さて、販売の方針が決まり、販売価格を決定したら、いよいよ売り出しです。その前に、不動産会社と販売に当たっての契約(正式には「媒介契約」といいます)を結ぶ必要があります。この契約によって、売買が成立した時に不動産会社に支払う仲介手数料(正式には「媒介手数料」といいます)と、販売する際の情報を登録する方法などを決定します。
「媒介契約」には3つの種類があります。
この契約方法の場合、多くの不動産会社を通じて買い手を探すことになるので、どうしても早く売りたい場合には検討する価値があります。もちろん、並行して自分自身でも買ってくれそうな人を探せます。ただし、各社の動きをきちんと把握していないと、複数の会社から同時に申し込みがあることも考えられますので、売主としては一番手間のかかる契約方法です。
ある特定の不動産会社に販売活動を依頼する方法で、他の会社に情報を提供する場合も、その契約を締結した会社を通じて提供することになります。一般媒介契約と同様、自分自身で買ってくれる人を探すことはできます。
「専任媒介契約」を結んだ場合、その不動産会社は、物件の情報を7営業日以内に不動産業界の物件情報サイトである「不動産流通機構(呼称:レインズ)」に登録することと、2週間に1回以上、販売活動の経過報告を行うことが義務付けられます。売主にとっては販売の窓口が1つに絞られることになり、活動報告も定期的に得られるので、一番状況を把握しやすい方法と言えます。
「専任媒介契約」と同じように、不動産会社は、5営業日以内の物件登録と1週間に1回以上の報告が義務付けられますので、売主にとっては一番手間の少ない媒介契約と言えます。ただし、その会社の動きが期待を下回る場合、なかなか買主が見つからないという事態もあり得ますので、注意が必要です。
これら3つの媒介契約のうち、どれにするかは、物件売却までの時間に影響するため、じっくり考えて契約することをお勧めします。現実的には、一番良いと思われる査定価格を示してくれた不動産会社と「専属専任」または「専任」媒介契約を結ぶケースがほとんどです。
ちなみに、2016年1月から、前述の「レインズ」に「ステータス管理機能」が追加されました。これは取引の透明性を確保するために、新たに追加された機能です。
売主は、レインズに登録された物件が以下の取引状況にあることを確認できます。
①公開中:購入側の仲介会社からの案内を受けられる状態
②申込あり:購入希望者から書面による購入申込を受けている状態
③一時停止:売主の事情で一時的に物件を紹介できない状態
※取引状況の変更は、原則として売主に確認の上で、状況変化の翌日から2営業日以内に行う。
今までは、レインズを利用できるのは不動産会社だけでしたが、この機能が追加されたことによって、売主が直接、依頼した物件の状況を確認できるようになりました。
ステータスには「公開中」、「書面による商談中」、「申し込みあり」といったものがありますが、実際にはその間にもいろいろな状況がありますし、不動産会社によっては登録するデータを一括管理しているところもあり、タイムラグが生じる場合もありますので、担当者との小まめな連絡が大切です。
販売の方針と販売価格が決定し、担当してもらう不動産会社と媒介契約を結んだら、いよいよ売り出しです。どのように物件情報を発信していくかによっても結果が異なってきますので、事前によく打ち合わせをしましょう。
居住中の物件は、家具や荷物がある状態で部屋の隅々まで見られないため、例えば、汚れやカビなどの状況が分かりにくいという問題があります。このような場合、事前にできるだけ片付けておく、見づらい所の写真を撮って用意しておくなどの工夫が必要です。家具などが多すぎる場合には、事前に不動産会社に依頼して一部を別の場所に保管しておくという方法もあります。
ネットなどに登録した室内写真が、入居して間もなくあまり物がない状態で撮ったものだったため、見に来た方が実情との差に驚いた、というケースもあるようです。
反対に、空室の場合は無機質な空間になってしまいますので、カーテンを付けたり、簡単な家具や小物を配置するなどの一工夫もあった方が良い結果につながります。
また、希望者が部屋を見に来る時には、売主としては気になるところですが、あえて立ち会わず全て不動産会社の担当者だけに対応してもらう方法もあります。最近では、見学希望者への案内を不動産業者に任せきりにするケースも少なくありませんが、売主側の担当者が適切なアドバイスやアピールをすることで、希望者の不安を取り除いたり、良い印象を持ってもらったりすることから、早期に契約に結び付くというデータもあります。
購入希望者がその物件を気に入ったら、取引条件などの交渉を行います。「もう少し安くしてくれないか」「○○万円引いてくれないか」といった値引きの希望や、所有者が居住中なのに「○○月○○日までに引き渡してほしい」といった引渡し時期の希望があり、簡単に話を進められないことも少なくありません。お互いに自分の主張を繰り返し、トラブルになるケースもあります。
このようなケースへの対応も含め、先程紹介した「媒介契約」を初めから結んでおくのが賢明でしょう。難しい交渉も慣れている不動産会社の担当者に任せれば、うまく間を取り持ってもらうことができ、契約に向けての交渉もスムーズです。
こう考えると「専任媒介契約」か「専属専任媒介契約」を結んだ方が、売買を早く成立させるためにも得策だと言えます。担当者にとっては、このような交渉事が仲介業務の本質であり、存在意義ですので、媒介契約をきちんと結んでおけば、より良い仕事をしてくれるようになります。
また最近では、仲介サービスの一環で、「住宅設備の点検保証」、「買換保証」、「つなぎ融資」などさまざまなサービスを用意している不動産会社が多くなっています。しかも、媒介手数料以外にこれらの追加サービスの料金はかからないので安心して利用できます。
特に「住宅の点検保証」は、物件の引渡し後に明らかになる場合がある、瑕疵に関するトラブルをなくすために大変好評です。
マイホームの売却にはさまざまな要素があり、スムーズに進めば問題はないのですが、実際にはトラブルになることも少なくありません。そのようなことが起きないよう、事前に入念な売却プランを立てて、売却を成功させましょう。
困ったときには不動産会社に相談をしてみましょう。
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