イエシルコラム編集部
株式会社リブセンス
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このように首都圏の不動産価格の上昇は、日本自体の景気回復によって底上げされたわけではなく、海外マネーなどの特殊要因によって押し上げられたのです。不動産価格が上昇する基礎となる国内の景気回復や居住用での需要拡大が進まない状況で、海外からの投資マネーがストップすると、一時的に上昇していた不動産市場は冷え込む可能性が出てきます。
そして、2015年9月に発生した中国株式市場の大暴落によって、これまで日本に流入していた中国マネーがストップしてしまったのです。首都圏のマンション市況をリードしてきた中国人投資家が後退し始め、景気の底上げが完了していない今の日本。今後さらに上昇するのか、それとも下降を辿るのかの岐路に立たされています。そのため、「これから東京オリンピックがあるから、もっと値段が上がるだろうし、しばらくは売るつもりはないよ」という強気の姿勢を貫いていると、今後アダとなる危険性があります。
現在、首都圏で発生しているマンションのミニバブルは、日本の自力による景気回復の産物ではなく、海外などからの特殊要因によるもので、その需要が弱く不安定です。それにも関わらず、多くの個人投資家は「東京オリンピック」が決まったことで強気になっており、オリンピック開催までは不動産価格が上昇するとにらんでいます。しかし、記憶に新しいロンドンオリンピックの例では、観光業での経済効果はあったものの、不動産市場には大きな影響がなかったと言われています。「オリンピック」 イコール 「不動産価格の持続的上昇」を期待するのは、安易と言えるでしょう。
今回のミニバブルは、たまたま行き場を失った中国マネーの投資先として、首都圏のマンションがマッチングしただけに過ぎません。今後、中国をはじめとする海外マネーが手を引いたときに、日本自体の景気回復が図られていなければ、今以上の不動産価格の上昇は見込めないでしょう。
現段階で言えるのは、ここ数年間で見たとき、現在の首都圏における不動産価格は、まだ高い水準にあるということです。ただし、相場をけん引してきた中国マネーが当てにならなくなった以上、今の状況が一連の不動産ミニバブルにおける「天井」と考え、売却することも検討すべきではないでしょうか。
また、マンション価格を押し上げる要因となっていた相続税対策の需要が、今後は国税庁の課税逃れ防止に向けて動く可能性が高く、節税効果に疑問符が付くことが考えられます。さらに、旭化成建材の杭打ち工事データ流用問題などの表に出てこなかったリスクが顕在化し始めているため、今後、不動産を買い控えする可能性が高くなることは否定できません。
これまでの経緯や現在の状況を総合的に勘案すると、これから東京オリンピックに向けて、首都圏のマンション市況が今以上に上昇するのか下降するのかは断定できません。ですが、これまでの上昇を支えてきた、いくつかの要因が揺らいできたと言えるでしょう。
<執筆者>
棚田 健大郎(棚田行政書士リーガル法務事務所 代表)
株式会社エイブルに入社。全国約3,000人の社員中、月間仲介手数料の売り上げでトップセールスを記録。管理職として数年勤務後、退社。 行政書士、マンション管理士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得し、棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。不動産、相続、企業法務に強い行政書士として活躍。
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