マンションを買うなら知っておきたい!住まいの立地の選び方 ~賃貸とはここが違う!購入の時のエリアの選び方~

人生でも最も大きな買い物とも称されることもある不動産の購入。そんな大きな決断となる不動産の購入・売却において「自分たちの知識は十分なのであろうか…」。そんな不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。 そこでIESHILコラムでは、国内で唯一ともいわれている不動産学部がある明海大学の不動産学部学部長である中城教授にご協力いただき、「生活者として知っておいて欲しい不動産学」をシリーズにしてお届けしていきます。

更新日:2018年08月31日

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イエシルコラム編集部

IESHIL編集部

はじめに

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はじめて住宅購入を検討する場合、何から決めてよいか迷うものです。

予算、エリア、マンション全体、専有部分の間取りなど、分譲マンションを検討するためには多くの判断や選択をしていきます。
賃貸住宅の場合も同様の判断をした経験はあることでしょうが、持ち家の場合はなんといっても高額になります。

また、長く住み続けますし、将来住み替える場合のことを考えれば、少しでも高く売却できる住宅を選びたいものです。具体的な物件選びに早く入りたい、そんなはやる気持ちをグッと抑えて、持ち家を選ぶ視点から考えましょう。「急(せ)いてはことを仕損じる」といいます。

正しい発想を身につけて、信頼できる専門家選びに結びつけましょう。

§1 持ち家となるマンションを選ぶ視点

§1-2 アメリカと日本での「持ち家」に対する考え方の違い


アメリカには「足で投票する」という言い方があります。

これは、住んでいるところに不満があれば、より良いエリアに住み替えることをいいます。選挙で自分の考えに近い公約をかかげる議員を選び、その議員が都市政策や住宅政策を決め、行政が実行することによって暮らしやすい都市を実現するのが民主主義の基本ですが、自分にとって好ましい都市行政や住宅行政を実践している都市に住み替える(足をつかって移動する)ことによっても自分の理想を実現することができます。

市民の移住行動をみれば都市政策や住宅政策に対する信任がわかることより、それを選挙の投票になぞらえたものです。アメリカでは持ち家であっても、より良いエリア、より自分にフィットした住宅(my favorite)に積極的に住み替えることが広くおこなわれていることは良く知られています。

これに対して、日本では持ち家を住み替えることは活発とはいえません。農耕民族で、一所懸命に働く暮らしをしてきたことが背景にあるといわれることもありますし、住み替えを容易にするために、中古住宅の流通を促進する取り組みも進められていますが、現状では、一端購入した持ち家はずっと住み続ける傾向があります。

§1-2 「賃貸」とは異なる、「持ち家」を選ぶために必要な視点とは


賃貸住宅を選ぶ場合は、長くない一定の期間をそこで過ごすことを念頭にします。建物賃貸借契約は契約期間が2~3年と短いことがそれを端的に示しています。

これに対して持ち家の場合は、2~3年ごとにそこに住み続けるかどうか検討することは、少ないでしょう。また、持ち家を購入する際はローンを借りることが一般的ですが、2~3年でローンが返済し終わっていることはほとんどないでしょう。

このように、持ち家を購入する場合のエリア選びでは、長期間済み続けることの大切さが賃貸住宅を選ぶ場合より格段に大きくなります。

賃貸住宅の場合は、選ぼうとする対象不動産の現在の状態と、入居しようとする現在の自分や家族の状態を考慮すれば十分ですが、持ち家の場合は、2~3年では起きる可能性が少ない事象や長い時間でおきる変化をも考慮する必要があります。この際の変化とは、対象不動産や地域の変化のみならず、自分や家族の変化を含みます。

さらに、所有権という永久の権利を手にするメリットを得る一方で、「出口」を考える必要があります。現行法では所有権は自動的に消滅しませんし、放棄することも認められていません。

つまり、自分で「しまいをつける」ことが必要です。だれかに売却する、子供に相続するなどが一般的ですが、空き家のままに放置しても所有権は存続します。売却もできない、相続する人もいない状態で放置され、地域に迷惑をかける空き家の問題が深刻化しています。空き家として放置せざるを得ないような住宅を選ばないことがまず重要で、悔いを残さない住宅選びのためには将来の変化を見通す視点が必要となります。

§2 立地とは何か 〜my favoriteに「足で投票する」〜

悔いを残さない住宅選びで大切なポイントは適切な立地の住宅を選ぶことです。立地という言葉には、場所や位置など地理的なニュアンスが強いのですが、将来の変化を見通す視点からは、①自然的、②社会的、③経済的、④行政的な側面から整理するとよいでしょう。

