マンション購入にあたって、知っておきたい広告のルール

人生でも最も大きな買い物とも称されることもある不動産の購入。そんな大きな決断となる不動産の購入・売却において「自分たちの知識は十分なのであろうか…」。そんな不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。 そこでIESHILコラムでは、国内で唯一ともいわれている不動産学部がある明海大学の不動産学部学部長である中城教授にご協力いただき、「生活者として知っておいて欲しい不動産学」をシリーズにしてお届けしていきます。

更新日:2018年08月21日

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IESHIL編集部

はじめに

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 住居を探し始める時、いきなり「不動産会社」を探すのではなく、ご自身の「希望の物件」を広告・チラシ、あるいはマンション情報のWEBサイト等から、まずは検索する人が多いのではないでしょうか。


 多数の広告からご自身の希望の物件を検索、そしてその物件の広告元である不動産へ訪問するというケースがほとんどかと思われます。しかし、その不動産選びの大きな一歩のきっかけにもなる広告の見方を、正しく理解されている方は実は意外に少ないのではないでしょうか。

適切な広告表示とは何なのか。注意すべき広告とは、どのようなものなのか。

 今回は、明海大学 不動産学部の学部長である中城教授に、マンションの購入を検討しているなら、ぜひ知っておいて欲しい広告に関する知識をご紹介いただきます。

§1 不動産広告の枠組み

 不動産は個別性が高い、外見からは判断できない部分がある、時の経過とともに内容が変化するなどの特性があり、不動産の広告はこの特性を適切に伝えるものでなければなりません。

 不動産の広告に関して、宅地建物取引業法、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)などの法律により適正化が図られ、「不動産の表示に関する公正競争規約(公正競争規約)」が実質上のガイドラインとなっています(§2参照)。

また、消費者に契約の取消権を与える、消費者契約法も制定されています。

広告・表示に関する代表的な法律・規約

まずは、不動産の広告に関する代表的な法律・規約をご紹介します。


宅地建物取引業法では、①契約開始時期の制限(青田売りから消費者を守る)、②取引態様の明示(業者の立場の明確化)、③誇大広告の禁止(消費者を誤認させない)などを定めています。

景品表示法は、①商品の品質、規格等の内容(所在・規模・形質・環境等)、②取引条件等の表示(価格・賃料・支払方法・ローンの条件等)、③不当表示の禁止(おとり広告等)を定めています。

公正競争規約は、景品表示法の規定(第10条)にもとづき、不動産業界が自主的に定め、公正取引委員会の認定を受けた不動産広告のルールです。
公正競争規約は不動産公正取引協議会連合会と全国9地区に設置された不動産公正取引協議会によって運用されています。

公正競争規約の規制を受けるのは、不動産公正取引協議会に加盟する業界団体の会員業者です。不動産公正取引協議会に参加し、公正競争規約を遵守した広告を行うことは消費者保護の一つです。協議会に所属している業者には図1のようなマークが表示されています。このマークが表示されていることはひとつの安心材料です。

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図1 公正競争規約加盟店の表示(首都圏の場合)

 半面、宅地建物取引業者等(以下「業者」)が行った不当な表示にもとづき、売買その他の契約が締結された場合であっても、排除命令等の行政処分や違約金など規約にもとづく措置の対象となるだけで、原則として当事者間の契約の効力に影響をおよぼすことはありません。

 このため、業者が積極的に不適切な情報を提供したことによって契約が締結された場合に、消費者に契約の取消権を与え、業者と消費者間の対等を図ることを目的とする消費者契約法が平成13年4月1日から施行されています。消費者は消費者契約法にもとづいて、不実告知、断定的判断の提供、不利益事実の不告知の3つのケースについて取り消すことが認められます。

 不動産の広告は、テレビ・ラジオ、インターネット、新聞・雑誌などのマス媒体、チラシ、ダイレクトメール、看板などのミニ媒体があります。不動産広告には媒体の如何にかかわらず規制を受けます。

§2 不動産の表示(広告)のルール

 不動産の広告では、一般消費者に対して、実際のものよりも著しく優良であると示し、事実に反して他の事業者よりも著しく優良であることを示して不当に顧客を誘引することが禁じられています。


 不動産業界の自主規制である「不動産の表示に関する公正競争規約(公正競争規約)」では、消費者の誤認を予防するため、表示基準を設ける、価格その他の一定事項の表示を義務付ける、特定用語の使用基準を定めています。

不動産の表示に関する主な規約・ルール

公正競争規約の内容をまとめると表1のとおりです。

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表1 不動産の表示に関する公正競争規約の内容

 表1の2.「必要な表示基準」の 2)「物件種別・媒体別の必要な表示事項」は10の種別に分けて詳しく規定されています。このうち、新築分譲マンションに関する規定は表2のとおりです。広告の媒体ごとに表示すべき事項が決められています。広告をチェックし、適切に表示された信頼性が高い広告から物件を探すことが重要です。 
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出典:www.rftc.jp

