日本の65歳以上の比率、高齢化率はすでに26%を超えました。
読者の方でも、「すでに親が高齢になった」「自分は高齢、親は後期高齢者になった」といった人は少なくないでしょう。現在、高齢者がいる世帯はおよそ25%、そのうち3割強は高齢者のみの世帯です。
高齢になると、様々な問題や心配事が起きてきます。階段での怪我、火の不始末、風呂場での転倒…。孤独死なども心配です。加えて、親が施設に入ったり、亡くなったりすれば、家をどうするのかも考えなくてはなりません。
このような、いわゆる親家片(おやかた)問題で悩んでいる人は増加の一途をたどっています。そこで、読者からの質問にイエシルが答える『親の家を片づける“親家片(おやかた)”マンション入門編』をスタートしました。
第一回目は、郊外の一軒家から駅近のマンションに引っ越したKさん親子のケースです。
Kさんの質問に答える前に、まず、高齢者だけの一軒家住まいを考えてみましょう。
家族で住んでいた時は使っていた部屋も、子どもが独立すれば必要なく、そのまま放置…。高齢者の二人暮らし(どちらかが他界すると独居!)には明らかに広すぎる家、多すぎる荷物、明らかにムダが目立ち始めます。足腰が弱ると階段の昇降は大変かつ危険。車の運転だってそうです。本人たちの負担になるばかりか、事故だって気になります。
とはいえ、遠くに住む子どもが頻繁に実家へ足を運ぶのも正直、普段の生活を考えると現実的ではないことも。同居するという手もありますが、最近の高齢者は「子どもに迷惑をかけたくない」「気を使いながら暮らしたくない」といった理由から、親の方から同居を拒むケースも増えてきました。もちろん、子ども側も同居するとしたら、自宅の買い替え・住み替えが必要かもしれませんし、家族の理解を得られるのかといった、そもそも論だってあります。
そこで、両者の適度な落とし所としてお勧めなのが、Kさんの質問にもある駅近マンションへの住み替えです。
階段の上り下りの他にも、いろいろ問題がでてきているかもしれません。しかし、高齢者は、環境の変化に弱いので、無理な引っ越しも考え物です。逆にマンションより施設を探した方がいいケースもあります。まずは、生活能力の問題、一軒屋のムダのチェックから始めましょう。
マンションなら、両親だけで暮らせそうだと判断できたら、ご両親が納得できる魅力を備えた具体的な物件探しです。高齢の場合は、以下のような条件を満たしていることが大切でしょう。
住み替え物件は新築である必要はありません。
現実的な話、高齢の両親が住む年数は限られていますし、両親が亡くなった後にどうするかハッキリしないのなら、あえてプレミアが上乗せされていて高額な新築に手を出す理由はありません。むしろ、物件の間取り、セキュリティ、周辺環境、インフラを重視すべきです。
例えば間取り。二人ないし独居を想定するなら、それほどの広さは必要ありません。共有スペースや住居はバリアフリー、あるいはバリアフリーにリノベーションできるか、怪しい訪問販売がやってこないようセキュリティはしっかりしているのか、そういった点を注意しましょう。
もっとも重視したいのは、そもそも住み替えを考えるきっかけになった生活面について。駅から近いと車を使わずに移動ができますし、病院、スーパーやコンビニなど、今後の生活に欠かせないインフラが近くにあるかどうかです。こういった点を総合的にチェックしながら、住み替え先を探していくと、おのずとマッチした物件が見つかっていきます。
駅近マンションに引っ越す際、その原資となるのは一軒家の売却代金、両親の預貯金など。いくらか子ども側から援助が必要になることも…。実際は実家を売って得たお金になると思いますから、少しでも有利な価格で手放したいものです。
そこで、実家近くやメジャーな不動産店に査定や売却を依頼するというのは、よくある話。地域事情や周辺相場に精通していて、適切な価格を提示してくれだろうという安心感があります。
しかしながら、ひとつの不動産店に頼りっきりになるのは、あまり賢いといえないかもしれません。複数の不動産店に査定を依頼して比較したほうが適正な価格は見えてくるので、売却額に根拠を持たせることが可能です。
不動産売買では、売り急いだり、今回のようにやむにやまれずといった事情が背景にあると、買い手からの値下げ圧力に応じてしまうことがままありますが、査定額が市場に基づいた価格であれば、交渉を有利に進めたり、適正に買ってくれる別の買い手を探せばいいということにもなります。中立な立場で評価、サポートしてくれるアドバイザーを頼るといった手段も考えられます。近年はウェブを中心に、ビッグデータを活用したリアルタイム査定を手がけるサービスもありますから、それらを活用してみてはいかがでしょうか。
言わずもがな、理想的なのは売却物件と購入物件にプラスの差額で出ることです。キャッシュがあると、両親の生活に足しにもなります。
ただし、郊外で築年数が古いとなると、建物部分の価値はほぼゼロに近く、土地値でしか売れない可能性も。かつ、不便な立地であれば地価も低く評価されますから、「え、たったこれだけ…」といった現実を突きつけられることがあります。
両親が家を買った頃に比べると景気や人口減、デフレなど、経済環境はネガティブになっていて、とりわけ郊外物件は不利になるかもしれません。新たに購入する駅近マンションのほうが高額というケースは珍しくないでしょう。
もちろん、物件探しも複数の不動産店を回る、もしくは査定時と同じく、最近はビッグデータを活用して適正価格を教えてくれたり、アドバイスを受けられるウェブサービスがありますから、こうった場面でも使っていきたいところです。ならば、価格も含めた条件にマッチした物件が見つかるかもしれません。
しかしながら、マイナスの差額が出て、持ち出しが必要になった場合はどうすればいいか。基本的には両親の預貯金から捻出ということになるでしょうが、今後の生活費は残しておくこと。大事な資産を購入物件に投じた結果、ふだん生活が苦しくなったり、足りなくなっては本末転倒です。この際、親と一緒に資産状況についても確認しておきましょう。後々のトラブルが回避できます。
「年老いた親の住まい」に関しては、少しでも早くから取り組んでおくことです。身体が動かなくなってからでは遅いですし、無理をして車で出かけて事故などに遭うと後悔先に立たず…となってしまいます。認知症になってしまうと意思の疎通も難しく、何かと話が進まない可能性だってあります。元気なうちに実行するようにしたいものです。
いずれにしろ、高齢者が住み替えを行う場合、実質的にかじ取りをするのは、子ども側になると思います。もちろん、親の要望をくみ取りながら進めないといけませんが、ネットを使って情報収集するなど、効率的に進めていきたいものです。
IESHILコラムとは、不動産物件情報に関連してコラム等の関連情報も提供する付随サービスです。
ご利用により、IESHIL利用規約が適用されますので、規約のご確認をお願い致します。