これらが相乗的に作用して住環境が形成されるとともに、よい住環境を持つ住宅は価格が高いなど、資産価値としても現れてきます(図1)。

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図1 立地を構成する要素を4区分する

自分にとって好ましい住環境をもつ住宅を選びたいのは山々ですが、住環境を構成する全ての要素で高い水準をもつ住宅は価格も高く、予算をオーバーしてしまいがちなものです。結果として予算とのバランスで住環境のある部分については要求水準を下げるなどにより、両者の均衡を図ります。

この際の適切な判断には、住まい手としての自分や家族の変化をどれだけの期間で見込むのか、言い換えるとその住宅にだれが、いつまで住むのかという「居住計画」が欠かせません。

①子供が小さいうち、家族4人程度で住む、②子供が成長後も独り立ちするまで家族4人で住む、③子供が独立した後も夫婦二人で住み続ける、などはその例です。
さらに、①では子供の教育環境を重視する、③では夫婦の老後生活を重視するなど、幸せな暮らしを実現するための「ポリシー」を明確にすることです。それによって自分が望む、my favoriteな住環境を動的に把握することが可能となり、結果的に「出口」もうまく設計できます。

変化を見る際には、「現状」「将来」「優れる」「劣る」によって4区分することも有益です(図2)。漠然と考えるのではなく、my favoriteについて、自然的、社会的、経済的、行政的に区分してそれぞれ表1のような事項を評価するとともに、それらを統合した総合評価も図2を使って図示すると、選んでよいエリアか、避けたほうが良いエリアかを視覚的に把握できます。

現在は優れており(P1)、将来も優れていれば(F1)問題ありませんが、将来は普通である(F2)や将来は劣っている(F3)と予想される場合は選択すべき立地とは言えません。いうまでもなく、現在よりも将来が選りすぐれた状態になる立地(値上がりする場所)を選ぶことが基本です。もとより、将来のほうがより劣る状態になると思われるエリアであっても個別の住宅としては優れている、あるいは、my favoriteな住宅ということもあります。その場合は、図2で把握する将来予想を価格交渉に用いることが考えられます。

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図2 立地の変化を図に示して把握する

§3 立地を選ぶ4つの要素~my favorite を抽出する~

住宅の立地を選ぶ際の4つの要素ごとに項目を例示すれば表1のとおりです。これらの中からmy favoriteな要素を抽出し、その要素を中心に現在および将来の評価を行って§2のとおり図2によってビジュアル化します。

もっとも、表1は例示に過ぎません。言い換えれば一般的なものです。これに対して購入者が重視する要素は個々のケースで様々なはずです。表1の例示に関わらず、思い切ってmy favoriteを設定しましょう。

例えば、子育てを終わった後まで住み続け、夫婦で家庭菜園を楽しみたいという居住計画をもっている場合は、農地の近さという要素が重要となります。

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表1 住宅の立地を構成する要素と項目

§4 立地の要素を調査する

インターネットが発達した今日では、インターネットを使えば、およそ調べたい事項の多くは居ながらにして調査できます。大いに活用するとよいでしょう。例えば、洪水による浸水や地震による液状化などについても今日では、ハザードマップ(被害予測地図)として公的機関が開示することがほとんどで、容易に調査できます。

一方、将来の予想については調べられる内容は少なく、自分で想定する必要が増えると思われます。例えば、駅に近い立地に建つ眺望のよいマンションが良いと考え、お気に入りのエリアと物件を見つけたとします。駅に近いエリアは都市計画法で規定する用途地域が商業地域に指定されていることも少なくありません。

都市計画では用途地域を指定する際に、容積率も指定します。物件のある商業地域の容積率が400%に指定されているとすると、10階建て以上の新しいマンションが建つ可能性が否定できません。現状は3階程度の商店街で、現在は抜群の眺望があるとしても、将来そのようなマンションが南側にできてしまうと、眺望は奪われ、財産価値も大幅に低下します。

将来予想についてはこのようにある程度の専門性が必要となることもありますが、自分で整理できる範囲で以上の作業を終えた段階で、専門家に相談してみるとよいでしょう。そのような努力が真摯に対応してくれる専門家を見分ける力となります。

この記事の執筆者

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明海大学 不動産学部 教授 
学部長 中城 康彦氏

【専攻分野】
不動産企画経営管理、不動産鑑定評価、建築設計、不動産流通

【経歴】
1979年 福手健夫建築都市計画事務所
1983年 財団法人 日本不動産研究所
1988年 VARNZ AMERICA, Inc.
1992年 株式会社 スペースフロンティア 代表取締役
1996年  明海大学 不動産学部 専任講師
2003年 明海大学 不動産学部 教授
2004年 ケンブリッジ大学土地経済学部客員研究員(2005年3月まで)
2012年4月 明海大学 不動産学部長 不動産学研究科長

【主な受賞歴】
2015年 都市住宅学会論文賞
2015年 資産評価政策学会論説賞
2016年・2014年・2013年 日本不動産学会論説賞

この記事の問い合わせ:nakajo@meikai.ac.jp

明海大学HP: http://www.meikai.ac.jp/

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