表2 必要な表示事項(新築分譲マンション)※注1:予告広告においては、「予告広告に係る必要な表示事項」を記載すること。※注2:「●」の事項は予告広告において省略することができる。 【出所】不動産の表示に関する公正競争規約施行規則別表6をもとに作成

§3 分譲マンションに関係の深い項目

表1の4.「表示基準」のうち、分譲マンションに関係が深い項目には次のようなものがあります。

・10)徒歩所要時間の計算方法:道路距離80mにつき1分として計算し、端数を切り上げます。もっとも、信号待ちや横断歩道橋の昇降のために必要となる時間は含みません。


・13)面積の表示方法:メートル法により表示します。1㎡未満は切り捨てて表示することはできますが、四捨五入や切り上げは禁止されています。また、坪だけの表示も認められません。


・15)建物の面積:壁心寸法(壁の中心間の距離)による壁心面積を表示します。一方、登記簿には内法寸法(壁の内側間の距離)による内法面積を登記します。新築マンションでは原則どおり壁心面積を表示する必要がありますが、中古マンションでは登記面積を表示することが認められます。この場合は「登記面積」と明記します。


・16)畳数の表示:1畳あたり1.62㎡以上の広さがあることを示します。


・17)納戸:採光や換気のための窓や開口部の広さが規定を満たしておらず、居室と認められない部屋などで用います。このような部屋を居室と誤認するおそれのある表示は認められません。


・30)住戸の価格:1住戸当たりの価格を表示します。この価格には、敷地の価格と建物の消費税等の額を含みます。

また、表1の5.「特定用語の使用基準」のうち、分譲マンションに関係が深い項目には次のようなものがあります。


・1)新築:建築後1年未満で、住居用に使われたことがない物件をいいます。

・3)ダイニング・キッチン(DK):台所と食堂の機能が1室に併存している部屋をいい、住戸の居室(寝室)数に応じ、必要な広さと機能を有するものをいいます(表3参照)。


・4)リビング・ダイニング・キッチン(LDK):居間と台所と食堂の機能が1室に併存する部屋をいい、住戸の居室(寝室)数に応じ、必要な広さと機能を有するものをいいます(表3参照)。
DKとLDKの最低必要な広さの目安は表3のとおりです。

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表3 DK・LDKの最低必要な広さの目安

§4 原則として広告で使用が禁止される表示

 完璧、万全、日本初、業界一、特選、厳選、最高、特急、買得、掘出、完売など、抽象的な用語や他の業者と比較するような用語は、合理的な根拠を示す資料がある場合を除き使用が禁止されています。消費者をだますような表現や購買意欲を不当にあおる表示をしている場合は、相手にしないことが正しい姿勢です。

道路の電柱や街路灯などに両面テープなどで貼り付けた看板を見かけることがありますが、これらの広告は、屋外広告物法や道路法などの法律に違反する行為です。

「未公開物件」などと書かれている場合もありますが、まだ商品化されていない場合や物件が存在しないおとり広告など、不当表示に該当する場合もあります。業者名や取引態様(売主、代理、媒介)などが書かれていないこともあります。

いずれのケースも相手にしないことが消費者の正しい態度です。

終わりに

 不動産を購入し、物件情報を得るためには多数の広告から情報を探していくという行為は避けられないでしょう。

大きな金額が動く不動産だからこそ、消費者を守るために法律・規制なども数多くあります。だからといって、安心しきってしまうのではなく、消費者自身が正しい情報を理解し、情報を取捨選択することが大切なのではないでしょうか。

【参考文献】
1.    不動産公正取引協議会連合会『住まいを選ぶ前に知っておきたい 不動産広告あらかると』https://www.sfkoutori.or.jp/consumer/alacarte.pdf
2.    不動産公正取引協議会連合会『不動産の表示に関する公正競争規約』 http://www.rftc.jp/kiyak/hyouji_kiyak.html
3.    不動産公正取引協議会連合会『不動産の表示に関する公正競争規約施行規則』http://www.rftc.jp/kiyak/hyouji_sekou.html

この記事の執筆者

マンション購入にあたって、知っておきたい広告のルールの画像

明海大学 不動産学部 教授 
学部長 中城 康彦氏

【専攻分野】
不動産企画経営管理、不動産鑑定評価、建築設計、不動産流通

【経歴】
1979年 福手健夫建築都市計画事務所
1983年 財団法人 日本不動産研究所
1988年 VARNZ AMERICA, Inc.
1992年 株式会社 スペースフロンティア 代表取締役
1996年  明海大学 不動産学部 専任講師
2003年 明海大学 不動産学部 教授
2004年 ケンブリッジ大学土地経済学部客員研究員(2005年3月まで)
2012年4月 明海大学 不動産学部長 不動産学研究科長

【主な受賞歴】
2015年 都市住宅学会論文賞
2015年 資産評価政策学会論説賞
2016年・2014年・2013年 日本不動産学会論説賞

この記事の問い合わせ:nakajo@meikai.ac.jp

明海大学HP: http://www.meikai.ac.jp/

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