と思っている買主Aが現れた時、仲介業者Aはどうするでしょうか。
【図6:両手片手説明画像1】
普通に考えたら、売主が100円で売りたいと言っているので100円で買いたい仲介業者Bに売るはずですよね。
しかしこの場合、両手仲介をして両ユーザーから仲介手数料を得る為に、80円で売ることが出来てしまいます。
【図6:両手片手説明画像1】
対応するイエシルアドバイザーは10年以上不動産経験のある有資格者。専門的な知見から様々な疑問を解消し、お客様が安心して不動産売買ができるよう尽力いたします。また、囲い込みをしない不動産会社のご紹介が可能です。
不動産業界は個人情報の保護や所有にまつわる法律など、古いならわしが多く残っている印象があります。そこで、ここでは数値データから日本の不動産業界について整理してみたいと思います。まず産業別にどれだけデジタル化がされているかを確認してみましょう。
【図1:産業別のデジタル成熟度(アメリカ)】(出所)Kane,et al.(2015)
グラフを見ると、建設・不動産業はすべての産業の中でもっともデジタル成熟度が低い事がわかります。このデータはアメリカのものですが、日本の不動産業界はどうなのでしょうか。まず、アメリカのIT資本投入量を1とした時の、日本におけるIT資本投入量を見ることができるデータを確認してみましょう。
【図2:産業別のIT資本投入(アメリカ=1)】(出所)厚生労働省「労働経済の分析」
このアメリカの不動産業界が0.1という数値は、
”世界的にデジタル化に遅れがちな不動産業界であるが、日本の不動産業界にいたってはほとんどIT資本の投入がなされていない”
といえるのではないでしょうか。
【図3:産業別の労働生産性(アメリカ=1)】(出所)「労働経済の分析」
最後にアメリカを1とした時の日本の産業別労働生産性についてのグラフを見ると、やはり日本の不動産業界は圧倒的に労働生産性が低い事がわかります。
デジタル化が遅れることによって労働生産性も低くなり、単純にアメリカの不動産業界の人の一人分の仕事量をこなすためには、日本の不動産業界の人が2.5人以上の労力が必要!という状態になっています。
上記のデータをみてわかる事は「日本の不動産業界は遅れている。」ということです。もう少し日本の不動産業界の実情を調べることでしっかりと検証していきたいと思います。
これからアメリカの不動産テックについて説明していきたいと思います。基本的に日本と業界構造自体に違いはなく、最初に見たデータの通り、アメリカの中でもっとも遅れてる業界とされています。しかしデジタル化については日本と比べ物にならない程の進歩を遂げていると言えるでしょう。
アメリカは不動産テック先進国と言われていますが、そこには、多くの不動産テックベンチャー企業が生まれ、社会的に貢献しているという背景があります。ここでは、それらの不動産ベンチャー企業の中で代表的なZillow、Redfinについてご紹介します。
Zillowとは、2006年創業の不動産ポータルサイトです。Zillowの物件掲載総数は1憶1000万件程度ともいわれ、アメリカ最大規模の件数を誇っています。Zillowを他のサービスと特に差別化しているのが、Zestimateと呼ばれる相場価格査定メカニズムです。過去の取引情報など、蓄積したビッグデータをもとに、不動産価格を提示しています。このように、Zillowに掲載されている不動産価格はかなり信ぴょう性の高いものになっており、アメリカ全土の不動産相場の透明化に一役買っています。
Redfinというオンライン不動産業者も、不動産相場の透明化に貢献しています。MLS※1との連携が強く、Redfinユーザーは鮮度と透明性の高いデータにすぐアクセスすることができます。また、
を行い、ユーザーへの訴求と市場の透明性を高めています。
このように、アメリカの不動産業界では、ビッグデータを使用したり、ユーザーの声を反映したりするなど、市場の透明性を保つシステムの構築が進んでいます。これらの不動産テックベンチャーが市場のルール設定を担うことによって、不動産業界の不公平性の減少に寄与しています。
アメリカの不動産業界のデジタル化が進んでいることはわかりました。
では何故日本の不動産業界のデジタル化は遅れているのでしょうか。
日本の不動産業界が変わらない理由として二つ挙げられると考えています。
日本とアメリカの不動産業界の最大の違いは、物件情報の透明性にあります。
アメリカにはMLS(Multiple Listing Service)というアメリカの不動産物件情報を保管するデータベースがあり、不動産仲介をする際には48時間以内に必ず登録しなければならないと義務付けられています。また違反した場合は罰則が設けられています。
日本にもREINS(Real Estate Information Net-working System)という業界共通のデータベースがありますが、条件によっては登録義務がありません。また登録しなかった場合の罰則規定も十分ではない為、情報が武器となる業界ならば当然なるべく登録を避け、自社だけで情報を囲ってオープンにしたくないと思うでしょう。
MLSもREINSも業界標準のデータベースで一般人は直接アクセスしませんが、囲い込み情報によって企業ごとに持っている情報に大きく違いが出てしまいます。
また前章で説明したRedFinはMLS掲載後15分以内に自社データベースに自動反映するシステムとなっている為、一般人にもオープンになっていると言っても過言ではないでしょう。
ここまでの話でわかるように、多くの複雑なルールや不透明なによって不動産業界はユーザーと仲介業者の間に大きな情報格差があります。その情報の非対称性で利益を得ています。
情報をオープンにしてしまうと自社の競争力が弱まるかもしれないし、日本の法律だとこの状態でも違法ではないので、現状維持でいきたいと思うのは当然といえば当然でしょう。
何故日本の不動産業界のIT化が進まないのかの理由はわかりました。
ではこれから先日本の不動産業界が変わっていくのかどうかを考えていきたいと思います。
実はユーザーにほとんど情報が入らずに企業に頼るしかないという状況になる業界はたくさんありました。
その中の一つが中古車業界です。
中古車の良し悪しを推定するにはとても技術がい必要なので、知識のないユーザーに質の悪い中古車を売りつけることが可能でした。
しかし衛星通信の活用によってネットオークションが広まったり、個人へのインターネットの普及によってネットでの一括見積が可能になりより公平性の高い業界へと変わっていきました。
この様に不動産業界も情報化が進むと考えられていますが、何によって大きく変動が予想されるでしょうか。
業界が変わる引き金になるのはグローバル化と言われています。
さきほど書いたアメリカの不動産テックベンチャーの情報へのアクセスも容易になり、「日本の不動産業界も情報を透明にしたほうがいいよね」という傾向が今、少しずつ強まっています。
日本の不動産テックのベンチャー企業も続々と出てきているので、これから期待できると思います。
日本とアメリカの不動産業界の全体像を掴めましたでしょうか。
ここまで『アメリカは進んでる!日本は遅れてる!』と言った文脈で書き進めてきましたが、前章でも書いたように日本でも業界をデジタル化するサービスが続々と増えてきました。
最後にその中の一例を紹介したいと思います。
ビッグデータを利用して住宅の価格査定をするIESHILというサービスです。(弊社のサービスで恐縮ですが最後に少し紹介させてください)
イエシルの特徴はビッグデータを使って住宅の値段を査定できる所です。
業界の有識者との研究から作られたサービスであるため、約9,000万件の賃貸情報や売買履歴を元にしたビッグデータから各物件の現在の価格をリアルタイムで査定します。
また実際に不動産を売り買いする時に気になる”安心”や”安全”などの先入観や肌感覚に頼りがちな情報を数値化する事も特徴の1つです。
政府が提供する公的なデータや専門家の知識を中心に利便性や治安・地盤・子育て環境情報などあらゆる方向から現在のデータを安心なものにします。
ぜひテクノロジーによって透明性の高さを追求した不動産データを見てください!
対応するイエシルアドバイザーは10年以上不動産経験のある有資格者。専門的な知見から様々な疑問を解消し、お客様が安心して不動産売買ができるよう尽力いたします。また、囲い込みをしない不動産会社のご紹介が可能です。
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